- カンボジアの外交官Soksamnang Novさんは、2024年2月に開催された国連ユニタール「核軍縮・不拡散広島研修」に参加しました。
- 彼は、外交には、交渉など日々の課題に対処するための情熱とコミットメント、そして努力が必要だと考えています。
- 広島で核軍縮・不拡散について学ぶことができたのは有意義だったと感じています。
- カンボジアは核軍縮の立場を維持しており、核拡散防止条約(NPT)と核兵器禁止条約(TPNW)の締約国となっています。
2024年8月16日 広島 - 世界大戦の脅威は決して過ぎ去ったわけではなく、依然として核を保有している国があります。今の世代が未来の世代に責任ある立場として、核兵器のない世界の実現に向けて交渉する若手外交官の役割は、これまで以上に重要になっています。
そのような外交官の一人が、カンボジアのSoksamnang “Sam” Novさんです。現在、ニューヨークの国連カンボジア代表部一等書記官を務めています。 核兵器不拡散条約(NPT)、核兵器禁止条約(TPNW)などを含む第一委員会関連の業務に従事しています。外交官としてのスキルをさらに高めるため、2024年2月に開催された国連ユニタール「「核軍縮・不拡散(NDNP)広島研修」事業 に参加しました。
私は自分の仕事が好きで、好きなことをしています。
— Soksamnang Nov、 外交官(カンボジア)、国連ユニタール研修修了生
百聞は一見に如かず:国連ユニタールと共に広島で学ぶ
Samさんは、自国のカンボジア政府により、2024年の国連ユニタール「核軍縮・不拡散(NDNP)広島研修」 の参加者として選ばれました。このプログラムでは、核軍縮交渉の最前線で活躍する政府関係者18名が参加者はアジアおよび太平洋地域の13か国から広島に集まりました。1週間にわたる研修では、NPTおよびTPNWとその交渉プロセス、さらに国際安全保障秩序の動向について学びました。
Samさんは子どもの頃、広島に投下された「リトルボーイ」の話を聞いたことを覚えています。好奇心旺盛な彼は、それについて調べ、恐怖をもたらした核爆弾であることを知りました。世界の指導者たちが完全な軍縮に向けて努力しているのを目の当たりにし、その目標がまだ遠いことを認識したSamさんは、外交官になることを志すようになりました。
核軍縮と核不拡散について学ぶために広島に滞在したことは、Samさんにとって特別な経験でした。研修室の窓から原爆ドームを眺め、核兵器が現実に与える影響を肌で感じたことは、強烈な印象を与えるものだったといいます。Samさんは、平和公園でのバーチャルリアリティ(VR)ツアーについても語り、1945年当時の広島の様子や、広島の人々によって街が再建された様子を体験することができたと述べました。
Samさんにとってもうひとつの忘れられない体験は、お好み焼き教室でした。お好み焼きは、千切りキャベツ、魚介類、肉類を使った日本で広く親しまれているホットケーキのような食べ物です。その起源は、戦後の食糧援助物資をうまく使って料理する方法として始まり、人々が手に入る食材を加えることで発展してきました。Samさんは、お好み焼きがいかに日本人の情熱を反映しているかを理解できたといいます。
お好み焼きは、広島の原爆の後、ゼロから再建した日本人の生き残るための本能そのものなのです。
共通の議題を通じた結束
Samさんがこのプログラムから学んだ大きな教訓の一つは、より良い意思決定を行うためには、共通の議題を通じて結束を深めることが重要だということです。自国の立場のために交渉することは外交の基本であり、外交官は個人的なコミットメント、自国を代表する責任、そして地域や国際間の力学との間で微妙なバランスを見つけなければなりません。とても大きなプレッシャーがある、とSamさんは言います。
それゆえ、Samさんにとって、広島という地で他国の同僚と一緒にいること、そしてお互いに気軽に話し、個人的な見解を共有できる場を持つことは有意義なことでした。このような人間関係や良好なコミュニケーションが、各国が協力して問題を解決し、共通の目標を達成する上で極めて重要だとSamさんは考えています。
私たちは外交官として、さらに積極的に、国際平和と安全保障に貢献するという強い志をを持っています。
Samさんはまた、参加者18名ののうち10名が女性であったことを高く評価しています。これは、通常男性が多い分野では珍しいことです。彼は、カンボジアでも軍縮分野に参入する女性が増えていることは、大きな進展だと考えています。外交には献身と努力と情熱が必要であると信じています。そして、核兵器のない世界を実現するために、誰もが役割を果たすことができると確信しています。
誰もが影響を与えることができます。あなたも影響を与えることができるし、私たちも影響を与えることができます。
英文は以下からご覧いただけます。
Passion Inspires Young Cambodian Diplomat to Stand For A Nuclear-Weapons-Free World | UNITAR
カンボジアは核軍縮の立場を維持し、NPTおよびTPNWに加盟しています。同国は2021年にTPNWを批准しました。
本記事の執筆には国連オンラインボランティアVarun Yadavさんが協力しました。
国連ユニタールについて
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2024年には、世界中で約55万人が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。2003年に設立された国連ユニタール広島事務所は、平和と復興の象徴である広島を拠点に、平和構築や核軍縮、紛争や災害からの復興に関する国際的な研修を展開し、世界の持続可能な平和と繁栄の実現に貢献しています。https://www.unitar.org/ja/hiroshima