• 広島の大学でバイオ情報学を専攻する増田理裕さんは、2025年度に国連ユニタールの実施した「SDGsとデジタル未来」研修に参加しました。
  • 研修の最終課題では、AIXR技術を活用して、原爆投下直後と現在を対比するアプリ「Hiroshima XR」を制作しました。
  • 理裕さんにとって、国連ユニタールの研修は、新技術の社会実装の在り方や可能性を知る、貴重な経験となりました
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2025年12月30日、広島 – 広島の大学生、増田理裕さんは、バイオ情報学を専攻し、医療と情報技術の接点に関心を持って研究に取り組んでいます。長崎県出身の被爆3世として育った理裕さんは、2025年度に国連訓練調査研究所(ユニタール)が実施した「SDGsとデジタル未来」研修に参加し、デジタル技術を通じた新たな平和の伝え方を模索しました。

「技術×社会課題」への関心の広がり

高校時代、理裕さんは持続可能な開発目標(SDGs)をテーマにした学校での探究学習の中で、機械学習を用いてマイクロプラスチックの材質を判別する研究に取り組みました。この経験を通じて、データやAI技術を社会課題の解決に活かすことにやりがいを感じるようになったといいます。

高校3年生のときには、長崎で開催された国際会議関連イベントに参加し、国内外の有識者と対話する機会を得たことが、「世界に目を向ける」大きな転機となりました。

大学進学を機に広島へ移り住んだ理裕さんは、大学の案内メールを通して国連ユニタール広島事務所の実施するこの研修を知りました。AIを活用した取り組みである点に強く関心を惹かれ、参加を決めたと振り返ります。

デジタル技術の社会実装を学ぶ

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理裕さんが参加した研修SDGsとデジタル未来:AIとデジタル・ストーリーテリングで切り拓く変革」は、アジアと日本の若者を対象に、人工知能(AI)やデジタル技術を活用した社会課題の発信力を高めることを目的とした研修プログラムです。同事業は、広島県と広島市の支援を受けて、国連ユニタールが20256月から11月にかけて実施しました。オンラインセッション広島での対面研修を通して、参加者は専門家の講義、被爆地でのフィールドワーク、成果発表を通じて学びを深めました。

対面研修では、デジタル技術の活用を通して医療分野等の課題解決に取り組む広島の地元企業を見学しました。医療分野の研究に取り組む理裕さんにとって、テクノロジーと医療が実際の現場でどのように融合し、社会実装されているのかを間近で体験できたことは、大きな刺激となりました。

テクノロジーと医療が、実際の現場でどう融合して社会に使われているのかを生で見ることができ、とても興味深い経験でした。

― 増田理裕、大学生/国連ユニタール研修参加者

「Hiroshima XR」アプリでつなぐ過去・現在・未来

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研修の最終課題では、各参加者がデジタル技術を活用したストーリーテリング作品を制作し、発表しました。理裕さんは、XR(拡張現実)技術を用いて、原爆投下直後と現在の広島の街並みを重ねて表示することで、利用者がその土地を空間的に体験できるアプリ「Hiroshima XR」を開発しました。

このアプリ制作にあたって重要なヒントとなったのは、東京大学の渡邉英徳教授によるオンライン講義でした。デジタル・アーカイブや空間表現を通じて記憶や歴史を継承する取り組みと手法についての新たな学びが、作品の構想と実装化につながりました。

被爆者による語りや証言は、これまで原爆の記憶を社会に伝えてきましたが、被爆から80年を迎えようとする今、その継承のあり方は大きな転換点にあります。

この作品を制作するに至った動機について、理裕さんは次のように語ります。

口頭による被爆体験の伝承は、内容の歪みや変化が生じやすい媒体でもあります。なるべく事実に近い形で残すためには、デジタルを活用することが不可欠だと思っています。

被爆直後に撮影された航空写真などを組み合わせ、リアリティのある仮想空間を構築するにあたっては、ゲーム開発エンジン「Unity(ユニティ)」や、プログラミング言語Python(パイソン)による機械学習を活用しました。

被爆者による語りや証言は、これまで原爆の記憶を社会に伝えてきましたが、被爆から80年を迎えようとする今、その継承のあり方は大きな転換点にあります。理裕さんは、被爆者一人ひとりの体験の重みを尊重しながら、デジタル技術によって「体験として向き合う入口」をつくることで、次の世代へと記憶をつなぐ可能性を提示しました。

研修を経て

研修を通じて、理裕さんは「工学の知識は、医療だけでなく平和の分野にも活かせる」と実感しました。現在は情報工学の基礎を学びながら、将来的にはデジタル技術と平和学を結びつける研究や活動にも関わりたいと考えています。

また、企業訪問や専門家との対話は、自分の知らなかった会社や事業分野を知るきっかけにもなった貴重な機会であったと言います。

専門が何であっても、社会課題に関わることはできると思っています。興味を持ったことを、まずは形にしてみてほしいです。 

デジタル技術を手に社会課題に取り組む増田理裕さんの挑戦は、これからも続いていきます。

国連ユニタールについて

国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2024年には、世界中で約55万人が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。詳しくは国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所ウェブサイトをご覧ください。

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