• アジア太平洋18か国から集まった研修参加者50名が、国連ユニタールの「自由で開かれたインド太平洋のリーダー育成:海洋と人間の安全保障研修」の最終フェーズである12日間の日本での対面ワークショップ(2月10日~21日)を終え、3フェーズにわたり実施された同研修プログラムを修了しました。
  • このワークショップは、参加者の能力強化を図るとともに、インド太平洋地域における海洋と人間の安全保障の課題に対する地域のレジリエンスを高めるためのネットワークを強化すること目的とし、日本政府の支援により実施されました。
  • 参加者は淡路島、広島、千葉、東京を訪れ、専門家による講義やフィールドワークに参加し、海洋資源管理、持続可能な漁業と農業、海洋保全、沿岸域の資源管理、排水処理、災害リスク軽減など関する知識を深めました。
  • 最終日には、参加者がエビデンスに基づいた政策提言を発表し、インド太平洋地域における海洋と人間の安全保障の課題に対する実行可能な解決策を示しました。ワークショップは、修了証授与式と研修成果を共有するための公開イベントで締めくくられました。
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2025年2月21日、東京 –アジア太平洋18か国から集まった研修参加者50名が、国連ユニタールの「自由で開かれたインド太平洋のリーダー育成:海洋と人間の安全保障研修」の最終フェーズである12日間の日本での対面ワークショップ(2月10日~21日)を終え、3フェーズにわたり実施された同研修プログラムを修了しました。このワークショップは、参加者の能力強化を図るとともに、インド太平洋地域における海洋と人間の安全保障の課題に対する地域のレジリエンスを高めるためのネットワークを強化すること目的とし、日本政府の支援により実施されました。

ワークショップでの学び

12日間の研修期間中、参加者は淡路島、広島、千葉、東京を訪れ、専門家による講義やフィールドワークに参加し、海洋資源管理、持続可能な漁業と農業、海洋保全、沿岸域の資源管理、排水処理、災害リスク軽減など関する知識を深めました。

最終日には、参加者がエビデンスに基づいた政策提言を発表し、インド太平洋地域における海洋と人間の安全保障の課題に対する実行可能な解決策を示しました。ワークショップは、修了証授与式と研修成果を共有するための公開イベントで締めくくられました。公開イベント「インド太平洋における海洋アクションの今後の展望(Ways Forward for Ocean Action in the Indo-Pacific)」では、基調講演、政策提言の発表、パネルディスカッションが行われ、海洋安全保障に関する対話を促進しました。

Awaji Island Sessions (10–12 February)

淡路島では、参加者は、株式会社パソナグループとの連携の下で実施したインタラクティブな講義やフィールドワークを通じ、持続可能な漁業と農業、水の安全保障、マイクロプラスチック、廃棄物管理、海洋保全について実践的に学びました。

株式会社WMIは、スタートアップでありながらビジネスにとどまらず、教育にも力を入れていることを知りました。バイオ分解性の材料を使用して、次世代に持続可能性について教える取り組みは大変興味深かったです。Yuri Pratama Widiyana、国連ユニタール研修参加者(インドネシア)

広島セッション(2月13日~18日)

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参加者は広島に移動し、広島平和記念公園を見学し、原爆犠牲者慰霊碑前で献花を行いました。また、湯﨑英彦広島県知事を表敬訪問し、海洋プラスチック、持続可能な養殖業、持続可能な観光について活発な意見交換を行いました。

参加者らは沿岸資源の管理と保全に焦点を当てた講義を受けたほか、広島市水産振興センターと井口漁協を訪れ海藻養殖について学びました。また、第六管区海上保安本部を視察し、海上保安の業務についての知見を得ました。さらに、広島市西部水資源再生センターの視察を通して、排水管理について理解を深めました。

沿岸管理などの講義を受けた後、土地利用計画と海洋資源利用計画を合わせて考える必要があると気づきました。未利用の水をそのまま海に流すのではなく、農業用灌漑に回すことができるのです。ーMary Enya Tegavota、国連ユニタール研修参加者(ソロモン諸島)

千葉・東京セッション(2月19日~21日)

参加者らは219日に千葉に移動し首都圏での講義と視察を通して、環境管理、災害管理、沿岸域の災害リスク削減、そして、沿岸保護に関する理解を深めました。東京を訪れた際には、外務省にて松本尚外務大臣政務官を表敬訪問しました。参加者は、同研修で得た成果や学んだ教訓を活かし、どのように自分の地域や国に有意義に貢献できるかについて共有しました。

また、荒川ロックゲートと葛西臨海公園の視察を通して、参加者は都市型洪水防止、沿岸保護インフラ、自然と人工構造物の双方の活用を組み合わせた、持続可能な沿岸のためのインフラづくりについての理解を深めました。

最終プレゼンテーションと公開イベント

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研修最終日、参加者はグループ発表を行い、同地域の深海採掘の課題への対策、海運業界の脱炭素化、コミュニティ主体の海洋保護区などを含む、海洋と人間の安全保障に関する主要な課題の解決に向けた政策提言を示しました。

発表後、修了証授与式が行われ、国連ユニタール広島事務所の三上知佐所長が、それぞれの地域コミュニティで有意義な変化を促すための取り組みと創造的なアプローチを示した参加者を称賛しました。

皆様が生み出したアイデアや練り上げた政策提言、ここで築いたネットワークは、皆様の努力の証です。この研修を終えた今、皆様は新しい知識だけでなく、自分の分野で変化を生み出すための手段、つながり、そしてインスピレーションを持ち帰るのです。三上知佐、国連ユニタール広島事務所

公開イベント「インド太平洋における海洋アクションの今後の展望(Ways Forward for Ocean Action in the Indo-Pacific」は東京の国連大学で開催され、オンラインで同時配信もされました。同イベントでは、インド太平洋地域における海洋と人間の安全保障の強化に向けた現在の動向と実行可能な解決策についての対話が行われました。

イベント冒頭、安藤重実 外務省地球規模課題総括課長から開会のご挨拶を賜りました。安藤課長は、研修の最終日を迎えた参加者を祝福し、海洋と人間の安全保障に関する提案を自信を持って発表するよう励ましました。

さらに、岸田文雄前内閣総理大臣より研修参加者に向けて特別ビデオメッセージが贈られました。メッセージでは、今日の世界が直面する重要な課題に取り組む本研修の意義が強調され、「しまなみコレクティブプログラム」の研修が持つ、異なる文化、アイデア、そして人々を繋ぐ精神についても触れ、次のように述べられました。

皆様がここで得た学びを母国に持ち帰り、広げていただきつつ、日本とそれぞれの国の架け橋として持続可能な未来に向けて貢献していくことを期待しています。― 岸田文雄 前内閣総理大臣

NPO法人海辺つくり研究会理事長であり、東アジア海域環境管理パートナーシップPEMSEA)技術会議議長の古川恵太氏は、インド太平洋地域における海洋と人間の安全保障の強化をテーマに、基調講演を行いました。その後、参加者グループによる政策提言の発表が行われ、各グループは海洋と人間の安全保障のギャップについて分析し、実行可能な解決策を提案しました。その中で古川氏は、インド太平洋地域における海洋と人間の安全保障の課題に対処するために、安全保障と持続可能性の経済、社会、環境的側面を統合的に捉え、取り組むことの重要性を強調しました。

また、アジア太平洋諸島国の実務家を招いたパネルディスカッションが行われ、地域における海洋と人間の安全保障の喫緊の課題について意見交換が行われました。さらに、各地域コミュニティよりよい変化と地域の連携を促進するための取り組みについて議論が交わされました。

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「自由で開かれたインド太平洋のリーダー育成:海洋と人間の安全保障」研修プログラムについて

「自由で開かれたインド太平洋のリーダー育成:海洋と人間の安全保障」研修プログラム(2024年6月〜2025年2月)は、参加者に気候、社会、経済、食料および海洋の安全保障を強化するためのスキルと知識を提供し、インド太平洋地域全体で調整メカニズムを確立することを目的としています。同事業は、日本政府の支援を受けて、国連ユニタールが実施しています。事業詳細は以下をご覧ください。
The Leaders for a Free and Open Indo-Pacific: Sea and Human Security
国連ユニタールは同事業に支援いただいた日本政府および日本国民の皆様に心より感謝の意を表します。また、この事業の成功を支えてくださった専門家の皆様、連携機関、関係者・機関の皆様にも、深く感謝いたします。

国連ユニタールについて

国連訓練調査研究所(ユニタール)は、1963年の設立以来、研修事業に特化した国連機関として、世界各国の人材開発を支えています。2023年には、54万人以上が受講。ジュネーブ本部のほか、ニューヨーク事務所、広島事務所、ボン事務所があり、様々なネットワークをもっています。2019年からは持続可能な繁栄局(Division for Prosperity)のもと、広島事務所と、ジュネーブ本部の財政・貿易ユニットの職員がともに、起業やリーダーシップ、貿易と金融、デジタル技術、軍縮などについてプログラムを展開しています。紛争後復興の過程にある国の人々への研修などには、原爆投下後から現在の平和都市に至る過程を一つの復興モデルとして講義に組み込むなど、平和で公正な社会の実現にも貢献しています。

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