- スリランカの外交官Prashanthi Krishnamoorthyさんは、国連ユニタール「核軍縮・不拡散広島研修」を通じて外交スキルの向上を図りました。
- スリランカは核兵器不拡散条約(NPT)を批准し、核兵器禁止条約(TPNW)にも加盟しています。
- 講義と現地視察を組み合わせて構成されたこの研修プログラムを通じて、Prashanthiさんは核軍縮への理解を深め、国際会議における交渉スキルを磨き、平和構築へ貢献する決意を新たにしました。
2025年10月23日、広島 - Prashanthi Krishnamoorthyさんは、スリランカ外務省南アジア局の副局長として、インド、モルディブ、パキスタンとの二国間関係業務を担当しています。彼女は、世界的な軍縮および不拡散の取り組みを支援・推進するスキルを高めるために、2023年度国連ユニタール「核軍縮・不拡散広島研修」に参加しました。
核軍縮を支持し続けるスリランカ
Prashanthiさんは、核軍縮および不拡散において主導的な役割を長年維持してきた国の代表です。スリランカは1968年に核兵器不拡散条約(NPT)に署名し、1978年に批准しました。また、核兵器禁止条約(TPNW)にも加盟し、2023年12月18日から法的拘束力を有しています。 インドとパキスタンという2つの核保有国に近接し、20年以上にわたる内戦を経験したスリランカは、核軍縮と不拡散の重要性を非常に深く理解しているとPrashanthiさんは語ります。
私たちは、戦争は決して良い結果をもたらさないことをよく知っています。仮に勝利したとしても、それは多大な犠牲を払ってもさほど得るものがなかった「ピュロスの勝利」であり、喜ぶことなどできません。
-Prashanthi Krishnamoorthy、外交官(スリランカ)、国連ユニタール研修修了生
講義と体験学習を織り交ぜた広島での学び
世界的に核の脅威が続く中、Prashanthiさんは、アジア太平洋地域13か国から政府関係者17名を迎え、2024年2月5日から12日の日程で実施された国連ユニタール「核軍縮・不拡散広島研修」に参加しました。このプログラムは、核軍縮に関する議論の現状について知識を強化し、地域レベルでの軍縮・不拡散の推進に必要な外交スキルを習得することを目的としています。
研修の一環として、参加者は原爆ドームおよび広島平和記念資料館を訪れました。熱線で溶けたメガネなどの原爆の悲惨さを物語る展示物や、被爆者の体験談に触れ、Prashanthiさんは胸が締め付けられる思いでした。それは、彼女自身が経験してきた長期にわたる紛争と重なり、肌で感じる体験学習と講義による理論学習とを織り交ぜた研修は、彼女の核軍縮への決意を一層強めるものでした。
Prashanthiさんにとって、広島は単なる歴史的悲劇の地ではなく、世界に向けて平和を発信する象徴的な存在です。
私たちは爆心地、つまり核爆発の中心地点に行きました。私は、ここが今や平和の発信地点となっていると感じました。
また、広島県および広島市が政府関係者向けの核軍縮研修に取り組んでいることにも感銘を受けたと語ります。彼女は、その姿勢は世界平和への強いメッセージであり、全ての人々が軍縮の取り組みに参加するよう促すものであると認識しました。
小さくても前向きな影響を与えること
Prashanthiさんの個人的な目標は、仕事と家庭生活のバランスを保ちながら「良き人間」であり続けることです。外交官としては、国家・個人の利益と国際的な責任とのバランスを取りながら、不安定な状況を冷静かつ思慮深く乗り越えることが求められます。
外交官の役割は、単に国益を代表することにとどまらず、たとえ小さなものであっても人々の生活や地球規模の課題に前向きな変化をもたらすことにあると彼女は言います。
あなたが国連事務総長でなくても、世界の中の一人として生きている限り、より良い方向への変化をもたらすことはできます。そして時には、あなたの小さな行動が誰かの世界を変えるかもしれません。
英文は以下よりご覧いただけます。
Sri Lankan Diplomat: Empathy and Resilience for Nuclear Disarmament and Non-Proliferation
※本記事の執筆には国連オンラインボランティアIsuruni Rathnayakaさんが協力しました。
国連ユニタールについて
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2024年には、世界中で約55万人が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。詳しくは国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所をご覧ください。