- 広島市内の高校に通う高校2年生の出木原和花さんは、2025年に実施された国連ユニタールの研修「SDGsとデジタル未来:AIとデジタル・ストーリーテリングで切り拓く変革」に参加しました。
- 研修では、AI(人工知能)技術の活用スキルに加え、他国出身の参加者との交流を通じて得た新たな気づきを活かし、被爆体験を「正しく、分かりやすく」伝えるためのデジタル絵本を制作しました。
- 今後も和花さんは、広島や日本について世界に向けて発信すると同時に、他国の歴史や社会課題について学び続けていきたいと考えています。
世界に被爆体験を伝えること
広島で生まれ育った出木原和花さんは、小学校の時から原爆や平和について学んできました。高校では平和や国際協力に関心を持ち、さまざまな活動に取り組んでいます。
転機の一つは、アメリカでのホームステイの経験です。現地で出会った同世代の若者たちの多くが、広島の原爆について「原爆が落ちた」という事実しか知らなかったことに、大きな衝撃を受けたといいます。
これから全世界で協力して核兵器の数を減らしていためには、どのようなことが実際起きたのか、ということを世界の人に具体的に説明する必要があると感じていました。 ― 出木原和花、高校生/国連ユニタール研修参加者(日本)
この経験から、和花さんは、被爆の事実をどう伝えていくのかを、自分自身の課題として考えるようになりました。
そのような時に、和花さんが出会ったのが、国連ユニタールの研修プログラム「SDGsとデジタル未来:AIとデジタル・ストーリーテリングで切り拓く変革」です。国内外の若者を対象としたこの事業は、AIやデジタル技術を活かして社会課題の解決のための発信スキルを身に着けることを目指し、広島県と広島市の支援を受けて、被爆80年記念事業として実施されました。研修は、2025年6月から11月にかけて、オンライン研修期間と広島での対面研修を組み合わせて行われました。研修の集大成として、各参加者は個々人で練り上げたストーリーテリング制作物トを発表しました。
和花さんにとって、専門家からの講義もとても新鮮且つ実りあるものでした。例えば、AI映画監督・肖雲鵬氏による講義では、自身の絵本制作にも直接役立つものでした。AIを活用する際に、どのような指示を出せば意図した画像を生成できるのか、どの視点を強調するのか、絞りや画像のスケールをどう設定するのかなど、具体的な手法を知ることができたと言います。また、日本マイクロソフト社を講師に迎えた講義では、マインクラフトが子ども向けの学びのツールとして活用されていることを知り、学習の際の「最初の一歩を軽くすることが大事」だという点を強く実感しました。
原爆を伝える絵本プロジェクト
多くの学びを得ながら、和花さんは自身のストーリー作品として、デジタル絵本の制作に取り組みました。広島平和記念公園の案題材としたこの作品の目的は、原爆について知らない人にも、「正しく」そして「分かりやすく」伝えることです。
原爆について、みんながまず知る、そして考え始めるということをしないと、世界的な協力にもつながらないと考えています。被爆者の高齢化に伴い、私たち自身が原爆について正しく知り、伝えていかなければならない時、怖いからと遠ざけるのではなく、まずは一歩目を軽くしよう―そう思ったのが、この絵本プロジェクトのきっかけです。
絵本作品では、原爆の威力の大きさ、そして恐ろしさを正しく効果的に伝えるために、AIを活用して被爆前後の写真を用いた画像の生成を行いました。同時に、原爆について知らない、あるいはあまり興味を持って調べたこともなかった人々を念頭に置き、「少し見てみよう」というきっかけになるような優しい絵にすることを心掛けました。
作品の完成後、和花さんはすでに実際にこの絵本を使用しています。そして、知人や海外からの留学生からフィードバックを参考にしながら、更なる改善も検討していると言います。
世界について学び、世界に向けて伝え続ける
学校での平和教育での経験や、海外の人びととの交流、そして新たに身に着けたAIツールの活用スキルを活かして、和花さんは自身の思いを絵本として形にし、新たな一歩を踏み出しました。
和花さんは今後も、広島について広く世界に発信していくと同時に、他国についても学び続けることを大事にしたいと言います。
他の国のことにもアンテナをめぐらして、何が起こっているのか、どんな歴史があるのかを知ることの重要性を強く感じました。
また今回の研修を通して、AI技術が限られた専門分野だけのものではなく、想像以上に多くの領域で活用されていることを知り、AIツールを使いこなせるようにこれからも学び続けたいとも意気込んでいます。
国連ユニタールについて
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2024年には、世界中で約55万人が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。2003年に設立された国連ユニタール広島事務所は、平和と復興の象徴である広島を拠点に、平和構築や核軍縮、紛争や災害からの復興に関する国際的な研修を展開し、世界の持続可能な平和と繁栄の実現に貢献しています。https://www.unitar.org/ja/hiroshima