高木超さん

2022年6月・広島 - 持続可能な開発目標(SDGs)との関連付けを探すだけに終わらず、SDGsの視点を生かして自分たちの方針や政策をアップデートすることが求められている、と慶應義塾大学大学院特任助教で国連大学サステイナビリティ高等研究所研究員の高木超さんは語る。

2020年から国連ユニタール広島青少年大使プログラムの講師を務め、SDGsに関するアドバイザーとしても活躍する高木さん。2030年までに目標を達成するためのSDGs「行動の10年」に入り、日本でもかつてない機運を感じる一方、まだ「知る」段階を目指したプログラムが多いとも思う。

「やらなきゃいけない」と、縁遠いまま啓発や宣伝に取り入れようとしても、「ぼやっとしたタグ付け」にとどまってしまう。たとえばこれまで明朝体で書いていた書類をユニバーサルデザインに置き換えてみたらー。課題解決や改善の道筋はいたるところにある。知識を実践に結び付けるには、自分たちの文脈の中でとらえ直し体系化することと、検証・評価の仕組みを取り入れることが必要だという。

SDGsとの出合い

NYで受講したユニタールの研修プログラム中の様子

自治体や開発途上国のガバナンスに関心をもっており、学生時代にはSDGsの前身であるミレニアム開発目標(MDGs)に着目していた高木さん。2030アジェンダが採択された2015年、神奈川県大和市に勤めていた。MDGsとは異なり、すべてのステークホルダーの参加や自治体の役割について明記されていたことに魅力を感じた反面、なじみのない「SDGs」という横文字は、職員に「面倒くさい無駄なもの」と映ってしまうのではと懸念した。

ガバナンスの現場と国連との間で、理解の促進をはかる仲介者が必要だ、と思った。進学し、SDGsについて猛勉強する中で見つけたのが、国連ユニタールがアメリカのクレアモント大学院大学との共催で実施していたSDGsに関する研修プログラムだった。

同大学に留学し、このプログラムに参加。3か月間のオンラインでの事前学習、短期間の対面でのワークショップを経て、メンターとともに各々のテーマについて仕上げていく、半年間に渡る研修だった。一度聞いて「分かったつもり」になるのではなく、自身の中で価値や行動を形作るプロセスが重要なのだと実感した。

世界レベルの講師陣が語るモニタリングと評価への真剣さにも衝撃を受けた。日本では評価学自体にあまりなじみがなく、簡単な報告書で終わることも少なくないー。しっかりと人員や予算をとって、指標を設定してその計測、改善をしていくやり方に圧倒された。

「次世代」ではなく、自ら取りにいこう

青少年大使プログラムでの講義(2021年)

留学後、教育や研究に携わる傍ら、フリーランスの立場で地方自治体や教育機関にアドバイスをする活動なども実施してきた。ユニタール青少年大使プログラムでは、高校生へのウェビナーや、アプリで学ぶコースの開発を手掛けた。それぞれの目標に関する若者の行動を具体的に例示しながら、参加者の身近な生活に落とし込めるよう工夫を凝らしている。

みんなは次世代じゃなくて、もう今の世代なんだよ。

次を担うのではなく、今自分たちで取りに行くという気持ちを持ってほしいと願う。そのためには、成果を自分たちの中で閉ざすのではなく、世界に目を向けることも重要だ。

共通言語であるSDGsの性質を生かして、もう少し外と学び合う機会があるといいと思うんですよね。

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