• 国連ユニタールは、スーダン人受講生300名を迎え、「スーダン緊急支援:組織能力と生計向上を通じた社会経済の安定促進」研修事業を開始しました。この事業は、受講生がデジタル技術や起業家精神を身につけることを目的としています。
  • この事業は、食料不安と貧困に対処するため、農業ビジネスとイノベーション分野における零細・中小企業の設立に焦点を当て、デジタル技術と起業家精神、気候変動に強いビジネス手法を習得することを目的としています。
  • この研修事業は、日本政府の支援を受けて実施されています。
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20241021日、ジュネーブ、スイス - 国連訓練調査研究所(ユニタール)は、「スーダン緊急支援:組織能力と生計向上を通じた社会経済の安定促進」研修事業を実施しています。この事業は、スーダンで進行中の人道的・経済的危機に対処するため、避難民がマーケティングのスキルを習得し、経済復興をもたらす起業家精神を促進することを目的としています。

この事業は、日本政府の支援を受けて、特に国内避難民や近隣諸国のスーダン避難民など熱意あるスーダン国民300名を対象として、20248月から20252月までの期間で実施されています。

スーダン:失われた生計

スーダンは長年、深刻な経済混乱に直面しており、20234月に始まった人道危機によってこの状況はさらに悪化しました。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、学歴に関わらず、500万人以上のスーダン人が職と生計を失っています。スーダンのIbrahim al-Badawi元財務相は、2023年のスーダンの国内総生産(GDP)が20%減少し、世帯収入は40%以上減少すると予測しています。

スーダンの職業訓練部門は、避難民のニーズを満たすのに困難を極めています。国際協力機構(JICA)の報告によると、全国的な失業率は19%近くに達し、若者の失業率は34%、都市部の若い女性では70%を超えているとされています。

これらの数字は、特に女性や若者といった脆弱なグループに対し、現代の労働市場が求めるニーズに合った職業訓練が緊急に必要であることを示しています。

スーダン緊急支援事業について

同研修事業はアラビア語と英語の両方で提供され、参加者がデジタルリテラシー、起業家精神、気候変動に強いビジネス手法のスキルを身につけることを目的とし、食料不安と貧困に対処するためのアグリビジネスとイノベーションの分野における零細・中小企業の育成に焦点を当てています。

研修プログラムは3段階に分けて実施されます。

  • 1フェーズ: 豊かな未来のためのレジリエントな成長(20249月〜20252月)- 包括的なオンライン研修を通して、参加者は起業家精神、イノベーション、デジタルスキル、広島の戦後復興からの教訓などを学びます。
  • 2フェーズ:レジリエント・スクワッド(20253月)-  1週間のオンライン・ブートキャンプと、2日間のバーチャル・ハッカソンを開催予定です。成績上位20名が第3フェーズに進みます。
  • 3フェーズ:平和と繁栄のためのレジリエンスある未来(20253月)- バーチャル会議を開催し、参加者はプロジェクト案を発表、評価を受けます。

この事業は、失業、食料不安、社会的不平等といった差し迫った課題に取り組む持続可能なビジネスアイデアを育成することで、参加者に「より良い復興(Build Back Better )」への行動を喚起することを目的としています。

女性と若者のエンパワーメント

国連ユニタールは包摂性、特に女性の参加を強く奨励しています。女性のエンパワーメントはコミュニティの再建と強化に不可欠です。不安定なインターネット接続状況にもかかわらず、女性参加者はすでにウェビナーにおいて議論をリードし、プログラムの成功に貢献するなど、リーダーシップを発揮しています。

課題と機会

この事業に対して高い関心が募っているものの、紛争の影響を受けた地域からの参加は依然として限られています。暴力や不安定な状況が続いているため、特に被害の大きい地域では、研修に参加できない人もいるが現状です。このような技術的・物流的な障壁といった課題に対処すべく、同事業では低帯域幅の配信サービスや対面式のコーチングを活用し、参加者がよりアクセスしやすい環境を整えています。

今後に向けて

参加者には、同研修専用のデジタルプラットフォーム上で継続的な指導や学習、ネットワーキングの機会が提供されており、一生涯を通して国連ユニタールの世界各地の修了生ネットワークから恩恵を受けることができます。この事業は、スーダンの社会経済復興に貢献するだけではなく、技能開発と起業家精神の育成を通じて、この地域の平和と繁栄を促進することを目指しています。

この事業領域の専門家の一人であるMohamed Tagelsir教授は、スーダンの中小企業開発の第一人者であり、JICA、国連開発計画(UNDP)、セーブ・ザ・チルドレンの能力開発サービスを主導した経験があります。彼は、この事業がデジタルリテラシーと起業家精神に重点を置いていることを高く評価しています。また、女性参加者がウェビナーの開催やディスカッションを積極的に主導していることに触れ、女性参加者の多大な貢献を強調しました。

Tagelsir教授は「参加者主導のウェビナーによって、オンライン・エチケット、時間管理、デジタル・コミュニケーションなどのスキルが大幅に向上した」と述べ、「インターネットへのアクセスに課題があるにもかかわらず、参加者のレベルに大変感心すると同時に、事業が長期的にインパクトをもたらすだろう」と前向きな見通しを語りました。

参考資料

  • United Nations High Commissioner for Refugees (UNHCR), Report on Sudan Crisis, 2023.
  • Ibrahim al-Badawi, Economic Forecast for Sudan, 2023.
  • Japan International Cooperation Agency (JICA), Sudan Economic Report, 2023.
  • UNITAR Annual Report, 2021.

国連ユニタールについて

国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2023 年には、世界中 で 54 万人以上が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジ ュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っ ています。詳しくはウェブサイトから(https://unitar.org/ja/hiroshima)。

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