2025年2月12日、兵庫 – 国連訓練調査研究所(ユニタール)と株式会社パソナグループは、アジア太平洋の18か国から集まった50人のリーダーを対象に、兵庫県淡路島で研修を共同実施しました。この淡路島での研修は2025年2月10日から12日にかけて行われ、インド太平洋地域における海洋と人間安全保障の課題に効果的に対処するための実践的なスキルを参加者に提供しました。この連携は、2023年に締結された覚書を通じて、株式会社パソナグループと国連ユニタールのパートナーシップをさらに強化する重要な一歩となりました。
淡路島で学ぶ海洋・人間安全保障
淡路島での研修セッションは、「自由で開かれたインド太平洋のリーダー育成研修:海洋と人間の安全保障」研修事業における12日間のワークショップの最初の研修項目として実施されました。この事業は、日本政府の支援を受け、国連ユニタールが実施する「しまなみコレクティブ」イニシアティブの一環として行われています。
株式会社パソナグループは、地方創生と地方の新たな雇用機会創出を目指した広範な取り組みの一環として、2020年に本社機能の一部を淡路島に移転しました。本研修の実施においては、淡路島でのフィールドワークやインタラクティブな講義などの学習項目のデザインや運営を、国連ユニタールと株式会社パソナグループが共同で行いました。
研修では、海洋と人間の安全保障に関する重要なテーマが取り上げられ、初日は株式会社パソナグループによる地方創生の取り組みに関する講義が行われました。また、参加者はパソナ農援隊による講義とツアーに参加し、「農ある暮らし」をテーマに、安全な食や持続可能な農の在り方を農業体験を通して実践的に学ぶための最良事例などについて学びました。さらに、藻場再生に取り組むスタートアップ企業による実践的なセッションや、東京大学DLX Design Labによるマイクロプラスチック問題に関する講義とフィールドワークも行われました。
パソナ農援隊によるセッションでは、新たな気付きが多々ありました。自然の力を活かしたエネルギーの活用や水消費の最適化は、特に災害の多い地域で持続可能性の鍵となります。人間が自然と調和し、どのように共生していくことができるのか、貴重な学びを得ることができました。- Hafford Norea、国連ユニタール研修参加者(パプアニューギニア)
この淡路島での研修の実施は、「しまなみコレクティブ」プログラムの目的と密接に関連しています。しまなみコレクティブは、瀬戸内海の島々を結ぶ「しまなみ海道」にちなんで名付けられました。一部の島々は、国連ユニタール広島事務所が所在する広島県にまたがっており、淡路島は同じ内海を共有する地域に位置しています。「しまなみコレクティブ」プログラムは、異なる文化やアイデア、人々をアジア太平洋地域全体で結びつける橋としての国連ユニタールの役割を象徴しています。
能力開発に向けたグローバルパートナーシップ
国連ユニタールと株式会社パソナグループとの協力覚書は、世界各地の国連ユニタール研修参加者に対して、知識共有の取り組みを促進し、学びの経験をより豊かにするための協力の枠組みを提供しています。
このパートナーシップの最初の成果は、日本政府拠出・国連ユニタール事業「生活基盤の向上を目指して:ポーランド在住ウクライナ避難民女性のためのデジタルリスキリング研修」における協力です。この事業は、日本政府および国民の支援により2023年10月に開始され、約500人のウクライナ女性難民が労働市場で需要の高まるデジタルスキルを学び、生計向上と収入創出の機会を提供しました。株式会社パソナグループは、同研修の学習コンテンツとプログラム運営の一部に貢献しました。
国連ユニタール広島事務所の三上知佐所長は、このパートナーシップの重要性を強調し、次のように述べています。
ウクライナ避難民女性のためのデジタルリスキリング研修に続き、今般の淡路島での研修セッションでの海洋と人間の安全保障に関する実践的な学習を通じた協力の成功は、戦略的パートナーシップの効果と意義を示しています。持続可能な開発という共通の目標に向けた取り組みを加速させることが急務となる中、セクターを超えた戦略的連携の重要性が今まで以上に高まっています。―国連ユニタール広島事務所、三上知佐所長
この度、研修セッションの訪問先として兵庫県淡路島にお越しいただけたことに、改めて感謝を申し上げます。大自然に囲まれ、農業や漁業、畜産などが盛んにも関わらず、都市圏へも近い淡路島は、環境問題を研究し、アクションを起こすための日本における 重要な拠点になると考えています。国連ユニタールの皆様とも、さらなる連携を実現させたいです。―株式会社パソナグループ、南部真希也取締役常務執行役員
国連ユニタールと株式会社パソナグループとの協力は、世界規模の喫緊の課題に対処するための多様なセクター間のパートナーシップの重要性を際立たせています。多岐にわたる専門知識、リソース、ネットワークの結集を可能にするこのような協力は、変革を生み出す人々や世界のリーダーを支援する効果的な能力開発ソリューションを提供し、より持続可能で豊かな世界の構築に貢献します。
英文記事は以下からご覧いただけます。
UNITAR and Pasona Group Strengthen Partnership: Collaborating for Asia-Pacific Leaders in Sea and Human Security | UNITAR
国連ユニタールについて
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、1963年の設立以来、研修事業に特化した国連機関として、世界各国の人材開発を支えています。2023年には、54万人以上が受講。ジュネーブ本部のほか、ニューヨーク事務所、広島事務所、ボン事務所があり、様々なネットワークをもっています。2019年からは持続可能な繁栄局(Division for Prosperity)のもと、広島事務所と、ジュネーブ本部の財政・貿易ユニットの職員がともに、起業やリーダーシップ、貿易と金融、デジタル技術、軍縮などについてプログラムを展開しています。紛争後復興の過程にある国の人々への研修などには、原爆投下後から現在の平和都市に至る過程を一つの復興モデルとして講義に組み込むなど、平和で公正な社会の実現にも貢献しています。