- 国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所は、核兵器をなくす日本キャンペーン(JANA)と協力し、「被爆80年 核兵器をなくす国際市民フォーラム」(2025年2月8日~9日)の分科会として、東京で公開イベントを開催しました。
- 国連ユニタールの研修顧問3名を含む登壇者が、国連が進める核軍縮の取り組みに関する国際的な議論の現状についての知見を共有しました。
- 国連ユニタールの展示セッションでは、たびまちゲート広島株式会社および株式会社フジタと協力し、原爆の実相を伝えるバーチャル・リアリティ(VR)体験を紹介しました。
- また、国連ユニタールの「核軍縮・不拡散広島研修」に参加する14か国からの外交官15名が、フォーラム1日目の公開イベントに出席し、市民社会団体や専門家、日本国内外の参加者と対話を深める機会を得ました。
2025年2月9日、広島 - 2025年2月9日、国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所は、核兵器をなくす日本キャンペーン(JANA)と協力し、「被爆80年 核兵器をなくす国際市民フォーラム」(2025年2月8日~9日)の分科会として、東京で公開イベントを開催しました。2025年、広島・長崎への原爆投下から80年の節目を迎える中、専門家や活動家をはじめ、さまざまな分野の参加者が一堂に会し、核兵器使用のリスクが高まる現状について考えました。登壇者らは、広島・長崎の教訓を次世代に伝えることの重要性と、核兵器による悲劇を二度と繰り返さないための広範な対話や多国間外交の継続の必要性を強調しました。
核軍縮に向けた多国間外交の現在
公開セッションの第一部「核軍縮問題に関する国連の近年の動向」は、国連が進める核軍縮の取り組みへの理解を深め、核軍縮に関する国際的な議論の現状について認識を高めることを目指し、学生や若者、市民活動家を含む幅広い参加者を対象として実施されました。
パネリストには、国連ユニタールの研修顧問を務める タリク・ラウフ氏(国際原子力機関〔IAEA〕元検証・安全保障政策部長)、ティム・コーリー氏(国連軍縮研究所〔UNIDIR〕上級研究員)、ユーリー・クリボノス氏(国連アジア太平洋平和軍縮地域センター〔UNRCPD〕元所長)に加え、堀部順子氏(名古屋外国語大学准教授)が登壇し、三上知佐国連ユニタール広島事務所長の進行で議論が進められました。
パネリストらは、安全保障や外交に関する現在の課題と、多国間の枠組みに基づく核軍縮の進展について貴重な見解を共有しました。2026年に開催予定の核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議にも触れ、国連が主導する多国間枠組みにおいて同会議が果たす重要な役割が強調されました。
核兵器使用のリスクが高まる中、ラウフ氏は多国間の核軍縮への取り組みを改めて強化する重要性を訴えました。彼は、「国際機関、市民社会、外交官がともに議論する場を設けることが、前進のために不可欠です」と述べ、今回のイベントが意義深い対話と協力を促進する好例であることを指摘しました。
被爆の実相を次世代に伝える技術と連携
公開イベントの第二部「バーチャル・リアリティで伝える被爆の実相」では、国連ユニタールが、たびまちゲート広島株式会社および株式会社フジタと協力し、原爆の実相を伝えるVR体験を紹介しました。
イベントでは、国連ユニタール親善大使であり、広島の被爆三世である為末大氏のビデオメッセージも上映されました。為末氏は、被爆の実体験を共有できないもどかしさを語るとともに、VR技術がそのギャップを埋める可能性を持つことを強調しました。
祖母にとって被爆の体験は、非常に大きな、ことばで表現することのできないものなのだと感じていました。体験をことばだけでは引き継げないというのは、核兵器の恐ろしさを伝えていくときの難しさだと思います。[本イベントの機会に]本人の中で体験を生み出す機能を持ちうるVRで、被爆の実相を体験し、原爆の恐ろしさとともに、どうしたら世界の平和を実現できるのかをぜひ伝えていってほしいです。- 為末大氏(国連ユニタール親善大使)
VR体験では、広島の原爆投下直後の状況が臨場感をもって再現され、参加者は核兵器の非人道性をより深く実感することができました。国連ユニタールは、広島の教訓を次世代に伝えていくため、今後も革新的な技術の活用や分野を超えた連携を積極的に進めていきます。
NPTや核セキュリティをはじめとする核軍縮について分かりやすい説明があり、勉強になりました。その後のVR体験は非常にリアリティがあるものでした。原爆投下直後、こんな状況でどこへ歩いて行けばよいのか—その絶望的ともいえる状況を想像させられました。ー国連ユニタールのセッションへの参加者
共通の目標:核兵器のない未来へ向けて
同フォーラム初日(2月8日)には、JANAが主催する公開セッション「『核兵器のない世界』を想像/創造する」に、国連ユニタールがアジア太平洋地域14か国からの外交官15名が参加しました。国連ユニタール研修顧問のラウフ氏もパネリストとして登壇しました。本セッションでは、核兵器のない世界を実現するためのビジョンや理念、市民社会の行動の重要性について議論が交わされました。
外交官らは、国連ユニタールの「核軍縮・不拡散広島研修」(2月3日~8日)への参加のために来日しており、研修最終日の活動項目として出席した本フォーラムでは市民社会団体や専門家、外交官、日本国内外の参加者と対話を深める機会を得ました。これにより、多国間協力の視点が一層広がり、核軍縮の共通の目標に向けた行動への新たなインスピレーションを受けました。
核兵器廃絶を目指す活動を展開する市民社会ネットワークであるJANAには、20以上の市民社会団体や個人が参加しています。JANAとの緊密な協力関係は、国連ユニタールが進める核兵器のない世界の実現に向けた継続的な取り組みを、さらに強化するものです。国連ユニタールは、パートナーシップと教育・研修プログラムを通じて、人々や地域社会のエンパワーメントに引き続き貢献し、より安全で豊かな世界の実現を目指します。
国連ユニタールについて
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、1963年の設立以来、研修事業に特化した国連機関として、世界各国の人材開発を支えています。2023年には、54万人以上が受講。ジュネーブ本部のほか、ニューヨーク事務所、広島事務所、ボン事務所があり、様々なネットワークをもっています。2019年からは持続可能な繁栄局(Division for Prosperity)のもと、広島事務所と、ジュネーブ本部の財政・貿易ユニットの職員がともに、起業やリーダーシップ、貿易と金融、デジタル技術、軍縮などについてプログラムを展開しています。紛争後復興の過程にある国の人々への研修などには、原爆投下後から現在の平和都市に至る過程を一つの復興モデルとして講義に組み込むなど、平和で公正な社会の実現にも貢献しています。