- インド出身のMriganika Singh Tanwarさんは国際関係を学び、現在はシンガポールを拠点とするリサーチアナリストとして、戦略技術が気候リスクや社会的現実とどのように相互作用しているのかを研究しています。
- 彼女は2024年度に国連ユニタールが実施した「自由で開かれたインド太平洋のリーダー育成研修:海洋と人間の安全保障」研修を修了しました。
- 研修を通じて、Mriganikaさんは、気候と安全保障が深く結びついていること、気候変動の影響はジェンダーによって異なること、そして地域コミュニティの声が解決策を形作る上で不可欠であることを学びました。
- 現在、彼女は小島嶼国の主権に関する研究を行うとともに、南アジアの先住民による気候関連の知識を記録するプラットフォームの開発に取り組んでいます。
2026年1月21日、広島―インド出身のMriganika Singh Tanwarさんが国連ユニタールの2024年度「海洋と人間の安全保障」研修の案内を目にしたのは、シンガポールの南洋理工大学で国際関係学の修士過程を修了したばかりの時でした。当時の彼女の関心分野は、国際安全保障と戦略的技術でした。
「文化、経済、地理、人口といった要素によって結びついたこの多様な地域が、海洋と人間の安全保障という二つの共通課題によってもつながっているという点に、大きな魅力を感じました」と彼女は語ります。
こうした好奇心から、彼女は国連ユニタールの研修プログラムに応募しました。その経験は、彼女の学問的および職業的な進路を大きく方向づけることとなります。現在、Mriganikaさんはシンガポール国立大学南アジア研究所のリサーチアナリストとして、戦略技術(人工知能、デジタルインフラ、サイバーセキュリティ、フィンテック、宇宙技術)が社会的現実や気候リスクとどのように相互作用しているのかを分析しています。
国連ユニタールでの学び―段階を追って
国連ユニタールの「自由で開かれたインド太平洋のリーダー育成研修:海洋と人間の安全保障」研修は、気候、社会、経済、食料、海洋の各分野における安全保障を強化するためのスキルと知識を参加者に提供するとともに、インド太平洋地域全体における調整メカニズムの構築を目的として実施されました。本プログラムは、2024年6月から2025年2月まで、日本政府の支援のもと、国連ユニタールにより実施されました。
本プログラムは、段階的に選抜が行われる3つのフェーズで構成されており、Mriganikaさんはそのすべてを修了した受講生の一人です。第1フェーズでは、受講生400人以上が2か月間のオンライン学習を修了しました。Mriganikaさんは、同フェーズを通して、気候と安全保障が分野横断的に結びついているという視点に初めて触れました。
「気候は、私たちが紛争をどのように捉えるかを大きく変えていくでしょう。」 — Mriganika Singh Tanwar、リサーチアナリスト/国連ユニタール研修修了生(インド・シンガポール)
第2フェーズでは、アジア地域の参加者を対象としたジャカルタでの対面ワークショップ(太平洋地域の参加者向けには、フィジーで並行してワークショップを実施)に参加し、気候変動をジェンダーの視点から捉える理解をさらに深めました。彼女は、気候変動の影響がジェンダーによって異なることを初めて明確に理解し、この視点が今後の自身の研究に生かされると語っています。
Mriganikaさんは、アジア太平洋地域からの参加者約50名とともに、日本で実施された最終フェーズへの参加者に選抜されました。太平洋地域の参加者との交流は、特に印象深いものでした。太平洋諸島が緩やかに進行する災害の渦中にあることを認識する中で、彼女は同地域の参加者たちの冷静で協調的な姿勢を「刺激的で、深い感銘を受けるものだった」と振り返っています。
技術と社会を結びつける視点
Mriganikaさんは、災害、戦争、紛争がデジタルトランスフォーメーションを妨げ、脆弱なコミュニティにおけるこれまでの進展を後退させる可能性があると認識しています。
「災害は、コミュニティを世界の他の地域から切り離してしまうことがあります。デジタルトランスフォーメーションを目指す地域にとっては、たとえ小規模な気候変動の影響であっても、不利な状況に陥りかねません」と彼女は指摘します。
コミュニティは、気候変動や安全保障へのあらゆる対応において、中心的な役割を担う必要があります。Mriganikaさんは、日本で視察した放水路や防波堤の事例を挙げ、コミュニティの視点が災害管理にどのように反映されているかを指摘しています。
「それらは、技術的な解決策がコミュニティの理解と受容と一体となって進められなければならないことを示していました。これは、南アジア諸国が学ぶべき重要な点です」と彼女は語っています。
洞察から行動へ―インドとインド太平洋
国連ユニタールの研修プログラムに触発され、Mriganikaさんはツバル、キリバス、モルディブなどの小島嶼国の主権に関する研究を行っています。この研究では、気候変動によって引き起こされる国家存続への脅威に対し、国際法が十分に対応できているのかを分析しています。
また彼女は仲間たちとともに、インドにおける先住民コミュニティの知識、文化的慣行、持続可能な実践を記録するデジタル・プラットフォーム『Folkway』を開発しています。
「インドは、津波、干ばつ、地震、雪崩などといった複合的なリスクを伴う災害に直面しています。しかし、先住民の知識を体系的に記録する仕組みは十分に整っていません。その課題意識が『Folkway』を立ち上げるきっかけとなりました」と彼女は語ります。
今後は、テクノロジー、気候、人間の安全保障の接点に関する研究をさらに発展させると同時に、『Folkway』の普及を進め、地域の専門家やNGOと連携しながら、コミュニティの声をより広く発信していく予定です。
「小さな行動でも、持続的な変化を生み出せる」
Mriganikaさんは、紛争や安全保障をより広く、かつ多面的な視点で捉えられるよう導いてくれた国連ユニタールと日本政府に対し、深い感謝の意を表しました。彼女は職場に国連ユニタールのロゴのついた水筒を置いており、それについて尋ねられるたびに、研修プログラムやそこで得た学びについて話しているといいます。彼女は、このようなプログラムは、研究者に慣れ親しんだ考え方や立場から一歩踏み出すきっかけを与え、自らの研究や発信がコミュニティに実際の影響を及ぼし得ることを示してくれるものだと考えています。
地球規模の課題を前に無力さ感じているかもしれない人々に向けて、彼女は次のような言葉を贈りました。
「どこから来たかのか、どのような機会に恵まれたのかは重要ではありません。情熱こそが、何よりも強く人の心を動かします。たとえ2人にしか影響を与えないような小さな行動であっても、それは世代を超えて受け継がれる変化を生み出すことができるのです」 — Mriganika Singh Tanwar、リサーチアナリスト/国連ユニタール研修修了生(インド・シンガポール)
英文記事はこちらからご覧いただけます。
本記事の執筆には国連オンラインボランティアMonica Sareenさんが協力しました。
国連ユニタールについて
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2024年には、世界中で約55万人が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。2003年に設立された国連ユニタール広島事務所は、平和と復興の象徴である広島を拠点に、平和構築や核軍縮、紛争や災害からの復興に関する国際的な研修を展開し、世界の持続可能な平和と繁栄の実現に貢献しています。https://www.unitar.org/ja/hiroshima