- Nathalie Fakher Eddineさんは、レバノン出身の起業家で、食を通じた交流の場を生み出すプラットフォームの共同創設者です。
- このプラットフォームは、地元の一般家庭と観光客をつなぎ、レバノンの食文化を広めると同時に、女性や経済的に困難な家庭に収入の機会を提供しています。
- Nathalieさんは、国連ユニタールの2024年「エジプト、イラク、レバノンにおける食料安全保障と経済発展の促進のための起業家精神とイノベーション」研修を修了しました。
- このプログラムを通じて、持続可能なビジネスモデル、財務的持続可能性、コミュニティ参画について学びました。
- Nathalieさんは、起業家にとって強力な支援システムが重要であると強調しており、国連ユニタールのプログラムを通じて得た人脈やメンターシップに感謝しています。
食を通じたつながりとエンパワーメント
Nathalieさんは、食が文化の遺産を維持し、人々を結びつける力を持つと信じています。一般家庭で料理をする多くの優れた人、特に女性や社会的に弱い立場にある人々が、優れた料理の腕を持ちながらも、それを収入に結びつける手段を持っていない現状に気づいた彼女は、このオンラインプラットフォームのアイデアを思いつきました。
私は、食は文化交流の手段であるだけでなく、経済的エンパワーメントの手段としての力があると信じています。— Nathalie Fakher Eddine、起業家、国連ユニタール研修修了(レバノン)
このプラットフォームは、自宅で料理をふるまうシェフと、本格的なレバノン料理体験を求める訪問者をつなぐものです。地元住民や観光客が家庭料理のレバノン料理を味わうことを可能にする一方で、家庭のシェフには安定かつより大きな収入源を提供します。このサービスは、観光客がその国の人々、料理、習慣と深く関わる文化観光への人気の高まりを背景としており、Nathalieさんはこの成長が自らのようなサービスにとって理想的な環境を提供していると考えています。
Nathalieさんは、適切な手段と機会が与えられれば地域経済は活性化し、コミュニティ事業による雇用創出と経済的レジリエンスの向上を後押しすると信じており、まさにそれこそが彼女がこのプラットフォームで目指していることです。また、経済的な参加を通じてジェンダー平等の促進にもつながることを願っています。
課題と機会
レバノンは、長年の経済危機や治安不安に苦しんでおり、一部の地域では2024年後半から紛争が激化しています。不安定な経済や変動する通貨の影響で、ビジネスの運営が難しい状況です。起業家が資本を調達することが困難であり、長期的な計画も立てにくいのです。新しいビジネスモデルへの抵抗も課題の一つで、既存の産業はテクノロジーを取り入れることに慎重です。
このような状況の中で、Nathalieさんは自らの取り組みが成功するのかどうか、思いを巡らせています。政治や経済の不安定さが大きな障害となる一方で、同時にレジリエンスと革新性を育む契機ともなりえます。こうした厳しい環境にもかかわらず、Nathalieさんは挑戦し続け、創意工夫を重ねています。
国連ユニタールでの経験
修士課程在学中に、Nathalieさんは国連ユニタールが実施する「エジプト、イラク、レバノンにおける食料安全保障と経済発展の促進のための起業家精神とイノベーション」研修事業 を知り、参加を決意しました。この研修プログラムは、日本政府と日本国民の支援により実施されており、中東・北アフリカ地域の持続可能な食料システムを支える起業家を育成することを目的としています。
彼女は戦時下の厳しい状況にもかかわらず、プログラムの最初の2つのオンラインフェーズに参加し、起業の基本、アグリビジネス、起業家ツールと最良事例について学びました。
その努力が実り、彼女は2025年2月4日から11日にかけて東京と広島で開催された対面ワークショップへの優秀な受講生17名のうちの一人に選ばれました。Nathalieさんは、このプログラムで得た視点の広がりとビジネスモデルの改善が、今後の成功に大きく貢献すると信じています。彼女は今後、収益源の多様化、環境に優しいプロセスの導入、アグリテックの活用などを通じて、さらに影響力のあるプラットフォームを目指しています。
未来への力強い支援
Nathalieさんは他の起業家に対し、「自分を信じ、柔軟に対応し、困難を学びの機会とすること」を強く勧めています。また、国連ユニタールのようなメンター指導や人脈形成の機会を活用することの重要性も強調しています。
Nathalieは、ビジネスリーダーとしてさらに成長を続けるとともに、プラットフォームの発展や地域社会全体を支えるための新たな資金調達の方法を模索していきたいと考えています。彼女の夢は、このプラットフォームを、家庭のシェフを通じて地元民と観光者が交流する、食文化体験の中心的な存在に育てることです。また、家庭で料理をする人に対して垂直農法や地元食材の活用方法についての研修を提供することで、より持続可能な未来を目指しています。
Nathalieの長期的な目標は、食の分野にとどまらない。彼女は、このプラットフォームがさらに影響力を高め、より多くの雇用を生み出し、レバノン文化の維持にも大きく貢献することを願っています。
起業家精神は、単にビジネスを立ち上げることではなく、コミュニティに前向きな影響を与える意義あるものを創り出すことです。
本記事の執筆には国連オンラインボランティアZaid Josepさんが協力しました。
英文は以下よりご覧いただけます。
Bridging Food, Technology and Culture in Lebanon: Nathalie Fakher Eddine | UNITAR
国連ユニタールについて
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2024年には、世界中で55万人以上が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。詳しくは国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所をご覧ください。