• Viktoria Podvoiskaさんはウクライナからの避難民であり、母国への本格的な侵攻が始まった時にポーランドに移住しました。
  • 彼女は、国連ユニタールの「生計強化のためのポーランドのウクライナ人女性避難民向けデジタル・リスキリング」研修を受講し、地理情報システム(GIS)に焦点を当てたサブトラックを選択し、無事修了しました。
  • 彼女は将来キーウに戻り、ウクライナの再建に向けて自分のスキルを活かせる日を心待ちにしています。
  • 同研修は、日本政府の支援を受けて実施され、GISサブトラックは、日本のスタートアップ企業との提携のもとで行われました。
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20241114日、広島 - 2022224日の朝早く、Viktoria Podvoiskaさんはキーウに最初の爆弾が落ちるのを目撃しました。彼女はすぐに家族全員を集め、「戦争が始まった。私たちは去らなければならない」と伝えました。

Podvoiskaさんたちはまず地方に避難しましたが、到着直後にそこでは戦闘がさらに激しくなっていることを知りました。不安のなかで2週間を過ごした後、Podvoiskaさんは下の息子と、周りの母子を車に乗せてポーランドへ出発することにしました。彼女の夫と上の息子は残ることになりました。

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紛争状況が悪化するにつれ、Podvoiskaさんの夫は彼女に戻ってこないようにと告げました。ポーランドでの生活を始めることとなったPodvoiskaさんは、新しい住居や仕事、そして新しい国で生き残る方法を探し始めました。

インスピレーションを探し求めていたPodvoiskaさんは、国連ユニタールの「生計強化のためのポーランドのウクライナ人女性避難民向けデジタル・リスキリング」研修にたどり着きました。この研修は202310月に開始され、ポーランドに避難しているウクライナ人女性約500人を対象に、必要度の高いデジタルスキルの学びを提供し、彼女たちの生計向上を最終目標として実施されました。

Podvoiskaさんは既に技術の教育を受けており、この分野でいくらかの経験も持っていましたが、この研修で提供されるコースの多様さに感心しました。研修参加者は、データ分析、サイバーセキュリティ、地理情報システム(GIS)、デジタル・グラフィックスとウェブデザインの4つの学習トラックから1つを選ぶことができました。彼女は、日本のスタートアップ企業である株式会社Eukaryaとの提携で企画されたGISサブトラックに進むことにしました。

Podvoiskaさんは、この研修内容の幅広さと奥深さに驚くと同時に、この短期間でそれぞれの分野についてほとんど知識のない人々や、その道を歩み始めたばかりの人々に教えることが可能だとは想像もつきませんでした。

このコースはとても奥が深く、やる気さえあれば、どんなことでも学ぶことができると確信しました。私は初心者ではありませんでしたが、新しい製品を発見し、既存の知識をアップグレードし、業界がどのように発展しているかを知ることができました。 ―Viktoria Podvoiska、国連ユニタール研修修了生(ウクライナ)

自習型のオンライン研修を終えた参加者のうち40名は、ワルシャワで開催された最終フォーラムに参加する資格を得ました。このフォーラムでは、参加者が自分のスキルを披露し、将来の雇用主となりうる人々に出会う機会が提供されました。このフォーラムの参加者の一人として選ばれたPodvoiskaさんは、「再定住ネットワークにおける地理的要因の影響」と題する最終プロジェクトを発表しました。

彼女は、国連ユニタールの研修を通じて、新しいデータを入手し、それを処理し、ソフトウェア「QGIS」を使って、結果を地図上に表示する方法について知識を深めることができました。Podvoiskaさんは、現在ポーランドに住み、仕事を続けながらも、いつかまたキーウに戻り、学んだ知識と技術を祖国の再建に活かしたいという希望を持ち続けています。

 

英文記事は以下からご覧いただけます。

A Ukrainian Evacuee Finds Inspiration in UNITAR Digital Reskilling Programme | UNITAR

同研修プログラムの詳細

国連ユニタールの「生計強化のためのポーランドのウクライナ人女性避難民向けデジタル・リスキリング」は、日本政府との支援を受けて実施され、ウクライナ(Kyiv Mohyla Academy、Ukraine Catholic University)、ポーランド(ポーランド日本情報技術工科大学)、日本(スタートアップ企業株式会社Eukarya)の機関や企業、その他多くの組織や個人の熱い思いと尽力により、実現しました。

国連ユニタールとは

国連訓練調査研究所(ユニタール)は、1963年の設立以来、研修事業に特化した国連機関として、世界各国の人材開発を支えています。2023年には、54万人以上が受講。ジュネーブ本部のほか、ニューヨーク事務所、広島事務所、ボン事務所があり、様々なネットワークをもっています。2019年からは持続可能な繁栄局(Division for Prosperity)のもと、広島事務所と、ジュネーブ本部の財政・貿易ユニットの職員がともに、起業やリーダーシップ、貿易と金融、デジタル技術、軍縮などについてプログラムを展開しています。紛争後復興の過程にある国の人々への研修などには、原爆投下後から現在の平和都市に至る過程を一つの復興モデルとして講義に組み込むなど、平和で公正な社会の実現にも貢献しています。

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