今号のニュースレターでは、2024年11月下旬から2025年2月までの国連ユニタール持続可能な繁栄局の様々な研修事業や取り組みをご紹介しています。
お知らせ
ミシェル・ジャイルズ=マクドノー氏が国連ユニタール総代表に正式就任
国連ユニタールは、ジャマイカ出身のミシェル・ジャイルズ=マクドノー(Michelle Gyles-McDonnough)氏を新たな総代表として迎えました。彼女は国連事務総長によって任命され、2025年2月22日付けでインド出身のニキル・セス(Nikhil Seth)氏の後任として就任しました。ジャイルズ=マクドノー氏は、持続可能な開発、政策提言、国際貿易、国際関係、組織でのチェンジマネジメントの分野で30年以上の経験を有し、国連システム内外で豊富なリーダーシップ経験を持ちます。ジャイルズ=マクドノー氏の専門分野は、主に持続可能な開発目標(SDGs)の推進に不可欠な経済、社会、環境に渡ります。
主なニュース
国連ユニタール「海洋と人間の安全保障」研修を終えた参加者 変革の担い手として新たなステージへ
2月21日、アジア太平洋地域18か国から集まった研修参加者50名が、国連ユニタールの「自由で開かれたインド太平洋のリーダー育成:海洋と人間の安全保障研修」の最終フェーズである12日間の日本での対面ワークショップ(2月10日~21日)を終え、3つのフェーズにわたり実施された同研修プログラムを修了しました。参加者は淡路島、広島、千葉、東京を訪れ、専門家による講義やフィールドワークに参加しました。本研修の集大成として、ハイブリッド形式の公開イベント「インド太平洋における海洋アクションの今後の展望(Ways Forward for Ocean Action in the Indo-Pacific)」が開催されました。本イベントでは、研修成果や海洋と人間の安全保障課題に対する実行可能な解決策が発表され、基調講演、パネルディスカッション、研修参加者による政策提言のプレゼンテーションが行われました。
国連ユニタール、市民社会と連携し、核兵器のない未来に向けた対話と行動を促進
2月9日、国連訓練調査研究所(ユニタール)は、核兵器をなくす日本キャンペーン(JANA)と協力し、東京で公開イベントを開催しました。本セッションには、核軍縮・不拡散の分野で活躍する世界の専門家が集い、多国間安全保障の課題や外交、核軍縮の推進に向けた最新の動向や取り組みについて議論しました。国連ユニタールは、たびまちゲート広島株式会社および株式会社フジタと連携し、会場で参加者にバーチャルリアリティ(VR)技術を通じて被爆の実相を追体験する機会を提供しました。
国連ユニタール、第10回「核軍縮・不拡散広島研修」を実施、14か国の外交官が核軍縮への理解と外交力を強化
2月3日から8日にかけて、国連ユニタールは、核実験被害国を含むアジア太平洋諸国14か国から15名の外交官を迎え、「核軍縮・不拡散(NDNP)広島研修」を広島と東京にて実施しました。一般社団法人国連ユニタール協会との共催で実施したこの6日間の研修プログラムでは、専門家による講義、ユースセッション、交渉シミュレーション演習、そして被爆者との交流も行われました。2015年より実施されている本研修は、国連ユニタールが広島県および広島市の資金提供を受けて実施しており、これまでに延べ180名の外交官を育成してきました。
エジプト・イラク・レバノンの起業家、食料・雇用不安解消のためのビジネスを提案:国連ユニタール研修事業の日本ワークショップ
2月4日から11日にかけて、17名の起業家らが「持続可能なビジネス開発による食料安全保障と生計向上:エジプト・イラク・レバノン向け起業家研修」の日本ワークショップに参加しました。東京と広島において、参加者は農業分野のイノベーションや持続可能な実践について学び、研修を通して磨き上げたビジネスモデルを発表しました。本研修事業は、日本政府の支援を受けて実施しており、中東・北アフリカ地域において持続可能でレジリエンスある食料システムと経済発展に貢献します。
スーダンの女性と若者250名以上が生計向上研修事業第1フェーズを修了
日本政府の支援を受けて国連ユニタールが実施する「スーダン緊急支援:組織能力と生計向上を通じた社会経済の安定促進」オンライン研修事業は、紛争により避難を余儀なくされたスーダンの参加者にとって支えとなっています。2024年8月から12月にかけて、250名以上の女性と若者が、起業、イノベーション、持続可能な成長による豊かな未来、そして広島の復興からの教訓をテーマとした24回のウェビナーに参加しました。2月に開始された次のフェーズでは、選抜された40名が1か月間のオンラインブートキャンプと2日間のバーチャル・ハッカソンに参加します。最終フェーズでは、成績上位20名が世界の視聴者や関係者に向けて自らの提案を発表する予定です。
津波防災に関する女性のリーダーシップ研修の第1フェーズが終了
日本政府の支援のもとで国連ユニタールが実施する「津波防災に関する女性のリーダーシップ」研修事業の第1フェーズが、2024年11月27日に終了しました。このオンラインフェーズでは、アジア太平洋諸国からの参加者約130名が、災害リスク軽減におけるジェンダー平等、障がい者のインクルージョン、脆弱な立場の人々のエンパワーメントについて学びました。成績上位者は、2025年3月にフィジーで開催される第2フェーズの対面式ワークショップに招待されます。
広島から羽ばたく未来の平和リーダーたち:2024年度国連ユニタール青少年大使プログラム修了
2024年12月22日、2024年度「国連ユニタール広島青少年大使プログラム」の報告会及び修了式が広島市内で開催されました。国連ユニタールが国連ユニタール協会と共同実施する同プログラムは、広島から世界へ平和と開発を担う次世代のリーダーの育成を目指し、地元の若者に平和構築のスキルを培うことを目指しています。報告会では、青少年大使8名による平和実現に向けた行動計画が発表され、関係者より激励の言葉が述べられました。2024年度プログラムは、広島県とソロプチミスト広島中央からの支援の下で実施されました。2010年の開始以降、このプログラムは広島の学生および若者160名以上を支援してきました。
国連ユニタール青少年大使・アジア太平洋プログラム2024終了:グローバルな影響をもたらすための地域解決策の開拓
8週間にわたり実施された「国連ユニタール青少年大使・アジア太平洋プログラム」は、2024年11月30日に終了しました。このプログラムは国連ユニタールとITS Education Asiaが主催し、参加した若者たちは持続可能な開発目標(SDGs)、システム思考、チームビルディングについて学びました。最終セッションでは、アフガニスタン、香港、インド、日本、フィリピンから参加した26名の変革者が、グローバルな課題に対する地域レベルでの解決策を提案しました。最も優れた提案には、影響力、プレゼンテーション、包摂性、革新性を基準にした賞が授与されました。
国連ユニタールとイスラム開発銀行共催のCOP16サイドイベント:グローバルアドボカシーダイアログシリーズ「繁栄の育成:持続可能な開発のための農業パートナーシップ」
2024年12月7日、国連ユニタールとイスラム開発銀行は、国連砂漠化対処条約締約国会議第16回会合(COP16)のサイドイベントをリヤドにて共催しました。グローバルアドボカシーダイシリーズの一環として、「繁栄の育成:持続可能な開発のための農業パートナーシップ(Cultivating Prosperity: Agriculture Partnerships for Sustainable Development)」をテーマにサイドイベントが実施され、政策立案者、関係機関、持続可能な農業と食料システムの変革分野の実務者や専門家が集まり、パネルディスカッションや対話・交流の機会、成功事例の共有が行われました。
「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」:国際機関で活躍するためのミッドキャリアおよびジュニアプロフェッショナルのための研修
日本を含む世界11か国・地域・機関から参加した中堅実務者20名が、「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」のミッドキャリア・コースを修了しました。このコースは2025年1月6日から12日まで実施され、参加者は国連の優先課題について学び、コミュニケーション、マネジメント、リーダーシップなどの重要なスキルを習得しました。また、自身の振り返りやキャリアビジョンを見直す機会ともなりました。2025年1月26日から2月22日まで実施された同事業のプライマリー・コースには、日本を含む世界11か国・地域から23名の研修員が参加しました。4週間の研修を通じて、研修員は国連の優先課題や「未来のための協定」などの地球規模の課題について新たな学びを得ると同時に、国際機関でのキャリアに対するビジョンを深め、現場で求められるスキルを習得しました。本プログラムは、外務省の委託を受けて広島大学が実施し、国連ユニタールおよび国連ボランティア計画と協力して行われています。
パートナーシップ
プロスペリティ・アライアンス・ウルヴァーハンプトンを設立、持続可能な開発目標の推進を目指す
国連ユニタールとウルヴァーハンプトン大学は、持続可能性に関する共同研究と知識交流の拠点として「プロスペリティ・アライアンス・ウルヴァーハンプトン(Prosperity Alliance Wolverhampton)」を設立するための合意を締結しました。このパートナーシップは、イノベーションの促進、教育と研究の推進、経済成長と能力強化を支援することによって、持続可能な開発目標(SDGs)実現の促進を目指しています。両機関の協力により、個人、企業、コミュニティが持続可能な開発に貢献する能力構築を目指します。この合意は、2024年11月に署名されたSDG研究推進のための協力覚書に基づいています。
国連ユニタールとQuality Support Solutions (QSS) AI and Robotics社、持続可能な開発のためにAIおよびロボティクスを推進するパートナーシップを結成
2025年2月11日、国連ユニタールとサウジアラビアのテクノロジー企業、Quality Support Solutions (QSS) AI and Robotics社は、持続可能な開発目標(SDGs)を支援するAIおよびロボティクスに関する取り組みを推進するための協力覚書を締結しました。両機関は、教育、医療、環境の持続可能性、経済発展におけるAIおよびロボティクスの応用に焦点を当てた研修と研究を共同で開発することを目指しています。また、この協力により、特にサービスが行き届いていない地域におけるデジタル格差を解消する機会を探り、より持続可能な未来のために世界の知識とスキルを強化することを目指しています。
国連ユニタールと株式会社パソナグループ、アジア太平洋地域のリーダーを海洋と人間の安全保障の分野で育成するために協力
2025年2月10日から12日まで、国連ユニタールと株式会社パソナグループは、兵庫県淡路島で「自由で開かれたインド太平洋のリーダー育成研修:海洋と人間の安全保障」の日本ワークショップのセッションを共同で実施しました。アジア太平洋地域からの参加者50名が集まり、株式会社パソナグループによる地方創生に関する講義や、持続可能な農業および安全な食に関するパソナ農援隊による講義とツアーが行われました。この連携は、国連ユニタールの研修参加者に対する学習体験をより豊かにするための知識共有を目指し、2023年に締結された協力覚書に基づいており、株式会社パソナグループと国連ユニタールのパートナーシップをさらに強化する重要な一歩となりました。
国連ユニタールとナイジェリア金融情報機関、金融犯罪防止強化に向けた戦略的パートナーシップを結成
国連ユニタールとナイジェリア金融情報機関は、マネーロンダリング、テロ資金供与、そして拡散資金供与の対策に向けた協力覚書に署名しました。この連携は、ナイジェリアのマネーロンダリング防止、テロ資金供与対策、拡散資金供与対策の枠組みを強化することを目的としており、共同で専門的な研修プログラムを開発・実施すること、金融に関する新たな脅威に関する研究を行うこと、そして機関の枠組みを強化するための技術支援を提供することが含まれています。
国連ユニタールとジュネーブ外交国際関係学部、グローバルリーダーシップと持続可能な開発のためのパートナーシップを締結
2月14日、国連ユニタールはジュネーブ外交国際関係学部(GSD)と協力覚書を締結し、グローバルリーダーシップ、外交、持続可能な開発の推進に協力することとなりました。このパートナーシップは、国連ユニタールとGSDによる持続可能な開発センター(Centre for Sustainable Development)の設立、学位プログラムの開発、教員交流プログラムの促進などを中心に進められます。
国連ユニタールとアフリカ・パストラリスト・エンパワーメント機構、持続可能な農業と食料安全保障の推進に向けてパートナーシップを締結
国連ユニタールとケニアに拠点を置く「アフリカ・パストラリスト・エンパワーメント機構(Africa Pastoralist Empowerment Organization)」は、アフリカの乾燥地域における持続可能な農業、食料安全保障と栄養、気候変動への適応力を促進するための覚書を締結しました。この協力は、女性や若者を支援し、農業バリューチェーンを強化し、環境の持続可能性を高めることを目指しています。
研修参加者の声
レバノンのがん患者支援体制構築の先駆者としてイノベーションを起こす
レバノン出身の起業家であるSara El Koussaさんは、日本政府が支援する国連ユニタールの「グレート・アイデア・スペース 2023:イラク、ヨルダン、レバノンにおける保健安全保障と経済発展のための起業家精神とイノベーション」研修事業の修了生です。Saraさんは、研修で学んだ新たなスキルを即時に活用し、がん患者と介護者をつなげるオンラインプラットフォームを強化しました。このプラットフォームでは、栄養相談、サポートグループ、啓発ウェビナーなどの無料サービスを提供しており、レバノンの保健安全保障を強化しています。
デジタルスキルを活用したインクルージョン、栄養、起業家精神の促進
Lucretia Dreyerさん(左)とDestina Mensah(右)さんは、2023年度実施の国連ユニタール「アフリカの女性と若者のためのエッセンシャル・デジタルスキル開発」研修に参加しました。この研修は、日本政府による寛大な支援により実施されました。Lucretiaさんは障がい者の包括的支援を推進する南アフリカの活動家で、障がいの有無にかかわらず子どもたちが一緒に学べるインクルーシブなコーディングとロボティクスのプログラムを創設することを目指しています。ガーナの起業家であるDestinaさんは、伝統的な料理に着想を得た健康的なシリアルビジネスを立ち上げ、栄養と文化遺産の促進に取り組んでいます。2人は、研修で習得したプロジェクトマネジメント、ピッチ、デジタルリテラシーのスキルを活用し、自らの取り組みを拡大したいと考えています。
デジタルスキルを活用し、ケニアにより良い変革をもたらす
Lilian Olivia(左)さんとBetty Mwende(右)さんは、2023年に日本政府の支援を受けて開催された国連ユニタール「アフリカの女性と若者のためのエッセンシャル・デジタルスキル開発」研修を修了しました。Lillianさんはケニアのジェンダーとテクノロジー分野の弁護士で、テクノロジーが助長するジェンダーに基づく暴力と闘う非営利団体の創設者です。彼女は新たに習得したプロジェクト管理、サイバーセキュリティ、マインドフルネスのスキルを自身の活動に活用しています。Bettyさんはケニアのコンピュータ応用技術の学生で、地域の子どもたちにパソコンの基礎を教えるコミュニケーションコーディネーターです。彼女が国連ユニタールの研修で学んだことは、現在の彼女の取り組みを整え、持続可能なものにする助けとなっています。
国連ユニタール青少年大使:行動する若きリーダー
John Isidore Laure(左)さんとSeungjae Lee(右)さんは、2024年度の国連ユニタール青少年大使・アジア太平洋プログラムに参加した若きチェンジメーカーです。このプログラムは、ITSエデュケーションアジアと共に実施され、26名が修了しました。Johnさんはフィリピンの若き活動家で、地元の青年協議会と協力して、より良いガバナンスと地域社会の発展を促進しています。国連ユニタールのプログラムは、彼が取り組む若い公務員向けの支援事業の強化に役立ちました。Seungjaeさんは香港の学生で、社会問題に情熱を持っており、言語の壁に直面している香港在住の難民を支援するプロジェクトを立ち上げました。国連ユニタールのプログラムは、彼がそのプロジェクトを実行し、拡大するための基盤を築く手助けとなりました。
南スーダンの農業の未来を変える
南スーダン出身のJohn Ladu Simon Jacobさんは、国連ユニタールの「グレート・アイデア・スペース2023:南スーダンの食料安全保障のための起業家精神とイノベーション」研修の修了生です。Johnさんは、地元の農家がより多くの土地を耕作し、より効率的に農業を行えるよう、低コストのトラクター貸出サービスを運営しています。日本政府が支援するこの国連ユニタールの研修は、食料不安に立ち向かうための実践的な解決策を導き出すためのツールと自信を彼に提供しました。
デジタルスキルでキャリアを築くウクライナの女性たち
Iryna Markinaさん、Nataliaさん、Mariia Markinaさんは、日本政府拠出の2023年の国連ユニタール「ウクライナ避難民女性のための デジタルリスキリング」を修了しました。Irynaさんは営業ディレクターとして、データ分析とGISのコースを通じてデータ活用スキルを習得し、複雑な問題解決や意思決定における効率と自信を高めました。Nataliaさんは心理学者として、統計学の原則を深く理解し、より示唆に富んだ報告書を作成するためのスキルを向上させ、リーダーシップスキルも強化しました。Mariiaさんはチャーターブローカーとして、サイバーセキュリティについて得た知識を活かして、データと通信のセキュリティプロトコルを強化することにより業務の停止を防ぎ、クライアントやパートナーとの信頼関係を向上させることができました。
持続可能な繁栄局について
国連ユニタールの持続可能な繁栄局は、広島事務所とジュネーブ本部を拠点とし、包摂的かつ持続可能で豊かな世界の実現に資するため、世界基準の学習と知識やスキルを提供しています。拡大する格差の是正に向け、変化を生み出す主体である世界各国のチェンジメーカー、特に女性や若者に対する支援を行っています。