- 日本の高校生である吉田玲奈さんは、2025年国連ユニタール広島青少年大使プログラムへの参加を通じて、正義と平和に対するさらなる理解を深めました。
- 8月6日のユース対話イベントで、彼女は平和教育グループの発表として、創作劇を行いました。
- 玲衣奈さんは、本プログラムを、平和および国際法分野の専門家から直接学ぶことで視野が広がった、かけがえのない経験であったと語っています。
2025年12月26日、広島 - 広島県福山市の高校2年生の吉田玲衣奈さんは、正義への探求心と、平和に貢献したいという真摯な思いに導かれ、自らの道を切り拓いています。国連ユニタール広島青少年大使プログラムへの参加を通じて、彼女は異なる立場や時間軸を超えた多様な視点から、平和を築くための学びを深めました。
平和と正義への関心
世界には様々な違いがあり、例えば人種の違いや歴史の違いなど、...その違いを学んで理解して共有していくことで平和がつくられていくという信念がありました。
―吉田玲衣奈、高校生、国連ユニタール広島青少年大使
吉田玲衣奈さんは、平和と正義の深い意味を探求することにいつも惹かれてきました。学校では法学の授業はありませんが、日本の法制度への関心から、高校1年生の時から自主的に法学の講義に参加してきました。
そのような中、玲衣奈さんは国連ユニタール広島青少年大使プログラムが高校生の参加者を募集していることを知りました。広島の高校生を対象に2010年から毎年実施されているこの国連ユニタール事業は、地球規模課題や持続可能な開発目標(SDGs)への理解を高めるとともに、平和な世界の実現に向けた若者のリーダーシップを強化することを目的としています。同事業は、国連ユニタール協会の実施協力のもと、広島県および国際ソロプチミスト広島―中央の支援を受けて実施されています。
玲衣奈さんが高校1年生のときにはじめて応募した際には参加が叶いませんでしたが、彼女は国連ユニタールの一般公開イベントに足を運び続ける中で、国連の視点から平和や紛争解決について学びたいという思いを固めました。そして翌年の、プログラムに再応募した彼女は、見事この機会を掴んだのです。
過去の記憶が紡ぐ平和:青少年大使プログラムへの参加
2025年度の広島青少年大使プログラムでは、6月から8月にかけて、青少年大使25名が、核軍縮と平和構築、人権および国際法、被爆者の遺産、平和教育について学びました。また、広島への原子爆弾投下から80年の節目となる8月6日に開催されたユース対話イベントに参加し、世界のリーダーや被爆者の方々と交流しました。
玲衣奈さんがプログラムの中で、特に強く印象に残ったのは「グローバルヒバクシャ」に関する講義でした。マーシャル諸島などで核実験被害者を支援する講師を通して、放射線被害が広島や長崎だけのものではないことを知ると同時に、深い衝撃を受けました。「これまで自分も知らなかったということは、多くの人も同じように知らないのではないか」という気づきが、彼女の平和に対する理解を一変させました。そして、このような現実をより多くの人に伝えていく必要があると強く感じるようになりました。
この信念は、芸術や表現を通してメッセージを伝えるという形に発展しました。彼女は青少年大使プログラムのグループ別発表では「平和教育」グループに所属し、8月6日のユース対話イベントにて、記憶と平和への意識をテーマにした創作劇を仲間とともに演じました。
創作劇では、2025年の学生たちが偶然2050年にタイムトラベルし、そこで平和について議論する教室に出会います。しかしその未来の世界では、原爆の記憶が薄れ、人々はもはや核兵器の危険性を理解していません。それを目の当たりにした学生たちは現在に戻り、「このような未来にしないためにはどうしていけばいいのか?」と問い始めます。
玲衣奈さんは、歴史から切り離され、過去を知らない2050年の学生の役を演じました。「過去に囚われる必要はない」 という彼女の最初の力強いセリフでは、過去を遠いものとし、深く考えない人々の心のあり方を表現したかったと語ります。そして同時に、記憶し続けることの大切さを伝えることを試みたのです。
平和については、これからもずっと考えていかなければならない。これは私たちの権利であり義務でもあると思います。考えることを止めてはならないのです。
また、玲衣奈さんの所属していた平和教育のグループは、2050年までの「ロードマップ」の発表の場で、平和学を正式な学校科目としてカリキュラムに導入するといった提案を行いました。
平和について考え、取り組み続ける
玲衣奈さんの平和への情熱は国連ユニタールから始まったわけではありません。彼女は、中学2年生の時から地域の平和活動「ふくやまピース・ラボ」に参加しています。この活動は、地域の平和意識を高めるために、福山の戦争遺跡を巡るツアーなどの福山空襲に焦点を当てた学習の機会や、広島市内への研修を企画・実施しています。
そのような中でも、玲衣奈さんにとって、国連ユニタール広島青少年大使プログラムへの参加は新たな視点を得られるかけがえのない経験でした。特に、現場で活躍する専門家の講義を直接聞けたことは大変貴重な機会でした。国際法、被爆体験の伝承、平和教育の専門家たちから学び、現場の声を聞くことができたのです。彼女はこう振り返ります。
第一線で活躍している方々と私たち高校生が交流できたことは、非常に大きな意味がありました。高校生の意見にも耳を傾けてくださる方がいることは、とても嬉しかったです。
今後、玲衣奈さんは国内の法律分野でのキャリアを志しながら、平和構築と法学の交わりを探求し続けたいと考えています。彼女は、平和と法の関係をまだ模索中ですが、どちらの分野も最終的には「何を正義とするか?」という共通の問いに向き合っていると考えています。
英文の記事はこちらからご覧いただけます。
Carrying On Memories for Peace: Reina Yoshida, UNITAR Hiroshima Youth Ambassador | UNITAR
本記事の執筆には国連オンラインボランティアKokoro Okamotoさんが協力しました。
国連ユニタールについて
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2024年には、世界中で約55万人が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。2003年に設立された国連ユニタール広島事務所は、平和と復興の象徴である広島を拠点に、平和構築や核軍縮、紛争や災害からの復興に関する国際的な研修を展開し、世界の持続可能な平和と繁栄の実現に貢献しています。https://unitar.org/ja/hiroshima