• 若き環境活動家Bryan Sinatraさんは、バリ島を拠点にマングローブの再生と保護に取り組むNGOの代表です。
  • 彼は2024年の国連ユニタール「自由で開かれたインド太平洋のリーダー育成研修:海洋と人間の安全保障」を修了しました。
  • Bryanさんはこの研修で学んだ知識を活かして、自身の団体が製造するマングローブ由来製品の販売拡大に取り組んでいます。また、環境の持続可能性におけるマングローブの重要性を広く伝えることも目指しています。
  • 彼は、マングローブ保全を沿岸生態系全体の視点で統合的に捉えるホリスティック・アプローチの導入に意欲的です。
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2025603日 広島 – 美しい自然で名高いインドネシアは、一方で災害の多い国でもあり、深刻な環境問題に直面しています。こうした状況を変えるべく立ち上がった若き環境活動家Bryan Sinatraさんは国連ユニタールの「自由で開かれたインド太平洋のリーダー育成研修:海洋と人間の安全保障」に参加しました。

サンゴ愛好家から環境活動家へ

Bryanさんの環境への情熱は、サンゴの収集から始まりました。それがきっかけで、沿岸部の暮らしを守る必要性を強く感じるようになりました。この情熱に導かれ、2023年にはマングローブの再生と保護に特化したバリ島拠点の非政府組織(NGO)のCEOに就任しました。同団体は、地域の漁師たちを支援し、技術とコミュニティ連携を通して、持続可能なマングローブ製品やエコツーリズムの促進に取り組んでいます。

Bryanさんは、国連ユニタールの同研修プログラムの募集告知を見たとき、自らの情熱と団体の使命に合致していると直感し、2024年6月にプログラムに参加しました。

国連ユニタール研修:マングローブ活動に刺激を受けて

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国連ユニタールのこの研修は、日本政府と日本国民の支援を受け、アジア・太平洋諸国の変革の担い手たちに対し、気候、環境、経済、食料、海洋の安全保障分野での知識・スキル・能力強化を目的にしており、インド太平洋地域における協調体制の構築も視野に入れたものでした。まずオンラインフェーズでは、900名以上の参加者がブルー・エコノミー、海洋ガバナンス、気候・食料安全保障などを学びました。

Bryanさんは優秀な成績を収め、20249月にジャカルタで開催された第2フェーズの地域ワークショップに進出しました。そこでは、アジアの12か国から約80名の参加者が専門家による講義、グループワーク、メンター指導セッションに参加しました。

特に印象深かったのは、タンゲラン市の現地視察です。参加者は都市型水産養殖場を訪れ、地元の人びとがマングローブ製品を通じて観光振興を行う様子を見学しました。この経験がBryanさんを大きく刺激し、彼とNGOチームはマングローブを使った焼き菓子の開発を行いました。これは健康的で魅力的な製品であると同時に、マングローブの環境保護における重要性を伝える強力な手段にもなりました。

経済的なインセンティブを創出することで、地域住民がマングローブの価値を理解し、保護やエコツーリズムへの関心を高めることができます。 — Bryan Sinatra、環境活動家、国連ユニタール研修修了生(インドネシア)

里海(さとうみ):沿岸保全のホリスティック・アプローチ

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ジャカルタで実施されたワークショップでの実践的な成果により、Bryanさんは最終フェーズへと進出し、20252月に日本で2週間の集中対面ワークショップに参加しました。ここで彼はインド太平洋地域の各国から集まった他のリーダーたちとともに学びを深めました。

Bryanさんは、特に太平洋諸国の参加者との交流に感銘を受けました。多くの参加者がマングローブ保全に情熱を注いでいることを知り、世界各地でのマングローブの活用や販路に対する視野を広げることができました。

この日本研修で彼が最も印象を受けたのは「里海(さとうみ)」という概念です。これは人間と生態系の長期的な相互作用を通じて海洋・沿岸資源が形作られ、持続されていくことを示すものです。

以前はマングローブにだけに目を向けていましたが、今ではサンゴ礁や海草などすべてがつながっていると考えるようになりました。真の持続可能性を実現するには、沿岸生態系全体を一連のものとして捉える必要があります。

今後の展望:マングローブ保全と食料安全保障の接続

Bryanさんは8か月に及ぶ研修で得た知見を活かし、マングローブの再生と保護をさらに進めていく意欲を示しています。彼は、自身の団体がインドネシア社会に大きな影響を与え、食料安全保障と環境の持続可能性に対する意識を高める中核的存在となることを目指しています。これに向けて、マングローブ由来製品の多様化を図り、生物多様性の保全だけでなく、環境保全と持続可能な食料システムとの関係性も強調する方針です。

また、若い世代に向けて、小さくても意味のある一歩を踏み出すよう呼びかけています。彼は、小さな行動が集まることで、社会に大きなポジティブな影響をもたらすと信じています。

一歩踏み出して、小さな変化を起こしてみてください。その積み重ねが、より良い社会の実現につながります。

英文は以下よりご覧いただけます。
Paving the Way for Mangrove Conservation in Indonesia: Bryan Sinatra | UNITAR

国連ユニタールについて

国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2024年には、世界中で55万人以上が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。詳しくは国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所をご覧ください。

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