• トンガ地質サービスの地質学者助手であるSavelinga Fatafehi ‘O Lapaha Fa’oliuさんは、国連ユニタール「気候危機へ早期警報のための緊急対応システム:だれ一人取り残さないために」研修の修了生です
  • オンラインと日本でのスタディツアーで構成された本研修を通して、Savelingaさんは災害への備えを強化するための早期警報システムの開発に関するスキルを学びました。
  • 彼女は、テクノロジーと地域社会へ関与を統合させることが早期警報の鍵であると学びました。Savelingaさんは、今後研修で得た知識を活かして、トンガでより災害に強くレジリエントな地域社会づくりに取り組んでいます。
UNITAR

2025603日、広島 –  トンガの険しい地形と青く深い太平洋の海は、長きにわたり、トンガの人々にとって誇りであると同時に、自然の驚異を常に思い起こさせる存在でもあります。トンガ地質サービス (Tonga Geological Services)に勤務する地質学者助手のSavelinga Fatafehi ‘O Lapaha Fa’oliuさんは、島国であるトンガの地域社会を自然災害から守るために日々尽力しています。

災害リスク軽減と早期警報システムを国連ユニタールの研修で学ぶ

UNITAR

Savelingaさんは、地質ハザード監視の最前線に立っています。彼女の業務が効果的な災害軽減につながるよう、2024年の国連ユニタール「気候危機へ早期警報のための緊急対応システム:だれ一人取り残さないために」研修事業に参加しました。本研修は、日本政府と日本国民の支援により実施され、太平洋諸国の人々が気候災害や極端な気象変動に関する早期警報を分析・監視・共有・対応できるように知識とスキルを身につけることを目的としています。

Savelingaさんは、2022年に参加した「津波防災に関する女性のリーダーシップ」研修事業で初めて早期警報システムについて学び、その中でも関心を引かれたのが地震や火山噴火に関するセッションでした。これらはトンガが直面しうるリスクであり、今回のより専門的な研修の受講につながったといいます。

日本での学び:未来へのビジョン

UNITAR

研修の第1フェーズはオンラインで行われた後、成績優秀者は日本での12日間のスタディツアーに招待されました。Savelingaさんもその一人でした。

日本訪問は、Savelingaさんにとって大きな転機となりました。災害対策と先進的な技術で世界的にも評価されている日本での現地視察では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などを訪問し、リモートセンシング技術や高度な早期警報システムについて学びました。

日本の最先端システムと母国トンガの現状が対照的であることに圧倒されつつも、彼女の心には、いつかはトンガもここまでできるという希望が芽生えました。

日本は災害のための備えと早期警報システムがしっかりと整備されています。トンガはまだまだこれに及びません。でも、きっといつか日本のレベルに追いつけると信じています。

最も印象に残ったのは、テクノロジーだけでなく、地域社会を巻き込んだ情報発信や、携帯ラジオを活用した警報の徹底でした。限られた資源の中でも、意識の向上や住民同士の連携によって災害対策は大きく進展できると確信したのです。

早期警報システムの整備には、テクノロジーだけでなく、地域社会の関与と明確なコミュニケーションも重要です。

学びを行動へ:地域社会での変革を実現

トンガに戻ったSavelingaさんは、地域社会の具体的な改善を目指して、研修で得た知識を実務に取り入れ始めました。日常業務において、最先端のモニタリング技術を一般市民の防災意識や備えと融合することを提唱しています。

私はトンガの地域社会が、テクノロジー強化による備えだけでなく、迅速かつ効果的に対応できる強いネットワークによって、より災害に備えられるようにしたいのです。

彼女は既存の地震・火山監視システムの強化に取り組む一方、地域のリーダーとの連携により、警報が鳴った時に迅速に行動できるよう、住民避難訓練の実施に取り組んでいます。特に、災害弱者が積極的に参加できるよう配慮しています。

私は、災害時の計画や対応に災害弱者が含まれることをいつも念頭に置いています。

彼女の目標は、トンガのあらゆる地域社会が情報を共有し、つながり、備えられる融合型の早期警報システムの構築です。

レジリエンスある未来へ ともに

国連ユニタールの研修を通じて、Savelingaさんはレジリエンスはは最先端技術だけでなく、危機の時に互いを支えるという地域の連帯によって築かれるということを学びました。災害のリスクが常にある国において、学んだ教訓、採用された新しい技術、そして訓練を受けた地域の住民一人一人が、安全でより回復力のある未来に貢献しています。今後も災害リスク管理に関わる専門家同士で学び合い、知見を共有しながら、より安全でレジリエントな地域を築いていきたいと語ります。課題は多いかもしれませんが、協力とイノベーションによって乗り越えられると信じています。

Savelingaさんは国連ユニタールと日本で学んだことを実践することで、トンガの誰もが臆することなく災害に立ち向かえる未来の基盤を築こうとしています。

本記事は、国連ボランティア Alameldin Talibさんのご協力のもと記事化されました。

英文記事は以下からご覧いただけます。
Integrating Tech and Community for Effective Early Warnings: Savelinga Faʻoliu, Tonga | UNITAR

「気候危機へ早期警報のための緊急対応システム:だれ一人取り残さないために」研修事業について

本研修は、太平洋諸国の人々に対して、気候災害や極端気象に関する早期警報を効果的に伝達・監視・分析・対応するための知識とスキルを提供し、命を守り、気候関連災害による社会的・経済的影響を最小限に抑えることを目的としています。

この研修は、アジア太平洋地域における海と人の安全を高めるための「Shimanami Collective」イニシアチブの一環として実施され、特に若者や女性のエンパワーメントに重点を置いています。日本政府と日本国民の支援により実施され、「海と人の安全」「早期警報システム」「防災における女性のリーダーシップ」の3分野で専門的なトレーニングを提供しています。

国連ユニタールについて

国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2024年には、世界中で55万人以上が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。詳しくは国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所をご覧ください。

シェアする