- ヨルダンの起業家Luay Hussein Moh'dさんは、患者と薬局を結びつけ、薬を入手するプロセスを簡素化するアプリを開発しています。
- 彼は国連ユニタールの「グレート・アイデア・スペース 2022:公衆衛生とCOVID-19からの復興のための起業家精神育成」研修事業に参加し、基本的なスキルを身につけ、プロジェクトを成功させるための知見を得ました。
ヨルダンはアラブ諸国における重要な技術拠点
ヨルダンは「中東のシリコンバレー」として知られ、アラブ諸国における重要な技術拠点としての地位を確立しています。この恵まれた環境は、イノベーションを活用してさまざまな課題解決に取り組む起業家を数多く育んでおり、特に医療制度の分野でその取り組みが顕著です。
Luay Hussein Moh’dさんが注目したヨルダンの医療制度における課題のひとつは、患者が医師の診察を受けた後、特定の医薬品を入手するまでの流れの煩雑性です。
受診直後の患者の皆さんは、大抵とても疲れています。(しかし)、薬を探すために薬局を転々とするのです。―Luay Hussein Moh’d、国連ユニタール研修修了生(ヨルダン)
この問題を解決するため、Luay Hussein Moh’dさんは患者と薬局をつなぐアプリを開発し、必要な薬を迅速かつ効率的に見つけられるようにすることを思いつきました。患者は処方箋をアプリ上にアップロードしたり、医薬品を調べたりすることができ、利用者はその医薬品を在庫している近隣の薬局のリストや価格、保険適用情報をアプリ上で確認できます。
彼はこの取り組みを通じて、薬を入手するのにかかるストレスや時間を軽減するだけでなく、ヨルダンのソフトウェア開発の強みを活かして、重要な医療格差に取り組みたいと考えています。
新たな冒険: 国連ユニタール「グレート・アイデア・スペース」研修事業
このような考えがある中、Moh’dさんは国連ユニタールの「グレート・アイデア・スペース 2022:公衆衛生とCOVID-19からの復興のための起業家精神育成」研修への関心を高めました。日本政府の資金提供を受けて実施されたこの研修事業は、参加者のビジネスアイデアを具現化し、成功へと導くための指導を行うことを通して、起業家精神を育成することを目的としていました。Moh’dさんは、自身のプロジェクトをさらに発展させ、洗練させる機会をこの研修に見出しました。彼は応募し、すぐに参加者として選ばれました。
研修の最初のフェーズは、ウェビナーとeラーニング・プラットフォームを通じてオンラインで実施され、受講者には基礎的な知識と教材が提供されました。Moh’dさんによると、教材は包括的でありながら応用しやすいという絶妙なバランスで構成されており、自分のような経験の浅い起業家にとっては特にこの点が重要だと感じたといいます。
研修講師からは、プロジェクトを最適化し、成功の可能性を高めるために必要なとても良いヒントをもらいました。―Luay Hussein Moh’d、国連ユニタール研修修了生(ヨルダン)
研修の第1フェーズでの好成績が認められ、Moh’dさんは研修の最終フェーズに進む16人の一人として広島に招待されました。オンライン学習から広島での対面式研修に移行したことで、Moh’dさんは講師や他の研修受講生と出会い、直接意見を交換する機会を得ました。こうした交流により、彼のプロジェクトをよりよいものにすることができました。
講義だけではなく、国連ユニタールの研修プログラムでは文化活動やスタディツアーも行われました。広島平和記念資料館を訪れたことは、Moh’dさんにとって最も印象深い活動のひとつであり、彼はそれを「心を動かす」、「忘れられない」経験、と表現しています。
起業家の力を最大限引き出す
より良い世界を実現するために、皆が協力すべきです! ―Luay Hussein Moh’d、国連ユニタール研修修了生(ヨルダン)
Moh’dさんは、国連ユニタールの研修が、自分のプロジェクトを策定し実施するための基礎を固めてくれたことに気づきました。積極的に解決策を探し、試行し、また、変化し続ける世界に適応する方法を身につけることで、彼の中にビジネス志向の考え方が培われたのです。またこの研修は、共通の目標を達成するための協力的な努力の促進にも役立ったと言います。
Moh’dさんは、研修を通して学んだことを活かしながら、プロジェクトに継続的に打ち込んでいます。そして、自分のような起業家にこのような機会を与えてくれた日本政府に対し、心からの感謝の意を伝えています。
英文記事は以下からご覧いただけます。
国連ボランティア Amali Karawitaさんのご協力のもと記事化されました。
国連ユニタールについて
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、1963年の設立以来、研修事業に特化した国連機関として、世界各国の人材開発を支えています。2023年には、54万人以上が受講。ジュネーブ本部のほか、ニューヨーク事務所、広島事務所、ボン事務所があり、様々なネットワークをもっています。2019年からは持続可能な繁栄局(Division for Prosperity)のもと、広島事務所と、ジュネーブ本部の財政・貿易ユニットの職員がともに、起業やリーダーシップ、貿易と金融、デジタル技術、軍縮などについてプログラムを展開しています。紛争後復興の過程にある国の人々への研修などには、原爆投下後から現在の平和都市に至る過程を一つの復興モデルとして講義に組み込むなど、平和で公正な社会の実現にも貢献しています。