2020年度国連ユニタール青少年大使・大村桜子さん

「勇気を持って一歩を踏み出せば、視野が『世界』に広がった。絶対に挑戦する価値がある」と語るのは、2020年度の国連ユニタール青少年大使として活躍した武田高校2年の大村桜子(おおむら・さくら)さん。

国連ユニタール広島事務所/持続可能な繁栄局と国連ユニタール協会が実施する青少年大使プログラムは、次代の国際社会を担う若者を育成しようと、広島県内の高校生に世界の今にふれる機会を提供している。今年度は新型コロナの影響でオンラインでの開催となり、選ばれた大使24人の1人が大村さんだ。

大村さんを応募に導いたのも、新型コロナだった。休校に続き、学校のプログラムで夏に予定されていた短期留学も中止に。何かしたいと思っていた時、先生の紹介で募集を知った。

7月から3カ月間、各界の専門家を招いたウェビナーやアプリで学びを深め、イラクの研修生とオンラインで交流するなど忙しい日々を送った。グループに分かれ、それぞれ選んだSDGsの目標について研究発表もした。

フラガールズ甲子園オンラインフェスティバルに参加した大村さん(2020年、広島市)

選んだゴールは16・平和と公正をすべての人に。大村さんが「平和」を意識するルーツは2つある。幼い頃から習っているフラダンスを通じて学んだ平和と寛容の心。そして、被爆地広島での豊かな平和教育と、直に聞いた被爆者の強い訴えだ。

それでも、ワークショップにより、各地での残虐な暴力を知らずに過ごしてきたことを痛感した。知らなければ行動のチャンスをつかむことさえできないー。グループでの最終発表では、ともに学び、行動することを呼び掛けた。

「広島にいるからこそ、これだけ平和について考える機会を持つことができてきた。いざ自分が伝えようと思ったとき、私たちなりの発信ができる機会にも材料にも恵まれているということだと思う」と意欲を見せる。プログラム終了後も大使たちは活動や交流を続けており、国際的なフォーラムへの参加や、ポスター展の開催に取り組んだ人も。髙野純弥さんを中心に、SDGsを促進するホームページを立ち上げ、声を上げ続けようともしている。

被爆建物の旧日本銀行広島支店を「広島学」の授業で訪れた(2019年、広島市)

2010年から続くこのプログラムの卒業生は、約100名に上る。様々な分野でSDGsにかかわろうとする元大使も多く、進学先や海外でも、活躍の場を広げている。今年度からは、より年齢の近い身近な先輩に率直な意見や体験談を求められるよう、メンター制度も導入した。

メンターの行動力や的確なアドバイス。近い環境にある同世代の大使たちの国際貢献への強い意欲や豊かなアイデア。講師の行動と経験に裏打ちされた力強い言葉。ただ圧倒された。「すべてが刺激的で、自分がいかに何も知らず、視野が狭かったのかを思い知らされた」と振り返る。「突っ込んだ話し合いをする中で、人の数だけ理想があることも分かった。勇気をもって踏み出せば、選択肢はいくらでもあることが実感できた」と自らの成長を語る。

大使としての活動を通じて、漠然と考えていた将来の進路が明確になったという。「教育の質が低いと人材も育たない。ただ特定の分野の教師になる、ということではなく、困っている人が必要としている知識や心を自分も学びながら伝えていけるようなプロフェッショナルな教育者になりたいと思うようになった」。進学して教育学を専攻することを決めた。

ひたむきさを見せる反面、はにかむように言葉を丁寧に考えながら話す。「本当は自信がなかった。人見知りだし、英語力もSDGsについての知識も足りない」とも明かす。だからこそ、かつての自分のように挑戦をためらっている人に言いたい。「勇気を持つこと。得られるものは大きい。自信がなくてもサポートしてくれるし、そこから学び、動きはじめればいいのだと思う」。

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