• John Ladu Simon Jacobさんは、南スーダンのまだ未開拓である農業の可能性を活かし、食料不安に立ち向かうために尽力しています。
  • 大学の学位は持っていないものの、Johnさんは実務経験とリーダーシップの素質を買われ、農業企業のマネージングディレクターに採用されました。
  • 会社では、Johnさんがトラクターのレンタルサービスを管理しており、地元の農家が低価格でより多くの土地を耕作できるように支援し、南スーダンの輸入依存を減らすことを目指しています。
  • Johnさんは、2023年の国連ユニタール「グレート・アイデア・スペース 2023 :南スーダンの食料安全保障のための起業家精神とイノベーション」研修を修了しました。この研修を通じて、Johnさんは自身のビジョンを明確にし、実践的な解決策を練り上げ、効果のあるプロジェクトを牽引するためのツールと自信を習得しました。
  • 彼の長期的なビジョンは、南スーダンを世界でも主要な農業国にし、農民と国全体を支える持続可能な経済を創出することです。
UNITAR

2025228日、広島 – John Ladu Simon Jacobさんは、南スーダンの農業を変革するために使命を持っています。農業企業のマネージングディレクターとして、彼は自国の最大の課題の一つである食料不安に取り組んでいます。彼のビジョンは、南スーダンの食料輸入依存を減らし、自給自足型の農業システムを構築することです。国連ユニタール「グレート・アイデア・スペース 2023 :南スーダンの食料安全保障のための起業家精神とイノベーション」研修は、Johnさんがそのビジョンを実行に移すためのスキルと自信を高める手助けとなりました。

農業におけるチャンスと課題の国:南スーダン

Johnさんは、中等学校卒業後、南スーダンの食料不安に取り組む国際機関でのプロジェクトに携わり始めました。彼がこの分野へ興味を持ったのは、食料がコミュニティに栄養を与え、安定を育む力を持っていると感じたからです。「食料は人間にとっての薬です」と彼は言います。

若い国である南スーダンは、多くの課題を抱える中で、食料不安に直面しています。Johnさんは、農業部門における高度なスキルを持つ専門家の不足が主な要因の一つであると言います。また、南スーダンでは、政治不安と治安の悪化のために農民が安定して土地を耕作できない状況が続き、食料の大部分が輸入に依存しているため、価格が高騰しています。Johnさんは、農業には政治の安定が必要不可欠で、持続可能な成長のためには平和が重要であると述べています。彼は、輸入依存を減らし、自給自足型の食料生産を推進することを提唱しています。

さらに、Johnさんによると、農業への財政投資が不足していることも大きな課題です。南スーダンには豊かな自然資源がありますが、それらを持続可能なシステムに変えるための資本が不足しています。政府の取り組みは、長期的な対策よりも人道支援に向けられることが多く、民間部門の関与も利益追求にとどまっています。このような持続可能な投資の欠如が、輸入依存と農業生産量の低さによる悪循環を生み出し、進展を妨げています。

Johnさんにとって、農業は南スーダンの食料不安を解消するだけでなく、国の発展に対する解決策でもあります。彼は、故郷の豊な土地と、生産や加工、マーケティングの知識を活用して、農業の潜在能力を最大限に活かすことを望んでいます。

学びの力: 国連ユニタール研修を経て

UNITAR

Johnさんは、ある小さなNGOで働いていた時に、国連ユニタールの研修に出会いました。国連ユニタール「グレート・アイデア・スペース 2023 :南スーダンの食料安全保障のための起業家精神とイノベーション」研修は、日本政府と日本国民の支援を受けて、南スーダンの農業バリューチェーンに関わる若手起業家や先駆者を対象に実施されました。この事業は、南スーダンにおける喫緊の食料不安に対処しながら、長期的なレジリエンスと繁栄の基盤を築く革新的で持続可能なビジネスやプロジェクトを設計・立ち上げる支援を目的に実施されました。

研修の最初の2つのフェーズはオンラインで行われました。Johnさんは、第1フェーズで起業家精神と農業ビジネスの基礎を学び、第2フェーズでは自身のプロジェクトの試作・設計を始めました。インターネット接続や電力の不安定さが研修への参加に支障をきたすも、Johnさんは諦めず、覚悟を持って参加し続けました。彼はリーダーシップとイノベーションについての理解を深め、コミュニティのための実行可能な解決策を練りました。

国連ユニタールの研修に参加したことにより、人生が変わりました。多くの知識を吸収した研修仲間も、私と同様に、今後南スーダンに戻って変化をもたらすでしょう。— John Ladu Simon Jacob、農業企業マネージングディレクター、国連ユニタール研修修了生(南スーダン)

Johnさんは、研修の第2フェーズで、成績上位19名に選ばれ、第3フェーズである10日間の日本での対面ワークショップに参加しました。そこで彼は講師と直接会い、さまざまなバックグラウンドを持つ仲間たちと交流し、イノベーション拠点への視察を通じて様々な刺激を受けました。

特に、広島平和記念資料館を訪れ、被爆後の都市の復興について学んだことが、Johnさんの平和と安全が発展に欠かせないという信念を再認識させました。「どの国も、世界で何かを成し遂げたければ、平和である必要があります」と彼は言います。

「私は行動を起こすつもりです」

UNITAR

大学の学位は持っていないものの、Johnさんの経験と素質が認められ、現在の会社のマネージングディレクターに就任しました。そこで、彼は地元の農家に非常に低価格でトラクターをレンタルする取り組みを管理しています。「これは地域貢献活動のようなものだと考えています」とJohnさんは言い、農家がより効率的に土地を開墾し、地元の農業の生産量をあげる手助けをしています。

私は行動を起こすつもりです。— John Ladu Simon Jacob、農業企業マネージングディレクター、国連ユニタール研修修了生(南スーダン)

行動を早速に起こしたJohnさんは、研修に参加している最中にも、彼の農業事業の一環として、トラクター配備を始めました。彼の目標は、この活動で毎月1,000エーカーの農地を開墾し、年末までには市場にもっと地産の農産物を提供できるようにすることです。また、手頃な価格の食品がより広く手に入るようになれば、子どもたちの栄養不良との闘いへの力にもなると期待しています。

Johnさんは、国連ユニタールの研修を支援した日本政府と日本の人々に深く感謝しています。彼は、この経験に幸運を感じており、このような機会を求める何百万もの人々の中から参加できたことに感謝しています。

起業家仲間へのアドバイスとして、Johnさんは「学び、成長する機会を最大限に活用してほしい」と言います。

座って不平を言っているだけでは何も始まりません。私たちの知識を行動に移しましょう。誰もあなたの代わりに働くことはできません。自分のために働くのはあなた自身ですより良い未来のために。 — John Ladu Simon Jacob、農業企業マネージングディレクター、国連ユニタール研修修了生(南スーダン)

現在、Johnさんはウガンダの大学で学びながら自身の実務経験を補完しています。彼のビジョンは、南スーダンが世界的な農業国となり、農民のみならず、国全体を支える持続可能な農業経済を築くことです。彼の行動と願いを通じて、Johnさんは単に作物を育てるのではなく、南スーダンの未来に希望、安定、繁栄の種を植えているのです。

国連ボランティア Tanvi Anandさんのご協力のもと記事化されました。

英文記事は以下からご覧いただけます。

Transforming South Sudan’s Agricultural Future: John Ladu Simon Jacob

国連ユニタールについて

国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2023年には、世界中で54万人以上が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。詳しくはウェブサイトから(国連訓練調査研究所(ユニタール) 広島事務所 )。

シェアする