• 日本の高校生である高井杏菜さんは、途上国における教育格差の是正に取り組んでいます。
  • 彼女は2021年の「国連ユニタール青少年大使・アジア太平洋プログラム」に参加しました。このプログラムはアジア太平洋地域の高校生を対象としています。
  • 杏菜さんは、本プログラムを通じて教育におけるテクノロジーの重要性を学びました。
  • 杏菜さんは自らの取り組みを通じて、カンボジアの学校に教材を配布し、さらに日本の学校で使われなくなったiPadを寄贈するなど、循環型の支援システムを構築しています。
UNITAR

2025年11月10日、広島 — 東京出身の高校生、高井杏菜さん(17歳)は、教育への情熱と、世界を少しでも良くしたいという強い思いを胸に活動する、若きチェンジメーカーです。


彼女は「For Every Child an Education」という学生団体を設立し、その一環としてカンボジアの小学生(46年生)の学ぶ意欲と自信を高め、テクノロジーへのアクセスを提供することを目的とした取り組みを始めました。

この活動を通じて、日本の学校で不要になったiPadを集め、カンボジアの学校に寄贈しています。iPadの再利用により、技術格差を埋め、カンボジアの学生たちにインタラクティブで魅力的な学習ツールを提供することを目指します。また、現地のNGOと提携して、カンボジアの教育カリキュラムに沿った英語の教材を作成し、学校に届けるという取り組みを行っています。

教育格差を埋める

杏菜さんがカンボジアと関わるきっかけとなったのは、2019年に訪れた際の現地での体験でした。彼女は学校から選ばれたメンバーの一人としてカンボジアを訪れました。現地では、カンポンスプー州の小学校で英語を教える中で、学校のインフラ、教室や教材の不足、インターネット環境整備の遅れといった現実を目の当たりにしました。この時の経験が、現地の子どもたちが直面している教育格差という問題に取り組むきっかになったといいます。

カンボジアでの経験は、私の視野を大きく広げ、発展途上国について多くのことを気づかせてくれました。私が教えていた現地の学校の環境は、日本とは全く違っていました。

―高井杏菜、For Every Child an Education 創設者/国連ユニタール研修修了生、日本

困難を乗り越えて

活動を進める中で、多くの困難に直面しました。資金調達やプロジェクトへの信頼の獲得など、高井さんはさまざまな壁に行き詰まりました。「まだ若い」「経験が足りない」と言われることもしばしばありました。

それでも彼女は、人々の心に訴えるストーリーテリングや動画制作、その他の戦略を用いて根気強く活動への支援を呼びかけました。
逆境にあっても目標を達成しようとする彼女の心を支えたのは、「あなたの頭から一時たりとも離れないことがあるなら、決して諦めてはいけない」というウィンストン・チャーチルの言葉でした。

国連ユニタールプログラムとの出会い

2021年、杏菜さんは学校の先生の勧めで「国連ユニタール青少年大使・アジア太平洋プログラム」を知りました。プログラムが自身の価値観に共鳴していると感じ、この機会を逃がさず応募しました。

2021年に開始された同プログラムは、香港やその他のアジア太平洋諸国の高校生が新型コロナウイルスのパンデミックから、世界をより良く、より環境に優しく、より強く立て直すことに積極的に携わる機会を提供することを目的としています。

10週間にわたり、地域および国際的な専門家から、世界の復興に影響を与える最も重要な課題について学びます。参加者は、若者主導のリーダーシップ、国連と持続可能な開発目標(SDGs)やデジタル技術とイノベーション、若者の雇用、持続可能な開発のための若者の起業活動、そして社会的および気候正義について議論します。

杏菜さんは、国連ユニタールのプログラムは「ゲームチェンジャー」だったと言います。彼女はカンボジアの子どもたちがテクノロジーにアクセスできるよう支援する方法に悩んでいましたが、このプログラムは彼女の活動の影響範囲を拡大し、コミュニティの参加を促進し、教育支援活動を発展させる新たな視点を与えてくれました。

このプログラムは、テクノロジーとデジタルの世界の重要性について多くのことを教えてくれました。そして、自分の活動は持続的なものとなるだろうと思っています。

―高井杏菜、For Every Child an Education 創設者/国連ユニタール研修修了生、日本

未来への夢

Photo by YuriArcursPeopleimages via Envato Elements

杏菜さんは、教育に境界がなく、すべての子どもが成長し成功する機会を得られる世界を描いています。今後、2028年までに約800台のiPadを集め、2025年末までに3,000冊以上の英語教材を配布することを目標としています。

将来は国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)で働き、教育政策に携わりたいと考えています。

彼女は若者たちに、地域社会に変化をもたらしたいと思ったら躊躇なく行動するよう呼びかけます。最初から大きなことを始める必要はないと言います。

自分の声の力を信じてください。世界に80億人もの人々がいる中の一人に過ぎなくても、私たちの声と行動には力があり、変化をもたらすことができます。私たち一人ひとりが一歩踏み出せば、世界を変えることができるのです。

―高井杏菜、For Every Child an Education 創設者/国連ユニタール研修修了生、日本

英文記事はこちらからご覧いただけます。

“Youths Can Make Impact”: Japanese Teenager’s Mission to Bridge Educational Divide in Cambodia | UNITAR

国連ユニタールについて

国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2024年には、世界中で約55万人が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。2003年に設立された国連ユニタール広島事務所は、平和と復興の象徴である広島を拠点に、平和構築や核軍縮、紛争や災害からの復興に関する国際的な研修を展開し、世界の持続可能な平和と繁栄の実現に貢献しています。https://unitar.org/ja/hiroshima

本記事の執筆には国連オンラインボランティアSamuel Akpanさんが協力しました。

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