- ティム・コーリー(Tim Caughley)氏は、国連軍縮研究所(UNIDIR)の非常駐上級研究員であり、2015年からアジア各国の外交官や軍事顧問を対象に、国連訓練調査研究所(ユニタール)の核軍縮・不拡散広島研修事業の研修顧問・講師を担っています。
- 核軍縮に関する研修に相応しい歴史的背景を持つ広島で実施されるこの研修事業は、外交官にとって特別な機会を提供します。
- 核戦争は今後20年間、脅威として残り続けることが想定され、コーリー氏は、外交官が核軍縮と不拡散を実現するためのスキルを習得する必要があることを強調しています。
外交官が立ち返る基準として
長年にわたり核軍縮分野に携わってきたコーリー氏は、国連ユニタールの同研修は、外交官が知識や意見を交換し学ぶ場として非常に重要な価値があると言います。この研修は、様々な任務に携わる政府職員を集め、課題への取り組みや交渉力を培う演習を通じて、新たに学んだ知識やスキルを実践する機会を与えます。参加者同士の交流を通じ、核問題に対する異なる視点を学び合い、それをもとに核軍縮会議での交渉をより効果的に行う能力を身につけます。
コーリー氏は、この研修の醍醐味は、参加者が多くの情報や資料に接する機会があることだと述べます。研修を受けた外交官たちは、核軍縮のための国際的枠組みや会議のしくみについての深い理解を得るだけでなく、将来的にも外交や交渉の場で必要となるであろう豊富な情報を得ることができます。
研修拠点としての広島
コーリー氏は、これまでの国連ユニタールの同研修を振り返り、広島を拠点にした研修の意義を強調しています。
この研修は参加者にとって非常に貴重な経験となります。なぜなら、彼らは自らの目で見て、[原子]爆弾の脅威を体感し考えることができるからです。―ティム・コーリー、国連軍縮研究所(UNIDIR)非常駐上級研究員、国連ユニタール研修顧問
参加者たちは、原爆の被害者である被爆者と会い、個人の体験をもとにした核戦争がもたらす被爆の実相を直接聞く機会があります。コーリー氏にとっても、被爆者との数々の印象的な対話は、広島での経験の中で最も記憶に残るものとなっています。
また、国連ユニタール広島事務所と原爆ドームが道を挟んで向かい合っていることについても意義深く感じています。この原爆ドームは、核兵器の壊滅的な実相を目の当たりにさせるものです。広島はまた希望の象徴でもあり、その歴史的および文化的な重要性が街中で感じられます。コーリー氏は、広島にいること自体が研修を際立たせる体験だと考えています。
国連ユニタール広島事務所の未来
国連ユニタール広島事務所の未来
国連ユニタール広島事務所が20周年を迎える中、コーリー氏は核軍縮の未来について期待を寄せています。彼は、核軍縮が近い将来、必要不可欠なものになると予想しています。その背景には、現在世界を取り巻く政治状況があります。
核軍縮の分野で私たちの誰もが注視しているのは、ウクライナ情勢の動向です。同紛争が核軍縮の緊急性を高めていることは明らかです。―ティム・コーリー、国連軍縮研究所(UNIDIR)非常駐上級研究員、国連ユニタール研修顧問
コーリー氏は、国連ユニタールが世界中に核軍縮と広島の体験についての理解を広め続けることを期待しています。核戦争は今後20年間、依然として大きな脅威であり、コーリー氏は平和な世界の実現のために核軍縮と不拡散を推進する外交官を育成する重要性を強調しています。
核軍縮・不拡散広島研修については、以下よりご覧いただけます。
英文は以下よりご覧いただけます。
The Power of Training Diplomats on Nuclear Disarmament from Hiroshima | UNITAR
国連ユニタールについて
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、1963年の設立以来、研修事業に特化した国連機関として、世界各国の人材開発を支えています。2023年には、54万人以上が受講。ジュネーブ本部のほか、ニューヨーク事務所、広島事務所、ボン事務所があり、様々なネットワークをもっています。2019年からは持続可能な繁栄局(Division for Prosperity)のもと、広島事務所と、ジュネーブ本部の財政・貿易ユニットの職員がともに、起業やリーダーシップ、貿易と金融、デジタル技術、軍縮などについてプログラムを展開しています。紛争後復興の過程にある国の人々への研修などには、原爆投下後から現在の平和都市に至る過程を一つの復興モデルとして講義に組み込むなど、平和で公正な社会の実現にも貢献しています。
国連ボランティアPuca Carloさんのご協力のもと記事化されました。