- ユーリー・クリヴォノス氏は、2016年から国連ユニタールの「核軍縮・不拡散広島研修」事業に研修顧問・講師として携わっています。
- 広島は、外交官や政府関係者が核軍縮について学ぶ理想的な場を提供しています。
- クリヴォノス氏は、プログラム参加者が、それぞれの省庁内や国際舞台で核軍縮・不拡散を推進するための実戦的な知識と技術を学ぶことを確信しています。
2023年8月14日、広島 - 2016年以来、ユーリー・クリヴォノス氏は広島で国連ユニタールの核軍縮・不拡散研修を通じて外交官の育成を行っています。同分野での20年以上の経験を持つ元国連アジア太平洋平和軍縮センター長(国連軍縮部)が、同研修事業と国連ユニタール広島事務所との関係を振り返ります。
クリヴォノス氏は、国連ユニタールの核軍縮・不拡散広島研修事業を、平和・軍縮教育におけるより広範な国連活動の一環と考えています。2015年に開始された同研修事業では、アジア諸国の外交官を対象に、世界の核兵器を巡る議論や軍縮・不拡散に関する国際会議での文書作成についての知識を伝え、世界平和の促進に向けた交渉やコミュニケーションのスキルを指導しています。
広島で学ぶ意義
クリヴォノス氏は、広島が核戦争による破壊を初めて経験した都市であり、その歴史的象徴性を鑑みて、この地が研修に理想的な場所であると考えています。また、広島の人々の力強い復興への歩みと、被爆者の体験を語り継ぐ勇気に敬意を表しています。
平和公園と平和記念資料館を訪れ、核兵器が引き起こした壊滅的な影響を直接目の当たりにしなければ、軍縮と核兵器廃絶の必要性を吟味し概念化することは容易ではありません。— ユーリー・クリヴォノス、核軍縮・不拡散専門家、国連ユニタール研修顧問
特に、広島市の松井一実市長と広島県の湯﨑英彦知事に対して、研修プログラムに対する継続的な支援と貢献に感謝しています。
学びの実践を示す活発な議論
国連ユニタールの事業の目的の一つは、外交官たちが問題についての理解を深め、その理解を活かして効果的に交渉する能力を養うことです。研修各回の最後には、参加者が核軍縮に関する異なる立場を代表するチームに分かれて交渉力を試すシミュレーション演習を行います。クリヴォノス氏は、その中でも、ある年に広島の平和記念資料館で行われ、40人以上の参加者が集まったシミュレーション演習が特に記憶に残っています。
議論は活発で、参加者たちは争点となった問題に対して自分の立場を守ろうと必死に議論を交わしました。この演習を通じて、参加者たちは何かを学び、その知識を建設的に活用したいと考えていました。— ユーリー・クリヴォノス、核軍縮・不拡散専門家、国連ユニタール研修顧問
この経験は、参加者たちが実用的なスキルを学び、それを本国の省庁や国際的な舞台で活用できることを示しました。
国連ユニタールの広島研修の未来への期待
現在のアジア・太平洋地域の安全保障をめぐる動向を踏まえ、クリヴォノス氏は、国際社会が核軍縮を優先し続ける限り、国連ユニタールの核軍縮・不拡散広島研修事業は今後も重要なテーマであり続けると考えています。
一週間の研修で全ての関連情報を網羅することはできませんが、この研修は参加者に核軍縮の歴史を理解するための『動機、ガイダンス、指針』を提供し、ASEAN諸国や他のアジア諸国が域内あるいはグローバルな平和構築を達成し、安全性を強化するための重要な役割を理解する手助けをしています。— ユーリー・クリヴォノス、核軍縮・不拡散専門家、国連ユニタール研修顧問
2023年7月15日に国連ユニタール広島事務所が20周年を迎えた際、クリヴォノス氏は過去20年間の同僚たちの取り組みを祝福するとともに、アジア諸国が世界的な議論をリードし、より広範な核軍縮を達成するための主導権を握ることを期待しています。「前進し続け、取り組み続け、任務を果たし続けてください。」
核軍縮・不拡散広島研修については、以下よりご覧いただけます。
英文は以下よりご覧いただけます。
国連ユニタールについて
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、1963年の設立以来、研修事業に特化した国連機関として、世界各国の人材開発を支えています。2023年には、54万人以上が受講。ジュネーブ本部のほか、ニューヨーク事務所、広島事務所、ボン事務所があり、様々なネットワークをもっています。2019年からは持続可能な繁栄局(Division for Prosperity)のもと、広島事務所と、ジュネーブ本部の財政・貿易ユニットの職員がともに、起業やリーダーシップ、貿易と金融、デジタル技術、軍縮などについてプログラムを展開しています。紛争後復興の過程にある国の人々への研修などには、原爆投下後から現在の平和都市に至る過程を一つの復興モデルとして講義に組み込むなど、平和で公正な社会の実現にも貢献しています。
国連ボランティアNishant Joshiさんのご協力のもと記事化されました。