- 障がい者の共生のために活動する南アフリカのLucretia Dreyerさんは、2023年国連ユニタール「アフリカの女性と若者のためのエッセンシャル・デジタルスキル開発:デジタル経済における雇用機会と生活向上の促進」研修事業の修了生です。
- この研修事業により、Lucretiaさんは、障がいを持つ子どもたちがコーディングやロボット工学を学ぶための支援技術が大きな可能性を秘めていることに気づきました。
- Lucretiaさんは、障がいのある子とない子が一緒に学ぶことができる、包摂的なコーディングおよびロボット工学プログラムを確立したいと考えています。
- 日本政府の資金支援により実現した本研修事業は、2023年11月から2024年3月まで実施され、アフリカの英語圏24か国の7,000人の女性と若者を対象にデジタルスキル習得、デジタル主導の世界で成功するための人材育成を目的に開催されました。
転機:障がいのある子どもの受け入れ
南アフリカの小さな村で育ったLucretiaさんは、学校の管理者である母親が管理業務に昔ながらのタイプライターを使うのを見てきました。この技術はLucretiaさんの好奇心を刺激しました。彼女はタイプライターの仕組みに魅了され、度々起きる問題を解決する中で、その仕組みを理解しようと試みました。
彼女はテクノロジーに興味を持っていましたが、当時の女子児童に対する社会的な期待は、彼女の興味のある分野とは異なり、彼女はSTEM分野に進むことを躊躇しました。「テクノロジーも数学も、男子のためのものだと言われ、一度はあきらめました」とLucretiaさんは振り返ります。このような社会的圧力の影響を受け、さらに質の高い教育やリソースへのアクセスが限られていたことも相まって、Lucretiaさんは技術の道ではなく、生理学の学位を取得しました。
それでも、Lucretiaさんのテクノロジーに対する生来の情熱は生き続けました。転機が訪れたのは2012年にコーディングとロボット工学の事業にボランティアとして参加したときでした。当初、彼女は「100万人のアフリカの子どもたちに[この分野について]教える」ことで、抽象的な算数と科学の授業が実際の世界に紐づき、STEMという世界に興味を持つようになることを望んでいました。しかし、彼女は直ちに、障がいを持つ子どもたちに向けての教育法について気づき、思い悩みました。
「私は、自ら教えることをあきらめていた子どもたちがいたことに気づきました。身体に障がいのある子どもたち、目が見えない子どもたち、支援技術を導入すればロボットを作れる子どもたちです。そして、それがまったく新しい世界を切り開いたのです」と彼女は説明します。この認識は、すべての子どもたちのためのインクルーシブで受講可能なSTEM教育に向けて取り組むための新たな情熱に火をつけました。
国連ユニタールの研修事業:変化へのきっかけ
Lucretiaさんは、技術的なスキルと知識を向上させる必要性を感じ、専門能力開発の機会を模索しました。このような中で、国連ユニタールの「アフリカの女性と若者のためのエッセンシャル・デジタルスキル開発」研修事業に参加することとなったのです。2023年11月から2024年3月まで実施されたこの研修は、世界の労働力でもある7,000人のアフリカの女性と若者が「第4次産業革命」とデジタル主導の世界における未来に備え、デジタルスキルを習得し、雇用機会と競争力を高めることを目的として実施されました。この研修事業は、日本政府と日本国民の支援のもと、アフリカの英語圏24か国を対象に行われました。
国連ユニタールの研修事業は、変革をもたらすことが証明されました。最初のフェーズであるオンライン研修では、LucretiaさんはAIの基礎について強固な基盤を得ることができました。「AIというと、何かをするロボットを思い浮かべがちです。しかし、コンピュータービジョン、ニューラルネットワーク、深層ニューラルネットワーク、機械学習などの新しいテクノロジーについて学びました。そして、コンピュータービジョンとスマートグラスを使用して、視覚障害のある学習者に数学、コーディング、ロボット工学などの科目を教えることができると気づきました」と彼女は言います。
コンピュータービジョン、ニューラルネットワーク、深層ニューラルネットワーク、機械学習などの新しいテクノロジーについて学びました。そして、コンピュータービジョンとスマートグラスを使用して、視覚障害のある学習者の教育が可能であると気づきました”ーLucretia Dreyerさん、国連ユニタール研修修了生(南アフリカ)
Lucretiaさんは、研修の第2フェーズでの個人プロジェクトとしてこのアイデアを発展させました。同時にデザイン思考の使い方を学び、戦略とプロセスを計画に組み込む方法を学びました。更に、Luctretiaさんは参加者の上位25人に選ばれ、ナイロビで開催された第3フェーズの対面ワークショップにも参加しました。
Lucretiaさんは、 「旅をして新しい国を見て、新しい人々と出会うことは、[主催者が] 想像している以上にインパクトがあります」と言います。このワークショップは、持続可能性と地域のリーダーシップについての洞察を提供するだけでなく、多様なバックグラウンドを持つ参加者との貴重なつながりを育む機会ともなりました。
テクノロジーの領域で女性に新たな可能性を導く
Lucretiaさんは、国連ユニタールの研修事業が、35歳以上の女性を対象に含んでいることに対して、変化のスピードが速い男性優位の分野を切り抜けるための支援に感謝しています。特に、アフリカ各地や日本、世界の多様な女性ネットワークに触れたことで、彼女の視野が広がり、テクノロジー業界で女性が活躍する機会の進展を目の当たりしました。テクノロジー分野でのキャリアアップを目指す女性に対し、Lucretiaさんは継続的な学びと新しい機会を受け入れることの重要性を強調しています。
[国連ユニタールの研修事業は] 特に40代の女性にとって、本当に人生を変えるものでした。それは[私の]人生観全てを変えました。そして、私は永遠に感謝し続けます”—Lucretia Dreyer、国連ユニタール研修修了生(南アフリカ)
よりインクルーシブな未来を構築する
新たに得た知識と経験のもと、Lucretiaさんは、すべての子どもたちにとってより包摂的で公平な未来を創造するというビジョンを追求しています。彼女は障がい学の修士号取得と12か月のデータサイエンスと機械学習のプログラムを終了するために勉強しています。Lucretiaさんは、習得した知識やスキル、経験を活かして、障がいのある子どもたちが障がいのない子どもたちと一緒に学ぶ、無償提供される包摂的な放課後または週末のコーディングとロボット工学授業を開始したいと考えています。彼女はまた、障がいを持つ失業中の若者に向けた研修を実施し、ワークショップのファシリテーターとして雇うことも考えています。
国連ボランティアReggy Nur Muhammadのご協力のもと記事化されました。
英文は以下からご覧いただけます。
国連ユニタールについて
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2023年には、世界中で54万人以上が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。詳しくはウェブサイトから(国連訓練調査研究所(ユニタール) 広島事務所 )。