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2024年8月30日、広島―世界の若きリーダーたちは、2024829日に広島で開催されたユース国際会議で、核兵器なき平和な未来を実現するために団結を呼びかけました。

この会議は、日本政府の支援を受け国連軍縮部が実施する「ユース非核リーダー基金(YLF)」事業の広島・長崎スタディツアーの最終日に開催されました。

国連訓練調査研究所(ユニタール)は、国連軍縮部 (UNODAのパートナーとして、初開催となるスタディツアーをサポートしました。このツアーには、世界37カ国から若者49人が参加し、核兵器のない世界の実現のために必要な知識を深め、具体的な行動計画について議論をするため被爆地に集結しました。

このスタディツアーは、参加者が核兵器使用がもたらす脅威や破滅的な被爆の実相について被爆地で理解を深め、核兵器のない世界を実現するために、未来を担う若者たちのネットワークを構築することを目的としています。参加者は平和公園や原爆資料館を訪問し、被爆者や地元で核軍縮に取り組む若者たちと対話を通じて交流を深めました。

スタディツアーの最終日である829日に広島で開催された「ユース国際会議 核兵器なき世界の実現に向けて」には、スタディツアーの参加者に加え、国連ユニタール広島青少年大使プログラムとヒロシマピースボランティアの地元広島の若者も参加しました。会議では、参加者は核兵器がもたらす人道的な被害や脅威を訴え、核軍縮・不拡散を促進し、核兵器なき世界の実現に向けた行動計画を明記したユース宣言を発表しました。

長崎での学び

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同スタディツアーは826日、長崎での開会式から始まりました。2022年に「ユース非核リーダー基金(YLF)」の創設を発表した岸田文雄首相は、ビデオメッセージで参加者を歓迎し、来年には広島と長崎への原爆投下から80年の節目を迎える中、被爆の実相を世界に伝える上で、若い世代の役割が一層大きくなっていることを強調しました。

「幅広い国々からお集まりいただいた世界の未来を担う皆様にとって、この度のスタディツアーが核兵器のない世界に向けたグローバルなネットワークを構築し、被爆の実相を世界に向けてしっかりと発信していく契機となることを期待しております」と岸田首相は述べました。

開会式では、大石賢吾長崎県知事、鈴木史朗長崎市長によるご挨拶もいただき、参加者の歓迎がありました。その後、参加者は長崎平和公園と長崎原爆資料館を訪問、被爆者との対話、地元長崎の若者との交流を行いました。

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私たちは長崎原爆資料館を訪れ、多くのことを学びました。最も印象に残った展示のひとつは、原爆投下時の時刻そのものを伝える112分に止まった壁掛け時計でした。この原爆資料館は、核兵器がもたらす破滅的な結末の生きた縮図であり、誰もが訪れ、学ぶべき場所であると思います。”―スハイブ・サルマン、インド国籍

広島での学び

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828日、長崎視察を終えた参加者は、広島での歓迎式で湯﨑英彦広島県知事と松井一實広島市長の歓迎を受けました。また、広島平和記念公園や広島平和記念資料館を訪問し、広島の被爆者から直接お話を聞く機会も設けられました。

829日には、2024年度国連ユニタール広島青少年大使プログラムとヒロシマピースボランティア事業に参加する若者と平和教育や核軍縮を促進するための市民社会の役割などに関して意見を交わし、国境を越えたネットワークを広げながら、自身の意見や経験を話し合い、ユース宣言の行動計画の集約に取り組みました。

この被爆地での貴重な経験は、私たちが今後、長期的に核軍縮を推進するためのアドボカシー活動に実施していく中で、大きな影響を与えることとなるでしょう。広島の献身的で力強い復興の歴史を目の当たりにする機会に恵まれ、私たちは本当に身の引き締まる思いです。私たちの国の多くの若者にとって、このような機会に恵まれることはめったにありません。ここで私たちが経験したことや耳にしたことは、単なる個人的な思い出としてとどめるだけでなく、各自がそれぞれの国、地域社会にもちかえり、そこで(被爆の実相について)伝えるために重要なツールとなるでしょう。マシャール・シャフナワズ、パキスタン国籍

ユース国際会議

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829日のユース国際会議では、核兵器のない世界実現のために具体的な行動計画を示したユース宣言として、DeclarACTION(行動宣言)を発表しました。同宣言は、「市民参画と被爆者伝承」、「政治・外交プロセスへの若者の参加」、「研究と学術」の3つの柱から構成され、それぞれの項目に具体的な提言が提示されています。同宣言を通じて作成に携わったYLF事業参加者と被爆地の若者は、核兵器の脅威におびえることなく、そしてその甚大な被害が二度と繰り返されることがない平和な世界、未来の実現を目指し、全力で取り組んでいくことを誓っています。

ユース国際会議の冒頭では、石原宏高内閣総理大臣補佐官(核軍縮・不拡散問題担当)がビデオメッセージを通じて、このスタディツアーで自らが見て感じたことを周りの人々にさらに発信し伝えていくこと、そして、ここで培ったグローバルなネットワークを大切にし、核兵器のない世界に向けた取り組みを継続してほしい、と参加者を励ましました。

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スタディツアーの終わりには、中満泉国際連合事務次長・軍縮担当上級代表より、参加者のプログラム修了を祝うビデオメッセージもありました。

「核兵器を廃絶し、 より安心・安全で平和な世界を築くという共通の目標に向けて、 皆さんが考える創造的で革新的な取り組みの実施に協力していきたいと願っています」と中満泉国際連合事務次長は述べ、参加した若者たちにとって、同研修は修了したものの、「国際的な安全保障、国家の安全保障、そして人間の安全保障に向けた取り組みはここから新たに始まっている」ことを強調しました。

広島・長崎の訪問は、私に大きな変化をもたらしました。この数日間、平和公園に立ち、被爆者―原爆投下時からの記憶が人生に永遠に刻まれた生存者—のお話を聞き、胸が張り裂けそうになると同時に心を深く揺さぶられました。想像を絶する苦しみを体験してきた被爆者の勇敢な姿や言葉から、軍縮とは単なる政策的な議論ではなく、真に人道的観点から必要であることを再確認させていただきました。” ―シュクルゲルディ・ミラドフ、トルクメニスタン国籍、ユース国際会議にて

ユニタールはパートナーとの協力のもと、広島、長崎、そして世界中の若者や未来のリーダーたちが国境を越えて互いに学び合い、平和について語り合い、ネットワークを構築する機会を創り、平和で豊かで人道的な世界の実現に向けて支援を続けていきます。

*同事業は、国連軍縮部(UNODA)の運営により実施され、弊機関は同スタディツアーの実施協力を行いました。

英文記事はこちらからご覧いただけます。

ユニタールについて

国連訓練調査研究所(ユニタール)は、1963年の設立以来、研修事業に特化した国連機関として、世界各国の人材開発を支えています。2023年には、400,000以上の人が受講。ジュネーブ本部のほか、ニューヨーク事務所、広島事務所、ボン事務所があり、様々なネットワークをもっています。2019年からは持続可能な繁栄局(Division for Prosperity)のもと、広島事務所と、ジュネーブ本部の財政・貿易ユニットの職員がともに、起業やリーダーシップ、貿易と金融、デジタル技術、軍縮などについてプログラムを展開しています。紛争後復興の過程にある国の人々への研修などには、原爆投下後から現在の平和都市に至る過程を一つの復興モデルとして講義に組み込むなど、平和で公正な社会の実現にも貢献しています。

日本での公的な支援組織として、2019年に一般社団法人「国連ユニタール協会」が設立され、国連ユニタールの広報・啓発活動に協力しています。同法人では、「スポーツと平和」、「SDGsと教育」、「女性のエンパワーメント」を柱とする事業も展開しています。

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