2022年も残りわずかになりました。本年も国連ユニタール持続可能な繁栄局は、「新たな日常」のなかで、実務的なスキルや考え方を得られる学びの機会を必要とする多くの方にお届けしようとまい進して参りました。
来年2023年は、ユニタールにとって特別な年となります。ユニタールが創設されてから60周年、ユニタール広島事務所が設立してから20周年を迎えます。研修の提供や組織強化に一層力を入れ、SDGs達成に貢献して参ります。
※リンク先が英文となっている場合があります。ご了承ください。
東アフリカで女性向け起業・金融リテラシー研修が開始
2022年11月22日、東アフリカ地域政府間開発機構事務局は国際連合開発計画(UNDP)・ユニタールと共同で、女性を対象とした起業・金融リテラシーオンライン研修を東アフリカで開始しました。25名の女性起業家がパイロット事業に参加し、5週間のオンライン研修と1週間の地域別対面ワークショップに取り組んでいます。研修を通して、参加者の起業及び金融に関する能力を強化し、参加者が自身でビジネスの機会を見出し、地域課題の解決に貢献することを目指しています。
なお同研修は、2021年にユニタールが実施した、アフリカにおけるジェンダー平等と女性の地位向上プロジェクトにおける、研修ニーズ調査の結果に基づいて作成されました。
ユニタール事務局長が訪日
2022年9月、ユニタールの事務局長であり、国連事務次長補であるNikhil Seth氏が日本を訪問し、支援者との更なる関係構築に努めました。Seth氏は、日本国のユニタールへの継続的な支援に感謝の意を表し、紛争影響地域や発展途上国における能力開発において、日本政府とより一層力を合わせて取り組んでいきたいと熱意をあらわにしました。
持続可能な繁栄局 、有識者会議を対面で初めて開催
2022年10月4日、持続可能な繁栄局の有識者会議がジェノバ(スイス)で開催され、繁栄局の管轄領域及びその対応方針が、時代に合った適切なものであるか議論されました。有識者会議は今回が対面で初めての開催でしたが、顔を合わせての議論はより実りのあるものとなりました。同会議では、ボーイング社のMichael For氏が議長を務め、今回からアフリカ女性教育者会議のSarah Anyang Agbor氏もメンバーに加わりました。有識者会議の構成員はそれぞれの専門性や識見を活かして、ユニタールが提供する、途上国のリーダーやコミュニティの人々を対象とした研修の質を高めることに貢献しています。
有識者会議を受け、持続可能な繁栄局は、研修がより効果的なものになるよう改善し、インタラクティブな研修を可能にする技術を追求しています。そして組織全体として、イノベーションの推進、支援者や地域住民・コミュニティとのパートナーシップ構築、途上国におけるリーダーのスキル開発を通して、SDGsの達成に引き続き強固に取り組んでいきます。
グリーン・レガシー・ヒロシマ:広島の被爆樹木研究
2022年11月、米国の植物学者と植物園の専門家が、広島(日本)にてグリーン・レガシー・ヒロシマを訪れ、原爆を生き残った樹木、”被爆樹木”の調査を実施しました。具体的には、グリーン・レガシー・ヒロシマの庭師長へヒアリングを行い、被爆樹木が原爆被害から生き残った植物学的な要因を調査し、被爆樹木の成長条件について学ぶなど、樹木についての理解を深めました。グリーン・レガシー・ヒロシマとユニタールは、被爆樹木を守りながら、種や苗木を世界中へ送り届け、世界の平和と生物多様性を推進するために共に活動しています。
ユースディスカッション開催:核のない世界を目指して
2022年9月21日、ユニタール持続可能な繁栄局は世界平和デーを記念し、公開ユースディスカッションをオンラインで開催しました。ディスカッションには青少年活動家が参加し、核兵器撤廃の難しさと可能性について意見を交わし、核のない世界へ向けた革新的なアイディアについて意見を出し合いました。
また、ユニタールは核兵器撤廃と核拡散防止研修事業の実施にあたって、常に最先端の方法を模索しています。例えば、広島の民間企業が開発したAR(拡張現実)機能を採用し、原爆被害者の貴重な話をリアルな体験として参加者に提供しています。参加者はそのような技術を通して、戦前から今日に至るまでの広島の豊かな歴史について知ることができ、研修から多くのことを学んでいます。
なお、ユニタール広島事務所が主催する、核兵器撤廃と核拡散防止研修事業は2021年と2022年にオンラインで実施されました。2023年2月には広島(日本)で対面での開催を予定しています。政府関係者等みなさまの参加を受付中ですので、興味のある方はお問合せください。
参加者の声
アフリカにおける医療産業の変革を目指して (マリ)
マリ出身の Aissata Konéさんは薬学博士課程に在籍しており、2021年のユニタール新型コロナ危機に対する対応:生計向上と就職のためのデジタル技術を活用したサヘル地域の能力向上研修の修了生です。Aissataさんは研修で学んだ新しいデジタル技術を活かし、マリの人々がより簡単に薬を手に入れられるアプリの開発に取り組んでいます。
パンデミック下で起業家誕生 (ケニア)
ケニア出身の起業家、Angeline Mueni Mutukuさんは新型コロナのパンデミックがピークであった時期に、はちみつとピショリ米(ケニアのローカル米)のオンライン販売を実店舗での販売に切り替え、ビジネスを拡大しました。Angelineさんは、アフリカ女性のための起業家・イノベーションとリーダーシップ研修(オンライン実施・自己学習型)の修了生で、研修での学びをもとに、ビジネスを展開しています。コロナ禍において実店舗販売に切り替えることは勇気のいる決断でしたが、同研修のおかげで自信を持って展開できたと言います。Angelineさんの夢はいつか自分の農場を開くことです。
デジタル技術を活かしたこれからのヘルスケア (カメルーン)
カメルーン出身のSara Stella Mafopa Tatamさんは医療専門家の仲間と共に、病院に来ることが難しい人を対象としたオンラインプラットフォームを立ち上げています。プラットフォームは、人々のヘルスケアへの理解を深め、健康に関する教育を推進することを目的としています。Saraさんは精神科医であり、自身も受講したデジタルヘルスと社会起業家研修がカメルーンで広く開催され、医療専門家が公共医療サービスの改善のために自ら新しい技術を活用するようになって欲しいと話しています。
ユニタールは、UNESCO・SALTOと協働でボランティアを募り、人工知能の時代における人権保障研修(オンライン)を複数言語に翻訳しました。事業マネジメントメンバーのSaloni Lakhia氏、Eléonore Louis氏、そしてKadri Maripuu氏は、ボランティアの存在はとても大きく、彼らがいることで多言語対応が可能になり、社会がよりインクルーシブになることに改めて気づいたと話しています。
インドネシアの外交官であるAndaru Dhaniswara氏は、核兵器撤廃を難しい問題としながらも、平和の実現に向けて日々取り組んでいます。同氏はユニタール広島事務所主催の核兵器撤廃と核拡散防止研修に参加し、研修コンテンツの一つである疑似交渉を通して、核兵器撤廃交渉の枠組みについて理解を深め、世界のそれぞれの国が抱える事情について新たな気づきを得たと言います。
ジェンダー平等を目指して(レバノン)
Joumana El Halabi氏は、教育省での仕事を通してレバノンの教育者を指導し、指導要領や教科書に記載のある、ジェンダー的な固定概念の撤廃に取り組みました。当初Halabi氏はアクションプランの作成に苦労していましたが、ヨルダンとレバノンにおけるジェンダーエンパワメント事業への参加を通して作成手法を学び、自身で作成できるようになったと話しています。また、オンライン研修は参加者がそれぞれの都合に合わせて受講でき、非常に取り組みやすく感じていると言います。
広く使える災害リスク軽減の考え方 (カメルーン、サモア)
Marie-Claire TohnainさんとMaselina lutaさんは、津波による災害リスク軽減における女性のリーダーシップ研修事業に参加しました。Marie-Claireさんはカメルーン出身の医学生で、災害におけるリスク軽減の考え方は、薬や災害救助、そして紛争防止の場面でも非常に役立つと考えています。Maselinaさんは、聴覚障がいを持ちながらサモアの聴覚障がい者団体を設立し、プロジェクトオフィサーとして活動しています。彼女は同研修から災害管理の重要性について学んだことはもちろん、研修参加にあたり、ユニタールと参加フェローに対してアクセシブルな研修の重要性について提言しました。
Mohamadou BelloさんとWendy Moranさんはユニタールが複数言語で研修を実施するために不可欠な存在です。Mohamadouさんは2021年のユニタール新型コロナ危機に対する対応:生計向上と就職のためのデジタル技術を活用したサヘル地域の能力向上研修のフランス語版製作を担当しました。また、Wendyさんは最近始動した、ユニタールとFAOが共同で実施する、ラテンアメリカ及びカリブ地域向けの貿易・食糧安全保障と栄養に関するスペイン語研修の制作に携わりました。 多言語対応により、より多くの人々へ研修を届けることができます。
グテーレス国連事務総長と青少年活動家が議論:日本の学生に世界の言語で学ぶ機会を提供 (日本)
2022年8月6日、ユニタール繫栄部門は広島(日本)にて ”パワーオブユース from 広島”を日本語と英語の同時通訳で開催しました。これは、ユニタール青少年大使であるYamashima Shizukuさん、Harada Shioriさん、Nakamura Mikieさん含め、広島の中高生フェロー達が言語を超えて学びを深める機会となりました。参加学生達は、青少年活動家とグテーレス国連事務総長の核兵器撤廃に関する議論を目の前で体感し、多くのことを学びました。
起業家精神がメンタルヘルス分野にもたらしたもの (イラク)
Hana Aliさんはメンタルヘルスに関するオンラインプラットフォームを英語とアラビア語で運営しています。プラットフォームには5人のセラピストが在籍しており、イラクの人々がセラピーにアクセスしやすくなることを目指して活動しています。Hanaさんは起業家としてのバックグラウンドはありませんが、ユニタール新型コロナ危機に対する対応:イラクの若者の食料不安と失業に対処するための社会起業家の育成研修を修了し、起業家に必要な基礎的な考え方とマーケティング戦略を学びました。Hanaさんは、自分に足りなかった事業運営に必要な情報を研修から得られたと話しています。
ゴール2:飢餓をゼロに 達成への一歩 (エジプト)
エジプトで多国籍企業の製品開発マネージャーをしているSalma Khalifaさんは、人々のニーズを汲み、製品をコンセプト化し、市場に売り出すことが仕事です。また、Salmaさんは博士課程に在籍しており、中東と北アフリカ地域における食料供給格差を解消する方法について研究しています。 Salmaさんは、ユニタールとFAOが共同で提供している、貿易と食糧安全についてのオンラインコース(アラビア語版)が彼女の仕事と、博士課程での研究に非常に役立っていると感じています。
お知らせ
持続可能な繁栄局長、アフリカSME選手権大会へ出席
2022年10月6日~7日、アフリカSME(システムマネジメント技術者)選手権大会 がアフリカ経済開発アラブ銀行(BADEA)とAfricSearchの共催でウガンダのエンテベで開かれ、持続可能な繁栄局長の隈本美穂子氏が出席しました。大会には時代を牽引するアフリカの起業家や、零細・中小企業に加え、専門家や投資家たちが集まり、アフリカ経済の成長を世界にアピールしました。
「アフリカのビジネスリーダー達の情熱と革新性に満ちた活気を肌で感じるのをとても楽しみにしていました。タンザニア、ザンビア、ジンバブエにおける、気候変動に負けない生計開発について 、BADEAと共同で新しいイニシアチブをとることで、アフリカの国々のより一層の発展に貢献したいと考えています」と隈本氏は話し、また本大会で東アフリカ開発銀行(EADB)、RUFORUM、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の代表と交流を深めました。
2022年10月22日、国連ユニタール協会は“開発と平和のためのスポーツオンラインセミナー”を開催しました。パネリストとして、国連ユニタール親善大使の為末大氏、大阪大学の岡田千あき教授、アンジュヴィオレ広島の渡谷祥乃選手、元アフガニスタン女子代表サッカー選手であり、ユニタール修了生のハジャル・アブルファザル氏が登壇し、平等で平和な世界の実現のためにスポーツが貢献できる可能性とその難しさについて意見を交わしました。パネリストはそれぞれ異なったバックグラウンドを持っていましたが、スポーツを通して青少年や女性を勇気づけ、競技内外問わず平和構築に貢献しているという点で共通しており、白熱した議論を展開しました。