- ケニア出身のLilian Oliviaさんは、ジェンダーとテクノロジー専門の弁護士であり、ジェンダーに基づくオンライン上の暴力を防止する非営利団体の創設者です。
- 彼女の活動は、自身が受けたオンラインハラスメントという個人的な経験が影響しており、若い女性や少女たちを支援する道を選ぶきっかけとなりました。
- 国連ユニタール「アフリカの女性と若者のためのエッセンシャル・デジタルスキル開発:デジタル経済における雇用機会と生活向上の促進」研修事業を通じて習得したプロジェクト管理、サイバーセキュリティ、マインドフルネスといった重要なスキルは、彼女が活動の規模を拡大させるのに役立ちました。
- 彼女は今後、アフリカ全土のより多くの地域に活動の場を広げ、オンライン上の暴力への対応を強化するための政策変更にもはたらきかけたいと考えています。
2025年2月25日、広島、日本 – ナイロビ出身のジェンダーとテクノロジー専門の弁護士であるLilian Oliviaさんは、女性と女児にとってより安全なデジタル空間をつくる活動に取り組んでいます。現在、イギリスで法律、イノベーション、テクノロジーの修士課程を履修中のLilianさんは、オンラインハラスメントやネットいじめ撲滅に対する意識向上と解決策を提供するための非営利団体をケニアに設立し、活動しています。
Lilianさんの活動の原点は、彼女自身がネット上での嫌がらせを受けた経験と、デジタル社会で女性が直面する課題への深い理解にあります。彼女は、「プロフェッショナルな立場にいる多くの女性がオンライン上のいじめを経験していることに気づきました」と語ります。この気づきが彼女を行動へと駆り立て、多くの人がオンラインで自分を守るための知識とツールを身につけられるように支援することを決意しました。
テクノロジーを利用したジェンダーに基づくオンライン暴力との闘い
オンライン暴力の被害者の多くは、自分が受けている嫌がらせに対する法的保護について知識がありません。また、ディープフェイクやデータ流出など、新たなデジタルの脅威が次々と生まれる中で、問題はさらに複雑化しています。しかし、Lilianさんはこれらを新たな革新と教育の機会と捉えています。
彼女の非営利団体は、オンライン、オフラインを問わず1,000人以上の女性に対して、オンライン上の安全性、デジタルリテラシー、テクノロジーが助長するジェンダーに基づく暴力の危険性についての啓発活動や研修を行っています。この取り組みにより、すでに多くの女性がオンライン上の自身の情報に気を付けるようになってきており、ある大学生はLilianさんの研修を受けた後、「強固なパスワードやデータ保護の重要性に気づいた」と話しています。これは一見、取るに足らないことのように思われますが、デジタルセキュリティにおいては基本となる重要な留意点です。
Lilianさんの組織が現在取り組んでいる新しいプロジェクトは、オンライン上の安全性に関する簡単な講義を現地の言語で提供するモバイルアプリの開発です。このアプリには、ユーザーが有害なコンテンツをSNSプラットフォームに報告できる機能や、有害なオンライン行動をリアルタイムで検出して対処するネットいじめ防止アルゴリズムを搭載する予定です。
彼女は、ソフトウェア開発者やAI専門家と連携しながらアプリの開発を進め、より高度な機能を追加していきたいと考えています。「アフリカ人によるアフリカ人のためのアプリ、特に若い女性たちのためのアプリを作りたいと私たちは考えています」とLilianさんは言います。
国連ユニタール研修の経験
Lilianさんの活動が大きく飛躍したのは、国連ユニタール「アフリカの女性と若者のためのエッセンシャル・デジタルスキル開発:デジタル経済における雇用機会と生活向上の促進」研修事業に参加したときのことでした。この研修事業は、日本政府からの支援を受け、アフリカ全土の7,000人以上の女性と若者に、デジタル経済に適応するためのスキルを提供することを目的としています。Lilianさんは、この研修を通じてプロジェクト管理、サイバーセキュリティ、マインドフルネスといった重要なスキルを習得し、それを自らの活動に活かしています。体系的な計画手法を導入することで、組織がより効率的になり、目標志向になったと言います。
プロジェクト管理の研修を受けたことで、私たちの組織の計画や実行方法が大きく変わりました。"— Lilian Olivia、ジェンダーに基づくネットいじめ防止のための非営利団体創設者、国連ユニタール研修修了生(ケニア)
Lilianさんが国連ユニタールの研修から得たもう一つの革新的な学びは、マインドフルネスのスキルです。彼女は、オンライン暴力について話し合う前に呼吸法を取り入れることで、研修参加者が安心して話せる環境を作り出すようにしています。
さらに、事研修事業の中間レビューの位置づけでもあった対面ワークショップに参加したことで、国連ユニタール、MicrosoftやIBMの専門家らとネットワークを築くことができました。また、日本国大使の前で自身の活動について発表できたことは、彼女にとって最も印象的な出来事でした。
若い女性たちへのメッセージ「とにかく始めよう」
Lilianさんが若い女性たちに伝えたいメッセージは、シンプルです。
まず始めること。資金がなくても、まずは行動することが大事です。"— Lilian Olivia、ジェンダーに基づくネットいじめ防止のための非営利団体創設者、国連ユニタール研修修了生(ケニア)
Lilianさん自身、組織を立ち上げた当初は十分な資金がありませんでした。そこで、彼女はソーシャルメディアを活用し、情報を発信しながら認知度を上げていきました。「私たちの活動は、情熱から始まったのです」と彼女は言います。彼女は、情熱や決意、そして変革への強い意欲があれば、実際に個々人が変化を起こすことができると確信しています。
将来的には、ナイロビだけでなく、ケニア全土の学校や大学にデジタルリテラシー研修を提供し、活動の場を広げたいと考えています。また、オンライン暴力に対処する政策の強化を提唱し、ケニアのサイバー犯罪法の改正を推進する活動も行っています。「法律がネット上の脅威に適応し、裁判官や警察といった法に携わる人々がオンライン暴力の特性を理解する世の中になってほしい」と語ります。
Lilianさんは、女性たちのためにより安全なデジタル環境を築くことを決して諦めません。そして、彼女の取り組みが、より多くの女性がテクノロジーやサイバーセキュリティの分野に進出するきっかけになることを願っています。
国連ボランティア Amin Janさんのご協力のもと記事化されました。
国連ユニタールについて
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2023年には、世界中で54万人以上が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。詳しくはウェブサイトから(国連訓練調査研究所(ユニタール) 広島事務所 )。