生物多様性条約(CBD)が掲げる生態系アプローチは生物多様性の保護、持続的利用と遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を目的としています。生態系アプローチは将来の生態系と人間の両方のニーズを両立させることを目指し、包括的、総合的かつ普遍的なアプローチを使用します。生態系アプローチはすでに多くの国際条約や決議によって承認されており、アプローチを概念化する作業が継続して行われていますが、適切に実践するための運用ツールを必要としています。
その結果、国連ユニタール広島事務所と専門家で下記3つの要素を含む生物多様性に関する研修を考案しました。
- 研修会場の立地と水の生態系を最大限に活用する水資源と湿地帯管理
- 研修生がすぐに利用でき、習得した知識を応用できる社会政策と適切な手法の開発
- 生態系ツールに関する知識を各自の文脈に適用する最善の方法について成功事例と教訓から学ぶ
1998年に研修開始以来、200人以上の専門家が卒業生としてネットワークを構築しており、アジア太平洋地域で評価を得ています。本研修シリーズでは生物多様性や気候変動などの世界的緊急課題について議論を行ってきました。
学習目的
研修ごとに異なるテーマを設置していますが、本研修受講後には研修生は下記の項目を理解し達成することを目的とします。
- 戦略的なプロジェクト計画書作成に必要な手法やツール
- 最新の革新的なアプローチと過去の教訓からの学び
- 生態系管理手法と原則
- 生物多様性管理の成功事例
- 生態系が直面する将来の課題
- 効果的な生態系管理手法の実証
研修手法
本研修では下記の異なる学習手法を組み合わせ参加型で研修を行います。
対話型講義とグループ演習
多角的な視点から講師が理論を説明し、実際のケーススタディを参考にしながら対話型で講義を進めていきます。講師の講義の後にはグループごとに議論を深め演習を行い、分野の文脈化促進を図ります。
前日の振り返り
毎朝研修開始前にグループごとに前日の振り返りを行い、講義の主な要点や参考資料などについて復習します。
視察
講義で学んだ理論の理解を深め、現状を踏まえた政策や実施例を学ぶために視察を行います。
トレーナー養成(TOT)
本研修では机上の空論にならないよう実社会で役に立つ知識やスキルを提供しています。そして、研修生が各自の所属機関に戻り研修で学んだことを同僚や関係者と共有し幅広く知見を広めていくことを能力強化の一環として奨励しています。
研修終了報告書
「国連ユニタール広島事務所 生物多様性に関する研修」の過去に実施した研修テーマは下記の通りです。(以下、英文のみ)
2008年6月29日-7月4日(釧路)
テーマ:生物多様性と気候変動
2007年8月13-14日(インド、デラドゥン)
テーマ:山林の生態系-課題と今後の進め方
2006年8月27-31日(釧路)
テーマ:生態系、水と生物多様性
2004年11月29日-12月3日(釧路)
テーマ:新たな生態系管理ツール