• 211日に、エジプト、イラク、レバノンの起業家およびイノベーター17名が、国連訓練調査研究所(ユニタール)の「持続可能なビジネス開発による食料安全保障と生計向上:エジプト・イラク・レバノン向け起業家研修」の日本ワークショップを通して得た知識を活用したビジネスモデルや事業構想を発表しました。
  • 表敬訪問、スタディツアー、体験型学習などで構成されたこのワークショップは、24日から11日まで、東京と広島で開催されました。
  • この研修事業は、日本政府の支援を受け、中東・北アフリカ地域において持続可能でレジリエンスある食料システムと経済発展を促進することを目的としています。
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2025211日、広島 – エジプト、イラク、レバノンの起業家およびイノベーター17名が、国連訓練調査研究所(ユニタール)の「持続可能なビジネス開発による食料安全保障と生計向上:エジプト・イラク・レバノン向け起業家研修」の日本ワークショップを通して得た知識を活用したビジネスモデルや事業構想を発表しました。

この対面式研修は、202524日から11日まで国内で開催され、最終日にはハッカソンが実施されました。参加者は、この研修を通して習得した知識やスキルを活かし、自身のビジネスプランを磨き上げ、ピッチを行いました。

この研修事業は、日本政府の支援を受け、中東・北アフリカ地域において持続可能でレジリエンスある食料システムと経済発展を促進することを目的としています。特に、地域経済において重要な役割を果たすイノベーションや中小零細企業の支援に焦点を当て、若手起業家やビジネスリーダー、イノベーターの能力強化を目指し、実施されました。

東京でのスタディツアー:日本の開発とイノベーション拠点を視察

日本でのワークショップは、東京でのスタディツアーおよび表敬訪問から始まりました。外務省を表敬訪問した際には、松本尚外務大臣政務官と面会し、同氏から「研修で得た知識を活かし、それぞれの国のイノベーション促進と地域経済の発展に貢献してほしい」との激励の言葉をいただきました。

また、参加者はスタートアップキャンパス且つビジネス交流拠点であるTokyo Innovation Baseや、起業家とイノベーションの拠点であるSHIBUYA QWSを訪問しました。参加者は、自身の国や地域での応用を想定し、日本におけるイノベーションの取り組みやビジネス・インキュベーション・モデルについて学びました。

私たちが訪れた起業支援拠点であるイノベーションハブは、日本では起業家への支援がどれほど拡充しているかということを目で見て知ることがはできました。このようなイノベーション促進への取り組みは、とても参考になりました。このような拠点や起業へのサポートの提供は、大変貴重であると思います。 Nathalie Fakher Eddine、公衆衛生専門家・研究者・起業家(レバノン) 

広島での体験型学習とスタディツアー:持続可能な農業を実践的に学ぶ

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広島では、現地視察や専門家による対話型セッション、グループワーク、メンター指導などが行われました。視察先のサタケ株式会社および広島中央エコパークでは、日本の農業技術や持続可能な農業の実践について学びました。さらに、ビジネスを成功させた中東出身の起業家2名と、日本で農業事業を展開するPitchfork Farmsの起業家による体験型学習セッションを通して、オーガニック農業、都市型農業、精密農業などのアグリテック・イノベーションと持続可能な農業ビジネスの実践について貴重な知見を得ました。

また参加者らは、持続可能なビジネスモデルの開発・実施、財政的持続可能性、気候変動への適応力強化、地域社会との連携、食料サプライチェーン、デジタルマーケティングとブランディング、資金調達、ピッチスキル、リーダーシップスキルなど、多岐にわたるテーマについて対話型セッションを通じて学びました。

バイオ炭は中東・北アフリカ地域ではまだ新しい概念のため、顧客にどのように伝えたらよいかという点に苦労していました。研修でのセッションを通じて、過度に専門的になりすぎずに適切な価値を提示することで、混乱を招くことなく適切な顧客にリーチする方法を学びました。また、サステナブル・ビジネスモデル・キャンバスというツールについて初めて知り、このツールを活用し始めました。私たちの提案の価値をより深く理解することに役立っています。 – Ahmed Hassanein、土木技師・アグリビジネス起業家(エジプト) 

事業構想の発表

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最終日に開催されたハッカソンでは、参加者が研修を通して得た知識やスキルを活かし、ビジネスモデルや事業構想を発表しました。個々人が主体的に取り組み、練り上げた事業のアイデアや計画は、食料・農業分野における雇用創出とレジリエンスの強化に貢献することを目指し、その革新性と実装化への道筋を示しました。

レバノンの食品安全と管理の専門家 Lynn El Berjawi さんは、レバノンの増加するコミュニティキッチン(市民食堂)ネットワークに食品安全プログラム、トレーニング、認証、コンサルティングを提供することを目的としたプロジェクトを紹介しました。この国は紛争、経済問題、そして増加する国内避難民などの課題に直面しています。これらの食堂は、困っている多くの人々にとって食料の供給源となっています。この取り組みを通じて、Lynnさんは食中毒を防ぎ、脆弱なコミュニティへの食事の質を向上させることを目指しています。 

国連ユニタールの研修事業は、私に起業についての多くの専門的知識やアイデア、持続可能なビジネスモデル、実施可能なイノベーション戦略について学ぶことができました。第1と第2フェーズで財務モデルや収益モデルなど、私にとっては馴染みのないものについて学びました。対面ワークショップに参加したことで、私たちの事業やスタートアップに直接活用できる、より実践的なツールについて知ることができました。 - Lynn El Berjawi 、食品安全と管理の専門家(レバノン) 

修了式では、国連ユニタール広島事務所の三上知佐所長が、20247月から開始したオンラインフェーズを経て研修を無事修了した参加者らを祝福しました。

皆様の熱意と革新的なアイデアは、事業計画の発展だけでなく、食料安全保障とレジリエンスある経済の実現というより大きな目標にも貢献します。この研修で得たスキルと知識が、皆様の国やコミュニティにおける課題解決のための革新的な解決策として花開き、すべての人にとってより豊かな未来への道を切り開くことを願っています。 三上知佐、国連ユニタール広島事務所長

国連ユニタールは、特に若者や女性、そして厳しい状況にあるコミュニティの起業家や中小零細企業の成長を支援しています。食料不安や失業率の上昇といった課題を抱える中東・北アフリカ地域に対し、国連ユニタールは今後も本研修事業のような社会的イノベーションを通じた持続可能な解決策の創出を促進していきます。

「持続可能なビジネス開発による食料安全保障と生計向上:エジプト・イラク・レバノン向け起業家研修」事業について

同研修事業は、国連ユニタールが日本政府の支援を受け、エジプト、イラク、レバノンにおける中小零細企業の起業家、幹部および社員を対象に実施しています。研修では、営利・非営利目的のビジネスアイデアを、地域の課題に即した、レジリエンスのある農業セクターの構築に貢献するビジネスモデルに発展させるために必要な知識、スキルおよび人的ネットワークを提供しました。同研修は英語で、20247月から20252月まで3つのフェーズに分かれて実施されました。

事業詳細は以下からご覧ください。

https://unitar.org/about/news-stories/news/call-applications-entrepreneuship-and-innovation

国連ユニタールについて

国連訓練調査研究所(ユニタール)は、1963年の設立以来、研修事業に特化した国連機関として、世界各国の人材開発を支えています。2023年には、54万人以上が受講。ジュネーブ本部のほか、ニューヨーク事務所、広島事務所、ボン事務所があり、様々なネットワークをもっています。2019年からは持続可能な繁栄局(Division for Prosperity)のもと、広島事務所と、ジュネーブ本部の財政・貿易ユニットの職員がともに、起業やリーダーシップ、貿易と金融、デジタル技術、軍縮などについてプログラムを展開しています。紛争後復興の過程にある国の人々への研修などには、原爆投下後から現在の平和都市に至る過程を一つの復興モデルとして講義に組み込むなど、平和で公正な社会の実現にも貢献しています。

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