- 国連ユニタールは、10月1日~10日に「自由で開かれたインド太平洋のリーダー育成研修:海洋と人間の安全保障」(FOIP)研修事業のワークショップをフィジー・ナンディで開催しました。同ワークショップには、太平洋島嶼国8か国から約70名が参加しました。
- このワークショップでは、海洋と人間の安全保障に関する幅広いテーマを取り上げた専門家による講義と、ヴィセイセイ村およびヤコ村へのスタディツアーが行われました。
- 最終日である10月10日には、研修参加者がそれぞれの学びをグループで発表し、その後修了証が授与されました。
- 本研修の最終フェーズのワークショップは、成績優秀者50名を招いて、2025年2月に日本で開催される予定です。
2024年10月10日、広島-本日、フィジー・ナンディで開催された国連訓練調査研究所(ユニタール)の「自由で開かれたインド太平洋のリーダー育成研修:海洋と人間の安全保障」(FOIP)研修事業(日本政府拠出)の地域ワークショップは、最終日を迎えました。太平洋島嶼国8か国から参加した約70名の変化の担い手たちが、それぞれが習得したスキルと協働の精神を活かして、海洋と人間の安全保障問題に取り組むためのグループ別プレゼンテーションの発表をしました。
特に優れたプレゼンテーションを行ったグループに贈られる特別賞が設けられ、その中で太平洋地域の水質汚染に対する解決策を発表したグループが「最も革新的なプレゼンテーション賞」を受賞しました。
スタディツアーと専門家の講義を通した学び
この10日間のワークショップは、参加者が自分たちのコミュニティにおける海洋と人間の安全保障の課題やニーズに取り組むための知識とスキルを身につけることを目的として行われました。参加者は、スタディツアー、グループワーク、専門家による講義やメンター指導での学びを活かし、グループ別プレゼンテーションと自国やコミュニティに戻って実施するための個別プロジェクトの計画を策定しました。
10月3日と5日にそれぞれ行われたヴィセイセイ村とヤコ村へのスタディツアーは、参加者の環境に対する関心や懸念を喚起しました。ヴィセイセイ村では、特に海面上昇のリスクといった気候変動による危機に直面しながらも、自然資源を維持しつつ、持続可能な経済および開発に向けた村の協力的な取り組みを学びました。またヤコ村では、マングローブ植林活動を体験し、気候変動の緩和と適応におけるマングローブの役割について理解を深めました。参加者は、林業局の職員の指導のもと、沿岸域コミュニティのレジリエンスの強化を目的に、合計100本のマングローブの苗を植えました。
専門家の講義では、ブルーエコノミーや環境、海洋、食料安全保障といった経済と安全保障問題について、参加者の視野を広げました。ジェンダー平等の促進やリーダーシップスキルの向上に焦点を置いた能力開発のセッションも行いました。専門家による講義と指導は、参加者がそれぞれの地域社会における具体的な課題に取り組むための個別プロジェクト計画や、憂慮すべき海洋や人間の安全保障の課題に対する政策提言を打ち出すための分野別グループワークの策定に大いに役立つものでした。
「このワークショップを終えるにあたり、私自身の役割として、研修で得たものを活かして輸出業者や民間部門の能力開発にも力を注いでいくつもりです。具体的には、帰国後、観光業や私が関わっている他のセクターについても能力基盤を構築していきたいと考えています。」-Freda Javelyn Tekulus氏(ソロモン諸島からの参加者)
「多くの参加者の志気と向上心に感銘を受けました。彼ら彼女らが変化を起こそうと取り組んでいることは明らかです。この活動に参加する人が多ければ多いほど、より良い結果が得られると思います。なぜなら、私たちのコミュニティのすべての人々と共有しなければならないメッセージがあるからです。そのメッセージとは—太平洋島嶼国民は、自分たちの食料源を大事にする必要があります。なぜなら私たちの存在がそれにかかっているからです。」-ブルー・プロスペリティ・フィジー戦略アドバイザー、Joeli Veitakayi氏(食料安全保障、環境安全保障セッション担当講師)
今後に向けて
閉会式は、フィジーでの地域ワークショップ、そして「自由で開かれたインド太平洋のリーダー育成研修:海洋と人間の安全保障」研修事業第2フェーズを締めくくる集大成となりました。式典にご出席された在フィジー日本国大使館の髙田勇深参事官から、祝辞をいただき、参加者一人ひとりに研修修了証が授与されました。
国連ユニタール広島事務の三上知佐所長は、ワークショップに参加された方々の熱心な取り組みに感謝の意を表しました。また、太平洋地域がより安全で包摂的な未来となるよう、今後も地域の連携を強化していくことを呼びかけました。
また、参加者を代表して、ソロモン諸島からの参加者、Wilfred Luiramo氏、キリバス共和国からのTarota Bwebwetara氏より、スピーチがありました。
「最も重要なことのひとつは、私たちが経験したことをここで終わらせないことです。第3フェーズに進む人もいるでしょうが、より重要なのは私たち全員が自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の価値原則を受け継ぎ、それを持ち帰り、自分たちのコミュニティにメッセージを広めることです。」-Wilfred Luiramo氏、ソロモン諸島
「この研修は啓発的で、海洋と人間の安全保障についてさらに理解を深めることができました。太平洋諸国間の相互のつながりは、レジリエンスと持続可能な開発によってコミュニティを強化するでしょう。私たちの海を守り、コミュニティの安全な生活を確保するための洞察は、さらに深まりました。」-Tarota Bwebwetara氏、キリバス共和国
この対面式の地域ワークショップを通じて、参加者はリーダーシップスキルを向上させ、海洋と人間の安全保障に関する理解を深めました。また、地域の平和、繁栄、安全の実現に向けて、地域のレジリエンスを高めるためのネットワーク強化にも取り組みました。本プログラムの最終フェーズでは、2025年2月に第2フェーズから選抜された約50名を迎え、日本でのスタディツアーを実施する予定です。
弊機関は、本ワークショップおよびプログラムに対する日本政府およびフィジー政府の支援に深く感謝するとともに、参加者のために時間と専門知識を惜しみなく提供してくださった講師の皆様に心より感謝申し上げます。
「自由で開かれたインド太平洋のリーダー育成研修:海洋と人間の安全保障」研修事業について
「自由で開かれたインド太平洋のリーダー育成研修:海洋と人間の安全保障」(FOIP)研修事業は、参加者に気候、社会、経済、食料、海洋に関わる安全保障の強化のために必要なスキルや知識を提供し、インド太平洋地域全体での連携メカニズムの構築を支援することを目的としています。同事業は日本政府の支援を受け、国連ユニタールが実施しています。
- 第1フェーズは、2024年8月末に、400名を超える参加者が2か月のオンライン研修を修了しました。
- 第2フェーズでは、2024年9月にインドネシアのジャカルタでアジア地域の参加者向けに、2024年10月にフィジーのナンディで太平洋地域の参加者向けに、合計約150名を対象に地域ワークショップを実施しました。
- 第3フェーズは、2025年初頭に日本での対面型ワークショップが予定されています。第2フェーズからの成績優秀者約50名が対象です
FOIP研修事業は、日本が支援する「しまなみコレクティブ」プログラムの一環として実施されており、このプログラムでは、特に若者や女性のエンパワーメントに焦点を当て、災害に対するレジリエンスと海洋と人間の安全保障を強化することを目的とした複数の研修事業を実施しています。
お問い合わせ
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Parkpoom KUANVINIT ✉ parkpoom.kuanvinit@unitar.org
国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所
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ニッセイ平和公園ビル8階
電話:082-236-3808
国連ユニタールについて
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、1963年の設立以来、研修事業に特化した国連機関として、世界各国の人材開発を支えています。2023年には、54万人以上が受講。ジュネーブ本部のほか、ニューヨーク事務所、広島事務所、ボン事務所があり、様々なネットワークをもっています。2019年からは持続可能な繁栄局(Division for Prosperity)のもと、広島事務所と、ジュネーブ本部の財政・貿易ユニットの職員がともに、起業やリーダーシップ、貿易と金融、デジタル技術、軍縮などについてプログラムを展開しています。紛争後復興の過程にある国の人々への研修などには、原爆投下後から現在の平和都市に至る過程を一つの復興モデルとして講義に組み込むなど、平和で公正な社会の実現にも貢献しています。
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