今号のニュースレターでは、2024年9月から11月までの国連ユニタール持続可能な繁栄局の様々なプログラムや取り組みをご紹介しています。
主なニュース
日本政府拠出事業・しまなみコレクティブプログラム:各研修の進捗報告 (1)
太平洋地域の研修参加者 日本での早期警報システムのスタディツアーを修了
太平洋島嶼国11か国からの29名の研修参加者は、11月11日から22日の12日間で開催された災害リスクを軽減するための早期警報システムのツールや手法について学ぶ日本でのスタディツアーを終え、「早期警報システムを用いた気候危機への緊急対応:だれ一人取り残さないために」研修事業の第2フェーズを修了しました。同スタディツアーは、第1フェーズのオンライン研修に続き、実施されました。 同事業は、参加者が自然災害の早期警報システムを実施するスキルを身につけ太平洋の気候レジリエンスを強化することを目的としており、日本政府の支援のもと実施されています。
日本政府拠出事業・しまなみコレクティブプログラム:各研修の進捗報告 (2)
アジア太平洋のリーダーが海洋と人間の安全保障に関するスキルを向上
国連ユニタールは、日本政府拠出事業「自由で開かれたインド太平洋のリーダー育成研修:海洋と人間の安全保障」の第2フェーズとして、ジャカルタとフィジーでワークショップを実施しました。10日間のジャカルタ・ワークショップでは、アジア12か国からの約80名の参加者が自国の海洋と人間の安全保障の課題に対する解決策を発表しました。また、同ワークショップでは、都市型養殖施設の視察、環境安全保障、海洋安全保障、食料安全保障、ブルーエコノミーなどについての専門家による講義、メンター指導を実施しました。
フィジーでのワークショップには、太平洋島嶼国8か国から約70名が参加し、海洋と人間の安全保障に関する専門家講義、沿岸域コミュニティの視察などを通して、地域特有の課題解決に向けた計画を練り上げました。
2025年2月に予定されている研修の最終フェーズでは、第2フェーズ参加者から選抜された50名を対象に日本でのスタディツアーを実施します。
日本政府拠出事業・しまなみコレクティブプログラム:各研修の進捗報告 (3)
国連ユニタール 2024年「津波防災に関する女性のリーダーシップ研修」を開始
国連ユニタールは、日本政府拠出事業「2024年度津波防災に関する女性のリーダーシップ研修」に570名を超える参加者を迎えました。同事業は、災害リスク低減のための女性のリーダーシップを強化することを目的としています。2024年9月から11月には、第1フェーズのオンライン自主学習が実施されました。2025年3月に予定されている第2フェーズのフィジーでの対面式ワークショップでは、第1フェーズで優秀な成績を修めた20名の参加者が、それぞれの地域コミュニティに特化した効果的な災害リスク軽減計画を策定します。 また参加者は国連ユニタール研修受講者間の情報交換を促進するオンラインプラットフォーム「プロスペリティ・アンリミテッド(Prosperity Unlimited)」上で、継続して学びを深めます。
国連ユニタール AIマスタークラスを開催:人工知能の未来を形づくり、世界にインパクトをもたらす
2024年10月24日から25日にかけて、国連ユニタールはジュネーブで、18か国から政府関係者約20名を迎え、「人工知能(AI)戦略マスタークラス:AI革命を主導する戦略、イノベーション、グローバルなインパクト」 を開催しました。初日には、参加者はAIの現状と、各国が労働力を向上させ、責任あるAIの利用を通した変革を進める必要性について理解を深めました。2日目は、より平和で包括的かつ持続可能な世界の未来の形成に役立つ戦略的枠組みと協調性のある解決策に焦点が当てられました。
国連ユニタールとFAO、貿易と食料安全保障に関する研修をラテンアメリカと近東・北アフリカ地域全体に拡大
国連ユニタールと国連食糧農業機関(FAO)は、貿易と食料安全保障に関する研修事業を通じて、連携してグローバルな政策立案能力の強化に取り組んでいます。2024年5月6日から6月2日まで開催された第2回「貿易、食料安全保障、栄養」研修(スペイン語)では、ラテンアメリカ政府関係者63名が、同地域における農業貿易の課題に対処し、食料安全保障を改善するためのスキルを身につけました。
国連ユニタールとFAOはまた、オンライン研修「近東・北アフリカのための貿易と食料安全保障」(アラビア語)の第3回目を終了しました。アラビア語圏の政府機関、民間セクター、研究者、学生の70名がこの4週間のオンラインコースを受講しました。参加者は、エビデンスに基づく貿易政策の立案・実施方法、貿易協定の交渉方法などを学び、自国の経済成長と変革に貢献するための能力を強化しました。
国連ユニタール スーダンの社会経済の安定促進のための緊急支援プログラムを開始
国連ユニタールは、スーダン人受講生300名を迎え、「スーダン緊急支援:組織能力と生計向上を通じた社会経済の安定促進」研修事業(英語とアラビア語)を開始しました。2024年8月から2025年2月 の間実施している同研修は、参加者がデジタルリテラシー、起業家精神、気候変動に強いビジネス手法のスキルを身につけることを目的としています。また、食料不安と貧困に対処するためのアグリビジネスとイノベーションの分野における零細・中小企業の育成に焦点を当て、スーダンの社会経済復興に貢献します。また研修参加者は、国連ユニタールのデジタルプラットフォームを通して、世界各地の研修修了生のネットワークから生涯にわたって恩恵を受けることができます。
「持続可能な未来に向けた世代間の対話:未来サミットサイドイベント」
2024年9月19日、ニューヨークでの対面式とオンラインのハイブリッドで開催された「持続可能な未来に向けた世代間の対話:未来サミットサイドイベント 」に、世界のリーダーたちが集結しました。国連ユニタールが日本、エクアドル、モナコ政府との共催で実施した同イベントには、若者の活動家、政策立案者、専門家が登壇し、多国間外交の強化、インクルーシブな経済発展の促進、世代間・異文化間対話の活用について話し合うパネルディスカッションを行いました。登壇者らは、より包括的で持続可能な未来のために、デジタルテクノロジーを活用するための緊急かつ団結した行動を呼びかけました。
イベント配信:Intergenerational Dialogue for a Sustainable Future: Shaping Inclusive Society through Digital Power
「グローバルな課題を克服するためのAIを活用した持続可能な解決策」:イベント報告
2024年9月4日、国連ユニタールはAIを活用した持続可能な解決策に焦点を当てたワークショップとパネルディスカッションを開催しました。専門家を招いたワークショップでは、参加者40名が生計強化、気候変動対策、災害レジリエンス、教育、医療、農業、能力開発におけるAI技術の責任ある応用について学びました。参加者はまた、金融犯罪の防止と社会のレジリエンス強化におけるAIの役割についてのパネルセッションにも参加しました。
国連ユニタール、中国の学生向けに持続可能な未来のためのリーダーシップ養成プログラムを開催
2024年7月、気候変動、持続可能な開発、グローバル・ヘルス、ソーシャルイノベーションに焦点を当てた「若者のリーダーシップとグローバルな課題」セミナーがジュネーブで開催され、中国からの20名の学生が参加しました。このセミナーは、上海クリエイティブ・ツインシティーズおよびキュリダシティ(Curidaosity)との共同で、国連ユニタールが実施しました。対話型セッション、専門家による講義、パレ・デ・ナシオン(国際連合ヨーロッパ本部)の見学などが行われました。
また国連ユニタールは、ICエデュケーションとの協力により、「2024年次世代グローバルユースリーダー事業」を通じて、中国全土から20名の高校生を国連ユニタール本部(在ジュネーブ)で受け入れました。オンライン学習の後に2024年8月に行われた集中研修では、参加者の高校生が国連の2030アジェンダと持続可能な開発目標(SDGs)について理解を深め、国連会議でのディベートで外交や交渉のスキルを学び、SDGsに関連する地域課題への革新的な解決策を発表しました。
国連ユニタール、AidEx 2024展示会に参加:研修成果を紹介
2024年10月23日から24日にかけて、国連ユニタールはジュネーブで開催された人道援助・災害救援に関する展示会であるAidEx 2024に参加しました。ブース展示では、国連ユニタールが実施するアジア・太平洋島嶼国、中東、アフリカ諸国、ウクライナを対象とした、起業家精神、デジタルスキル、災害リスク軽減、リーダーシップ、インクルージョンに関する研修事業の成果を紹介しました。女性や若者、実務者が、持続可能で戦略的な経済成長を追求するために必要なスキルをどのように養成しているのかを特集した展示を行いました。
パートナーシップ
国連ユニタールとコロンビア金融情報分析局、コロンビアにおけるマネーローンダリング対策強化に向けた覚書を締結
国連ユニタールとコロンビア金融情報分析局 (UIAF)は、金融犯罪と闘うための新技術、サイバーセキュリティ、規制遵守、国際基準、リスク評価、金融情報システム、透明性、知識共有方法などについての能力開発、共同研究、ツール開発、イベント運営に関する領域で協力することに合意しました。
この連携の下、2024年11月18日にはディプロマ・コースを初開講しました。国連ユニタールは、在ボゴタ米国大使館の国際麻薬・法執行部門 、コロンビア金融情報分析局 (UIAF)、アンティオキア大学との共同で、コロンビアの2万人以上のコンプライアンス担当者に向けた金融犯罪と闘うためのeラーニング・プログラムを開発しました。
「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」のための広島大学との連携
国連ユニタールは、国立大学法人広島大学と「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」実施協力のための合意文書を締結しました。
同事業は、若手と中堅の実務者を対象に、平和構築や国際開発分野のキャリア形成を支援することを目的としており、広島大学が2024年度から3年間の事業委託を受け、国連ユニタールの協力のもと、事業の実施・運営を行います。
国連ユニタールがユナイテッド・コ・クリエーション・ラボと提携 意思決定プロセスに若者の声を取り入れる
国連ユニタールは、世代や文化を超えた倫理的な共創のためのエビデンスに基づく手法を開発・実施するため、ユナイテッド・コ・クリエーション・ラボ (UCCL:United Co-Creation Lab)と連携協定を締結しました。2024年9月20日に正式に発足したUCCLは、世代間のギャップを埋め、若者の声を意思決定に反映させることを目的としたイニシアチブです。国連ユニタールは、研修講師育成のための研修の開発と実施を主導し、大学や他のパートナーを含めた広範なネットワークへの拡大を見据えています。
国連ユニタール、グローバルユース奨学生プログラムでカレッジ・デイリーと連携協定を締結
2024年11月11日、国連ユニタールは、中華人民共和国生態環境部との共催で実施した国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)サイドイベントにおいて、カレッジ・デイリー社とパートナーシップ協定を締結しました。同社は、中国の国際教育を専門とするメディアサービス機関です。協定下で国連ユニタールは、グローバルな課題に取り組み、持続可能性を促進するスキルを身につけた若者を育成することを目的とした新しいグローバル・ユース奨学生プログラムにカレッジ・デイリー社と連携して取り組みます。
研修参加者の声
ウクライナ女性避難民のデジタル・リスキリング: キャリアと復興に力を与える
Iryna Markinaさん(左)とViktoria Podvoiskさん(右)は、「生計強化のためのポーランドのウクライナ人女性避難民向けデジタルリスキリング」研修事業の修了生です。 Markinaさんはポーランドに避難してから、営業部長としてリモートで働いてきました。自身のITスキルを磨く必要性を感じ、彼女は国連ユニタールの研修を受講し、データ分析や地理空間情報システムについて学びました。一方、ウクライナ戦争の勃発は、Podvoiska さんの人生に劇的な変化をもたらしました。 Podvoiskaさんは研修で地理空間情報システムに焦点を当て、キーウに戻った際にこれらのスキルを活かしてウクライナの復興を支えたいと考えています。
内部からシステムを変える:イラクの公衆衛生システムにおける女性のエンパワーメント
イラク保健省のコミュニティ開発部長のAlia Abbasさんは、国連ユニタールの「ジェンダー平等と女性のエンパワーメント(GEWE)」研修事業の修了生です。同研修を通して、効果的なチームマネジメントについて学びました。これらの学びを同僚に共有することを通してさらに事業のインパクトを高めたいと考えています。
核軍縮、交渉、新たなつながり:タイ外交官の広島での学び
タイの外交官として活躍するAiyarat Kosakulさんは、国連ユニタールの「核軍縮・不拡散(NDNP)広島研修プログラム」の修了生です。 この研修により、 Aiyarat Kosakulさんは、核軍縮についての基本的な理解に加え、この問題に対するより広い視野を持つことができました。
国連ユニタール研修の受講から6年経った今:トンガでの地区レベルの災害対策への取り組み
Lavinia Taumoepeau-Latuさん(右)とLuisa Taungaさん(左)は、国連ユニタールの「津波防災に関する女性のリーダーシップ研修」事業の修了生です。 Taumoepeau-Latuさんはトンガ初の安全・保護クラスター調整官として活躍しています。彼女がこの研修で学んだ災害リスク軽減の原則は、現在も彼女の災害管理業務の基盤となっています。 Taungaさんはトンガの国家災害リスク管理事務所の次官補として、災害への備えと対応に力を入れています。日本での研修では、日本の学生が災害への備えをどのように訓練しているかに刺激を受けたと言います。
日本語ストーリーは以下からご覧いただけます。
ファッションを通してアフガニスタン女性の生計向上を目指す
Fahimaさんは、「グレート・アイデア・スペース 2023:アフガニスタンの食料安全保障と雇用創出のための起業家精神とイノベーション」研修事業の修了生です。彼女は、マーケティングとブランディングについて学んだことを応用してビジネスを構築し、地域コミュニティの女性や若者のエンパワーメントに貢献したいと意気込んでいます。
核軍縮への若者の参画を取り戻す
Franco Escobarさんは、「ユース非核リーダー基金(YLF: Youth Leader Fund for a World without Nuclear Weapons )」 の修了生です。同事業は、日本政府の財政支援、国連ユニタールの実施支援の下、国連軍縮部(UNODA)により、実施されている研修プログラムです。 Escobarさんは、より多くの若者が核軍縮への取り組みに参加する必要があると考えています。彼は、若者による核軍縮活動のストーリーを記録した初のユース・アーカイブを作成中です。
インドネシアとトケラウで災害管理に取り組む
インドネシアで災害管理分析官として働くFega Ayu Pangestikaさん(右)と、トケラウの国家災害管理ユニットのマネージャーであるJewel Luti Leao Tuitamaさん(左)は、国連ユニタールの「津波防災に関する女性のリーダーシップ研修」事業の修了生です。 災害の心理的影響を研究している Fega Ayu Pangestikaさんは、研修での学びを活かして災害管理における男女共同参画の業務に取り組んでいます。一方、 Jewel Luti Leao Tuitamaさんは、トケラウのコミュニティにレジリエンスの文化を育み、災害への備えと対応においてリーダーシップを発揮し続けるために、研修を活用することを計画しています。
イラクの医療アクセス改善に向けて:遠隔医療サービスプラットフォームの開発
Basma Mohammed Jasimさんは、「グレート・アイデア・スペース 2023: イラク、ヨルダン、レバノンにおける保健安全保障と経済発展のための起業家精神とイノベーション (GIS JIL) 」研修事業の修了生です。この研修では、起業家精神、プロジェクトマネジメント、持続可能性についてのスキルを学びました。彼女はこれらの学びをイラクで医療サービスとコンサルテーションを提供する遠隔医療プラットフォームの開発に役立ようと考えています。
デジタルスキルと情報アクセスの向上を通したコミュニティ強化:ルワンダとウガンダから
Denis Opioさん(左)とEmmanuel Mutabaziさん(右)は、「アフリカの女性と若者のためのエッセンシャル・デジタルスキル開発:デジタル経済における雇用機会と生活向上の促進」研修の修了生です。ルワンダのユースリーダーである Emmanuel Mutabaziさんは、主にデジタル情報へのアクセスが限られているコミュニティを対象とした包括的な研修プログラムを提供することで、情報格差の解消に尽力しています。ウガンダのモニタリング・評価アシスタントの Denis Opioさんは、自分のコミュニティにITハブを作り、デジタルスキルとへのアクセス促進とより多くの機会創出に貢献するというビジョンを実現しました。
お知らせ
組織改革を発表:新名称「技術・金融・貿易ユニット」
国連ユニタール持続可能な繁栄局の公共財政・貿易ユニット(PFTPU)は、技術・金融・貿易ユニット(TFTPU: Technology, Finance and Trade Programme Unit)に正式に改称されました。当初、財政と債務管理が世界的に重要な優先課題であった時代に設立されたPFTPUは、これらの分野における国連加盟国の能力強化に重要な役割を果たしました。
その後、同ユニットの業務は大幅に多様化し、より広範な問題に取り組むようになりました。現在の重点事項と今後の方向性を見据え、新名称は、持続可能な金融と貿易開発のための技術の活用を一重点領域として取り組む姿勢を示しています。
持続可能な繁栄局は、技術・金融・貿易ユニットと広島事務所の2つのユニットで構成されています。
持続可能な繁栄局について
国連ユニタールの持続可能な繁栄局は、広島事務所とジュネーブ本部を拠点とし、包摂的かつ持続可能で豊かな世界の実現に資するため、世界基準の学習と知識やスキルを提供しています。拡大する格差の是正に向け、変化を生み出す主体である世界各国のチェンジメーカー、特に女性や若者に対する支援を行っています。