- Teri Elbonさんは、マーシャル諸島共和国の外務・貿易省の多国間関係局次官補を務めています。
- 2024年、彼女は広島で開催された国連ユニタール「核軍縮・不拡散広島研修」事業 に参加し、核軍縮に対する理解を深め、交渉スキルを磨きました。
- マーシャル諸島は、1946年から1958年にかけて広範囲な核実験の場となり、特に1954年の水爆「ブラボー」の実験により壊滅的な被害を受けました。この歴史的背景は、同国の道義的および政治的立場を今もなお形作っています。Teriさんは、この経験を原動力に、核軍縮活動におけるマーシャル諸島の世界的なリーダーシップをさらに推進することを使命としています。
- Teriさんは、国連ユニタールの研修で得た知識とスキルを活用し、平和と正義、そして核兵器のない世界の実現に向けてマーシャル諸島のアドボカシーを強化していきたいと考えています。
キャッスル・ブラボー水爆実験から70年
1954年3月1日、米国はマーシャル諸島で「ブラボー」という水素爆弾の実験を行いました。この爆発は広島に投下された原爆の1,000倍の破壊力を持ち、米国の核実験史上最悪の放射能災害となりました。実験により広範囲に放射性物質が飛散し、人々は「即時的かつ長期的な健康被害と環境への影響をもたらす放射性灰」にさらされ、その影響は現在もなお続いています。
Teriさんは太平洋の島々で育つ中で、島嶼国が世界的課題に対していかに脆弱であり、国際協力がいかに不可欠であるかを常に意識してきました。特に彼女は、2015年パリ協定において1.5度目標を強く訴えたマーシャル諸島のリーダーシップに深い感銘を受けたといいます。
自分の国に直接影響するグローバルな対話に参加しなければならないと感じたのです。
現在、彼女は核軍縮・不拡散を含む多国間協議の中心で活動しています。
彼女の見解では、核保有国がその兵器を近代化する中で、世界的な軍縮の必要性はますます緊急を要しているといい、次のように述べています。
2024年にはビキニ環礁水爆実験から70年、そして2025年に広島、長崎への原爆投下から80年を迎え、核兵器が単なる過去の遺物ではないことを強く思い起こさせます。核軍縮は今こそ緊急に取り組むべき課題です。
-Teri Elbon、マーシャル諸島共和国、外務・貿易省多国間関係局次官補
国連ユニタール研修プログラム:アドボカシーのためのツール
Teriさんは、自身の外交能力を強化するため、2024年に広島で開催された国連ユニタール「核軍縮・不拡散広島研修」事業 に参加しました。2015年に開始したこのプログラムは、核軍縮交渉の最前線に立つアジア諸国の政府関係者を対象に、核軍縮交渉に関する理解を深め、地域における核軍縮・不拡散の議論を推進するための外交スキルを養成することを目的としています。
国連ユニタールでの研修は、Teriさんにとって変革的なものでした。彼女はこの研修を、非核国の外交官が核軍縮交渉の複雑さを深く理解するための画期的な機会だと表現しています。広島という被爆地での学びは、強い感情的な側面ももたらしました。被爆者の証言や記憶が刻まれた街での経験は、マーシャル諸島における核実験被害と重なり、核軍縮が単なる政策課題ではなく道義的責務であることを強く再認識させられた研修でした。国際的な行動の緊急性は、まぎれもなく明白になったのでした。
核軍縮の歩みは依然として遅いですが、この研修を通じて、私たちの立場を効果的に擁護し、マーシャル諸島が世界的な核軍縮の推進に積極的な役割を果たすためのツールを得ることができました。
-Teri Elbon、マーシャル諸島共和国、外務・貿易省多国間関係局次官補
Teri Elbonさんは、マーシャル諸島共和国政府の多国間関係を管理する小規模かつ献身的なチームを率いており、これはマーシャル諸島の積極的な国際関与を反映した野心的な任務です。資源の制約や地理的距離による課題はあるものの、彼女はそれらに創造力と戦略的焦点を持って取り組んでいます。そのため、核軍縮に関する専門知識をさらに深め、意志を共有する国々や組織との強固なパートナーシップを構築するために、国連ユニタールの研修プログラムのような機会を歓迎しています。彼女は、外交には創造的な問題解決が必要であると強調しています。
協働の呼びかけと今後の道筋
Teri Elbonさんは、自国の未来に直結するグローバルな政策形成に関わる立場にあることを、誇りと責任をもって受け止めています。外交官志望者や同僚の外交官たちには、常に学び続けることの重要性を強調しています。グローバルな変革を達成する上での団結と協働の力を強調し、問題の複雑さに臆することなく取り組むよう励ましています。
核軍縮への道は長く、課題も多いですが、外交とは現場に身を置き、自国の立場を理解し、平和と軍縮という共通の目標に向かって協働することです。
-Teri Elbon、マーシャル諸島共和国、外務・貿易省多国間関係局次官補
マーシャル諸島の国家核委員会は、国の核の歴史に関する市民への啓発活動を行い、その歴史を学校のカリキュラムにも取り入れるために日々活動しています。また、地元のNGOも核問題に関する認識向上や、国内外での政策提言を積極的に行っています。
将来的には、Teri Elbonさんは人工知能(AI)や宇宙開発など新たな技術が核政策に及ぼす影響について、マーシャル諸島の立場についての評価を行う予定です。長期的には、マーシャル諸島が核軍縮の最前線に立ち、人類の未来が核兵器によって脅かされない世界の実現を目指していきたいと考えています。
本記事の執筆には国連オンラインボランティアAisha Naluwuさんが協力しました。
国連ユニタール「核軍縮・不拡散(NDNP)広島研修」事業 について
2015年以降、国連ユニタール広島事務所は広島県と広島市の支援を受けて、アジア太平洋地域の外交官を対象とした「核軍縮・不拡散広島研修」事業を実施しており、核軍縮に向けた国際的な議論を促進する重要な場となっています。
国連ユニタールについて
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2024年には、世界中で約55万人が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。2003年に設立された国連ユニタール広島事務所は、平和と復興の象徴である広島を拠点に、平和構築や核軍縮、紛争や災害からの復興に関する国際的な研修を展開し、世界の持続可能な平和と繁栄の実現に貢献しています。https://www.unitar.org/ja/hiroshima