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2025年2月19日、広島、日本 - レバノン出身の起業家であり、「グレート・アイデア・スペース 2023:起業家精神とイノベーション」研修の修了生であるSara El Koussaさんは、がん患者とその家族を支援し、自国の保健安全保障を促進する取り組みを行っています。

支援の欠如を埋める:がん患者とその家族のニーズ

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Saraさんは、生物学の学位を心理学の副専攻とともに取得しており、ジェンダー研究やがん治療研究にも取り組んでいます。彼女の進路選択に大きな影響を与えた出来事が、母親の乳がん闘病生活でした。彼女の家族は5年間、治療費を含む支援を得るために大変苦労しました。苦境を乗り越えなければならないときに手助けをしてくれるNGO組織がたったひとつでもあれば、家族にとってはかけがえのない存在になると痛感したと、当時のことを振り返ります。

20199月に母親を亡くしたSaraさんは、すぐに行動を起こしました。そして20209月には、がん患者とその家族のためのオンラインプラットフォームを立ち上げる学生主体のイニシアチブを開始しました。このプラットフォームは、それまで存在しなかった、患者を支援団体とつなぐワンストップサービスとして機能しています。「私たちは、栄養相談、サポートグループ、啓発ウェビナーなど、無料のサービスの提供も始めました」とSaraさんは説明します。

彼女の活動には、レバノンでのがんに対する社会的偏見が大きな障壁となっています。「人々はがんについて話すのを恐れ、『あの病気』と呼ぶほどです」とSaraさんは言います。さらに、レバノンの経済危機により、患者が十分な支援を受けるのが難しい状況にあります。そのため、海外からも寄付者を募る必要があるのです。

それでもSaraさんは前向きに考えています。これまでに、啓発イベントを通じて1,500人以上の学生にリーチし、多くの患者を直接支援してきました。最近では、がん患者の経済的負担を軽減することを目的としたクラウドファンディング部門をプロジェクトに追加しました。そんな彼女の努力を後押ししたのが、国連ユニタールの「グレート・アイデア・スペース 2023:起業家精神とイノベーション」研修での学びでした。

国連ユニタールの研修事業は私を成長させ、一年かけても見つけることができなかったリソースを提供してくれました" - Sara El Koussa、国連ユニタール研修修了生(レバノン)

国連ユニタールの研修事業に参加して得た成果

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「グレート・アイデア・スペース 2023:イラク、ヨルダン、レバノンにおける保健安全保障と経済発展のための起業家精神とイノベーション」研修事業は、イラク、ヨルダン、レバノンの起業家を対象に、保健分野の強化に貢献する社会的または営利企業の立ち上げと運営を支援することを目的としています。20237月から20243月まで開催されたこの研修プログラムは、日本政府および国民の支援により、全員参加のオンライン研修と、成績優秀者のみが参加する東京と広島での対面式ワークショップの2つのフェーズに分けて実施されました。

Saraさんは、国連グローバル・コンパクトの世界62拠点のうちのひとつであるグローバル・コンパクト・ネットワーク・レバノンを通じて、国連ユニタールの研修プログラムを知りました。彼女は広島平和記念資料館を訪れて目にした復興のメッセージに大きなインスピレーションを受け、本プログラムを「変革的」と評しています。

広島でメンターや他の起業家と交流したことは、自身を鼓舞されるような経験でした" - Sara El Koussa、国連ユニタール研修修了生(レバノン)

実践的な研修により、Saraさんはプロジェクトを強化するための新しい戦略とアイデアをすぐに実務に活かすことができました。Saraさんは、オンライン研修の参加者200名の中で対面ワークショップに招待された16名のうちの1人として、東京と広島での研修に参加しました。研修中、参加者はビジネス開発、提案書作成、ピッチングに焦点を当てた指導を受けました。現在、彼女はプロジェクトのクラウドファンディングプラットフォームをより持続可能で効果的なものにアップグレードしようとしています。

支援への感謝と今後の目標

Saraさんは、日本政府からの支援なくして本プログラムは成し得なかったと、深い謝意を示しています。今後の目標として、クラウドファンディングプラットフォームを強化・拡大し、がん患者への支援をさらに充実させることを挙げています。また、がんに対する偏見の根本的な解決のために、若者への啓発と教育活動を続けたいとしています。

Saraさんは他の起業家に向けて、レジリエンスと目的意識を持つことが重要であると声を強めます。

己の信じる道を進むということ、それはソーシャルメディアで目にするような簡単なものではありません、とてつもなく険しい旅になることも覚悟しなければならない。でも、その価値はあると必ず確信するでしょう。" ―Sara El Koussa、国連ユニタール研修修了生(レバノン)

国連ボランティア Roman Cyfkoさんのご協力のもと記事化されました。

英文は以下からご覧いただけます。

Pioneering Cancer Patient Support in Lebanon through Innovation and Compassion: Sara El Koussa | UNITAR

国連ユニタールについて

国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2023年には、世界中で54万人以上が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。詳しくはウェブサイトから(国連訓練調査研究所(ユニタール) 広島事務所 )。

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