• メキシコ出身のFranco Escobarさんは、博士課程の学生であり、広島平和研究所の研究員として、核軍縮への若者の参加を活性化させることを目指しています。
  • 2023年、Escobarさんは国連軍縮部主催の「ユース非核リーダー基金(YLF)」の一環として、国連ユニタールが実施協力したYLFの日本スタディツアーに参加しました。
  • Escobarさんは、核軍縮に関する初の若者のアーカイブを作成し、若い活動家の経験などを記録・収集し、未来の歴史家、活動家、そして一般市民のための資料として活用できるようにすることを目指しています。
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2024年11月3日、広島 - メキシコ出身の広島平和研究所の研究員Franco Escobarさん(博士課程)は、核軍縮への若者の関わりを記録する使命を持っています。

彼は、冷戦が終結して以来、多くの人々が核戦争はもはや重要な問題ではない、と考えていると認識しています。Lawrence Wittner教授などの歴史学者の研究によれば、1960年代や1980年代の活動の活気と比べると、21世紀に入ってから、若者の平和団体への参加は激減しています。この傾向は、若者の間だけでなく、社会全体での意識が低下していることを示しており、核紛争のリスクの高まりや軍備管理条約の弱体化と鮮明な対比を成しています。

Escobarさんは、若者の参加が減少しているのは、現代の若者たちがより喫緊の課題に追われているからではないか、と指摘します。「不安定な世代」と称されることもあるように、現代の若者たちは、両親や祖父母の世代以上に職を見つけることに苦労しています。多額の負債を負うことなく教育を修了することも難しくなっています。今日、私たちは気候変動やAIのような急速に進化するテクノロジーの不確実性に脅かされる世界に直面しています。そのような中、多くの国で、若者のうつ病や自殺願望の割合も増加しているのです。

若者の参画を取り戻す

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核軍縮は単に私たちに関連がある課題なのではなく、喫緊の課題であり、草の根レベルで[若者の]大規模な活動を興すことが急務なのです。―Franco Escobar、国連ユニタール実施協力研修修了生

これらのことから、核軍縮を単に関連性のある問題として扱うのではなく、緊急の課題として若者の心に響かせることが極めて重要です。「核兵器使用の脅威は現代の問題であることを認識しなければなりません」とEscobarさんは述べています。その意味で、核兵器使用のリスクが高まっている今日の世界的な紛争は、その切迫感にも火をつける機会を提供している、と彼は考えています。

Escobarさんは、差し迫った状況の中でもポジティブな傾向もあると言います。若者が平和活動に割いている時間と労力の価値が認められつつあり、若者の貢献に対して報酬を提供する活動団体が増え始めているのです。平和活動では従来、若者がボランティアとして時間を提供することが期待されていましたが、現在では北米や日本でも、例えば参加や学生サークルの創設や維持に対して報酬を支払う組織も出てきています。

彼は、若者の参加を促進する他の方法として、大戦略(グランド・ストラテジー)や拡大抑止力、最小抑止力といった概念などの専門的になりがちな情報を、より馴染みのある表現で提示することを挙げています。

若者は励ましや情報だけでなく、資源や資金を必要としています。―Franco Escobar、国連ユニタール実施協力研修修了生

世界のユースとのつながり:ユース非核リーダー基金(YLF)を通して

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2023年、Escobarさんは「ユース非核リーダー基金(YLF)」に参加することになりました。日本政府が資金を提供し、国連軍縮部(UNODA)が運営するこの事業は、核保有国と非保有国の双方からの次世代のリーダーを対象に、核軍縮に貢献するための能力を高めることを目的としています。この事業は2023年に開始され、2030年まで4期の研修ラウンドが計画されています。

核の脅威のない世界を実現するために、私たちは対話と協力を優先しなければなりません。―Franco Escobar、国連ユニタール実施協力研修修了生

Escobarさんは、202486日に開催された国連ユニタール主催のパネルディスカッション「世界のリーダーと若者の対話 核兵器なき世界への道 広島、そして世界の若者へつなぐ」に登壇者として参加しました。

また、8月末に国連ユニタールの実施協力の下で開催された「ユース非核リーダー基金(YLF)」の広島・長崎スタディツアーにも、参加者49名のうちの一人として参加しました。

このスタディツアーでは、長崎の被爆者である三瀬誠一郎氏、そして広島の被爆者である小倉佳子氏らからの講話を聴き、直接交流する機会を得ました。被爆者の高齢化に伴い、彼ら彼女らの力強い体験談や核軍縮の訴えは、後世に語り継がれなければならなりません。そのため、被爆者の証言と行動への訴えを理解することは、「ユース非核リーダー基金」の育成事業において重要な位置を占めています。

彼がこの経験から得た洞察のひとつは、若者が直接会って交流することは、なによりも力があるということです。Escobarさんは、オンラインでは失われがちな深いつながりや共通理解が、直接の交流の中で育まれていることに気づきました。異なる国から来た若者と出会うことで、気持ちが高まり、国境を越えたコミュニティ意識が生まれます。この実感が、軍縮の取り組みにおいて若者の声を高めるためのネットワークを築いていく原動力となっています。

核軍縮に関する若者のアーカイブの作成

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Escobarさんは広島の研究員として、核軍縮に関する初の若者のアーカイブを作成中です。このアーカイブは、彼が「軍縮の知られざる英雄」と呼ぶ、影に隠れがちな若者たちのオーラル・ヒストリー(口述歴史)の保管庫であり、未来の歴史家、活動家、そして一般市民のための資料として活用できるようにすることを目指しています。

このアーカイブを通して、彼は世界中の若者の多様なストーリーを紹介し、核兵器なき世界を目指す彼らの動機、挑戦、そして成功に焦点を当てたいと考えています。若者の声を聞き、称えることができる場を作ることで、彼は核軍縮運動における若者のアクティビズムの新しい波を生み出したいと考えています。

核軍縮は単なる理想ではなく、世界の平和と安定のために必要なことなのです。―Franco Escobar、国連ユニタール実施協力研修修了生

英文記事は以下からご覧いただけます。

Getting Youth Involved Again in Nuclear Disarmament | UNITAR

国連ユニタールについて

国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2023年には、世界中で54万人以上が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。詳しくはウェブサイトから(国連訓練調査研究所(ユニタール) 広島事務所 )。

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