- フィリピン出身のKiana Dominique Cezarさんは、グローバルに展開するエネルギー会社で働くサプライチェーン・データアナリストです。
- 彼女は、国連ユニタールが2025年度に実施した研修プログラム「SDGsとデジタル未来:AIとデジタル・ストーリーテリングで切り拓く変革」に参加しました。
- 本プログラムを通じて、彼女はAIやデジタルツールを活用したストーリーテリングの手法を学び、テクノロジーを歴史や平和構築と結び付ける方法を習得しました。
- Kianaさんは、フィリピンの漁業による生計をテーマとしたデジタルストーリーを制作し、プログラム最終成果発表で表彰を受けました。
2026年1月28日、広島-Kiana Dominique Cezarさんは、フィリピン出身のサプライチェーン・データアナリストとして、グローバルに展開するエネルギーおよび石油化学企業に勤務しています。また、これまでヨーロッパとアジアをつなぐ若者向けシンクタンクで、ボランティア活動にも従事しました。2025年には、国連訓練調査研究所(ユニタール)が実施するプログラム「SDGsとデジタル未来:AIとデジタル・ストーリーテリングで切り拓く変革」研修に参加し、AIやデジタル技術を活用して、持続可能な開発、歴史、祖師て平和構築を結び付ける物語の伝え方について探求しました。
エネルギー分野から持続可能な開発へ
Kianaさんは、仕事の中で日常的にデジタルシステムを活用しており、彼女の勤務先でも多くの民間企業と同様に、業務効率の向上を目的としたAIシステムの導入を進めています。デジタルツールを試したり、オンラインコンテンツを制作したりすることが好きな一方で、AIやストーリーテリングについては、これまで正式な研修や実務上の経験はありませんでした。そうした中で、AI、デジタル・ストーリーテリング、そして持続可能な開発目標(SDGs)を組み合わせた国連ユニタールのプログラムを知り、大学時代に専攻していた持続可能な開発への関心と、自身のデジタル技術への興味を結び付ける絶好の機会だと感じました。
「これは、私がもっと積極的に関わっていきたいと思っていたSDGsと直接つながる内容でした。自分のさまざまな関心を一つの研修プログラムとして結び付けることができる、まさに理想的な経験だと思いました。」– Kiana Dominique Cezar、国連ユニタール研修参加者(フィリピン)
広島におけるデジタル技術と平和構築の連携
国連ユニタールの研修プログラム「SDGsとデジタル未来:AIとデジタル・ストーリーテリングで切り拓く変革」は、アジアおよび広島から集まった若者たちが、AIやデジタルツールを活用してSDGsの推進につながる物語を伝える方法を学ぶことを目的として実施されました。原爆投下から80年という節目を記念して企画された本プログラムは、広島市および広島県の支援のもと、2025年6月から11月にかけて開催されました。オンライン学習と広島でのスタディツアーを組み合わせ、参加者はデジタル・ストーリー作品を制作し、11月に開催された公開ワークショップで成果を発表しました。
Kianaさんにとって、広島への訪問は、歴史が今も色濃く息づく場所で学ぶことのできる貴重な機会でした。Kianaさんと他の参加者たちは、平和記念資料館の見学、平和公園のツアー、さらに株式会社スピングルカンパニーをはじめとする日本企業との交流を通じて、広島の歴史を学ぶとともに、各企業の歩みがどのように広島の物語と結び付いているのかを知りました。
「広島に実際に足を運んだことは、大きな気づきを与えてくれる経験でした。平和構築があらゆる場面に深く根付いていること、そしてこの場所と人々が持つ強さと復興力を実感しました。」
また、バーチャルリアリティ(VR)の体験や、日本マイクロソフト社による教育版マインクラフトを活用したセッションを通じて、Kianaさんは、デジタルツールを責任ある形で用いながら、歴史を伝え、記憶を継承し、平和や持続可能な開発をめぐる対話を促進できることを学びました。
フィリピンの漁業従事者の物語を伝える
デジタル・ストーリーテリングのプロジェクトとして、Kianaさんは、フィリピンにおける漁業による生計をテーマとした、インタラクティブなデジタルストーリーを制作しました。視覚的な素材と地理情報システム(GIS)によるマッピングを組み合わせ、研修で学んだAIツールを活用しています。当初、彼女はフィリピン出身者として身近に感じられ、自然なテーマだと思えた農業に焦点を当てるつもりでいました。しかし、他の参加者のアイデアに触れる中で、より個人的な物語を伝えたいと考えるようになりました。「自分の心により近く、共有できるものは何だろうか」と自問しました。そして、その問いの答えは祖父の存在にあると気づきました。
Kianaさんの祖父は漁師でした。彼女が海辺の暮らしや漁業従事者の厳しい生活を実際に知る前に祖父は亡くなりましたが、母親から、収入がわずかでどんなに困難な状況でも、毎日早朝に船を出していたという話を聞いて育ちました。本プロジェクトを通じて、彼女はとりわけ若い世代の間では注目されてこなかった漁業従事者たちの物語に目を向け、広く共有したいと考えました。
「もっとそうした物語に自分自身が触れ、それを他の人たちと共有してみてはどうだろう、と気づきました。特に今の若い世代にとって、そうした物語に触れる機会はほとんどありません。たとえそれが、私たちの経済にとって非常に重要な要素であったとしてもです。」
Kianaさんは本プロジェクトを通じて、汚染や水産資源の減少といった環境問題に加え、漁業による生計を脅かす経済構造、政府支援の不足、さらには領土紛争といった課題にも光を当てました。また、水揚げ後の加工や流通などを担い、漁業に不可欠な役割を果たしている漁村の女性たちの物語を取り上げることで、漁業は男性だけの仕事であるという固定観念に挑戦しました。
本研修のメンター指導は、Kianaさんが自身のプロジェクトの方向性を形作る上で重要な役割を果たしました。毎週、メンターとアイデアや進捗を共有し、最終的なストーリーの構成を決定するための有益なフィードバックを受けました。こうした取り組みの成果として、Kianaさんは自ら誇りに思える作品を完成させ、11月に行われた最終成果発表において評価され、見事に表彰を受けました。
地域社会に変化をもたらす未来を描く
広島での経験は、Kianaさんが自身の将来のキャリアについて考えるうえで、大きな影響を与えました。彼女は今後、国際開発や再生可能エネルギー分野など、大学で専攻した開発経済学や、地域社会に前向きな影響を生み出したいという自身の思いにより近い分野での機会を検討していく予定です。
またKianaさんは、幅広い年齢層の若者を結び付ける学びの場を提供してくれた広島県および広島市、さらに国連ユニタールと国連ユニタール協会に深い感謝の意を表しています。こうした環境を通じて、「若者の考え方の違いや、若者同士がどのように関わり合うのかを知ることができた」と語っています。
「この研修は、世界各地から集まった参加者にとって、AIを活用したデジタル・ストーリーテリングについて学び、それを歴史や平和構築と結び付けて考えることのできる、非常に貴重な機会でした。人生に対する多様な視点を私たちに示してくれる素晴らしいプログラムだったと思います。」
英文記事はこちらからご覧いただけます。
国連ユニタールについて
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2024年には、世界中で約55万人が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。詳しくは国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所ウェブサイトをご覧ください。