- 平和教育や国際情勢に関心を寄せてきた広島県の高校生、森下侑哉さんは、2025年度の国連ユニタール広島青少年大使プログラムに参加しました。
- 侑哉さんは、青少年大使として、国際法や平和教育などに関する理解を深めるとともに、他の青少年大使と協働し、核兵器のない平和な世界の実現に向けたロードマップを発表しました。
- この活動を通じて、国連体制における拒否権の課題や、多文化・異文化理解の重要性について学びを深めました。
青少年大使プログラムへの参加
侑哉さんは中学1年生の時から、学校の課外活動である折り鶴クラブに所属し、折り鶴制作を通じた平和活動に取り組んできました。また、学校での戦争や平和に関する授業を通じて国際情勢への関心を深め、「より広い視点から平和について学びたい」と強く思うようになったと言います。そのような中、高校3年生の春に、侑哉さんは国連ユニタール広島青少年大使プログラムのことを知り、応募を決意しました。
2010年に始まったこのプログラムは、国連ユニタール協会の実施協力のもと、広島県およびソロプチミスト広島中央からの支援を受けて、国連ユニタールが実施しています。本プログラムは、広島県内の高校生を対象に、次世代の平和の担い手を育成することを目的としています。
被爆80年経った2025年、侑哉さんは6月から約2か月間、各界の専門家を招いた講義を通して核軍縮・不拡散や平和構築について学びを深め、グループワークでは他の参加者と活発な意見交換を行いました。これらの学習を踏まえて実施された8月6日の国際平和のためのユース対話イベントにて、2050年までに核兵器のない平和な世界を実現するためのロードマップを「平和教育」・「被爆者」・「人権・国際法」のテーマごとに発表しました。侑哉さんは、特に「人権・国際法」をテーマとするグループに携わり、仲間とともに話し合いや発表に取り組みました。
国際法と国連体制についての気づき
侑哉さんにとって、平和活動に携わる専門家による講義は、単に知識を得るだけではなく、自分たちが目指す「平和な世界」とは何かを具体的に考える契機となりました。
中でも一番印象に残ったのは、平和維持活動に携わった経験のある方の講義でした。実践知を踏まえたお話を通して、民間人を守ることや助けるといった、平和の基盤となる部分を直接学ぶことができ、とても貴重な機会であったと述べています。
特に「国際法」グループの一員としてロードマップを作る中で気づいたことは、現在の国連体制における、安全保障理事会・常任理事国の拒否権問題の深刻さでした。調べれば調べるほど、条約だけでは世界の戦争を止めることに限界があることに気がつきました。
これらを踏まえて、平和な世界へのロードマップの発表では、拒否権問題そのものをまず可視化することなどを盛り込んだ提案を行いました。
また、平和と安全のための国際制度や国際法が存在しつつも、戦争によって最も大きな被害を受けるのは一般市民であるという現実を、改めて強く認識したと語ります。これまで戦争を主に国家間の問題として捉えていましたが、実際には人々の命や日常生活に深く関わる問題であることに気づいたといいます。
法律や条約があっても、人々の理解や信念がないと平和は成り立ちません。平和を学ぶだけではなく、自分で考え行動すること。その行動が、偏見をなくし、相手の立場を理解する助けになります。―森下侑哉、2025年度国連ユニタール広島青少年大使
平和を育む多文化理解
侑哉さんは、平和教育について他の青少年大使とともに議論を深め、共同で発表したロードマップの中で、すべての国における平和教育の義務化を提案しました。世界中の初等・中等教育において平和教育を必修とすることは、若者がそれぞれの形で平和に貢献する道を見いだすための一つの方法にもなり得ます。
また、被爆者の体験を保存し、言語の壁を越えて生き生きと伝える手段として、ホログラムなどの技術の可能性についても提言しました。
侑哉さんは、平和を育むことは歴史から学び、文化や価値観の違いを越えて互いを理解することに根ざしていると考えています。
平和教育の中で、相手をただ知ることと、相手の立場を理解することは別の話だと思います。異なる相手の立場を理解していくことが教育だと考えています。
侑哉さんは、研修後も引き続き平和活動との接点を持ち続けたいと考えています。
最後に侑哉さんは、挑戦することにためらいを感じている人たちに向けて、「自分の意思を言葉にし、それを周囲に伝えていく」ことが大事であると伝えています。彼は、「たとえ一人でも行動を起こすことが、周りに変化をもたらす方法である」と信じています。
本記事の執筆には国連オンラインボランティアReona Takahashi Sonsonさんが協力しました。
国連ユニタールについて
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2024年には、世界中で約55万人が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。詳しくは国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所ウェブサイトをご覧ください。