- ウガンダの社会起業家、Denis Opioさんは、地元コミュニティのデジタル・リテラシーを強化するために、情報技術(IT)ハブを作りました。
- 彼は、国連ユニタール研修の「アフリカの女性と若者のためのエッセンシャル・デジタルスキル開発:デジタル経済における雇用機会と生活向上の促進」の修了生です。
- この研修でOpioさんは、デジタル・リテラシー向上と経済的自立をコミュニティにもたらすための情報技術、ビジネスマネジメント、自己管理などについての知識やスキルを身につけました。
2024年11月26日、広島 - Denis Opioさんは、ウガンダの下層中産階級の村で育ちました。彼の地元では、パソコンは珍しいものであり、使い方を知っている人はめったにいませんでした。彼は、会計学を学ぶために大学に進学しましたが、パソコンの使い方を学ぶのに苦労しました。そんな中で彼は、自分のコミュニティにITスキルを高めるための訓練を実施する必要性があることに気づいたのです。
Opioさんは、地元の村ではほとんどの人がパソコンについてよく知らないと言います。それを目にすることはあっても、使ったり、基本的なパソコンスキルを身につけたりする機会はありません。デジタル化が進む世界で、このようなアクセスの欠如は、彼のコミュニティの人々にとって多くの機会が閉ざされていることを意味します。
このような状況は、Opioさんの村だけではありません。インターネット経済が世界的に繁栄するに伴い、デジタルスキルの欠如が多くのウガンダ人、特に若者の就職市場での競争力を低下させているのです。学校のカリキュラムにデジタルスキルを盛り込み、教材を利用しやすくすることが、デジタル・リテラシーの格差を解消し、若者が仕事を見つける機会を創出するためにできることであるとされています。
ITの天国、ITハブを作る
Opioさんは行動を起こしました。彼は地元コミュニティでITハブを立ち上げ、人々が無料でパソコンを使える場所を作りました。そこでは、コンピューターの操作からAdobeの「Photoshop」や「Illustrator」のようなソフトウェアの使い方まで、さまざまなスキルを学ぶことができます。このITハブを通じ、彼はデジタル・リテラシーへの障壁を取り除くことで、職業能力の開発を加速させ、人々が職を確保するためのスキルを身につけられるよう、取り組んでいるのです。
ITハブで成功を収めた後、Opioさんはさらなる高みを目指しました。彼は、コミュニティの住民が非政府組織(NGO)からの支援に頼らず、自立して生活できるようにしたい、そのために、自分たちのスキルを収益化できる力を身につけてほしいと考えたのです。彼は、コミュニティのすべての人に平等な機会を提供すると覚悟を決めて取り組んでいます。
私は、自分のコミュニティがITの分野で力をつける姿を見たいと思っています。特に若者や女性に対してです…。こうしたIT関連の仕事の多くは男性向けだと考えてしまうため、一歩踏み出す自信を持てないのです。―Denis Opio、IT起業家、国連ユニタール研修修了生(ウガンダ)
この目標を達成するため、Opioさんは国連ユニタールの支援を受けながら、次の変革を目指しています。
さらなる学び
Opioさんは、友人を通して国連ユニタールの研修「アフリカの女性と若者のためのエッセンシャル・デジタルスキル開発:デジタル経済における雇用機会と生活向上の促進」を知り、これを試してみることにしました。日本政府の支援により無料で提供されたこの研修プログラムは、デジタル技術が主流となる世界に対応するために、デジタルスキルを身につけ、アフリカの女性と若者の雇用可能性と競争力を高めることを目的として実施されました。2024年2月に終了した4か月間にわたるこの研修プログラムは、ビジネスと情報技術の領域で、重要なトピックを扱いました。
参加者は自身の興味に合わせて、マイクロソフト社とIBM社のグループに分かれ、受講しました。各研修コースには、自分のペースで学べる学習、個々人で取り組むプロジェクト、ブートキャンプ、ウェビナー、ハッカソン、そして、コミュニティの持続可能性に関するワークショップが含まれていました。Opioさんは、IBMコースを選択し、データの分析や解釈、プレゼンテーションの方法などを学びました。オンライン研修フェーズを終えた後、彼はケニアで開催されたハッカソンに招待されました。そこで、若者や女性を対象に、職業訓練やスキル開発、メンター指導、キャリアガイダンスを通じて支援し、雇用機会の創出につなげるプロジェクトを発表し、見事2位を獲得しました。ケニアだけでなく世界中の聴衆の前で自分のプロジェクトを競い、発表するこの機会を、Opioさんは大いに楽しみました。
国連ユニタールの研修により、Opioさんは地元コミュニティでデジタル・リテラシーを促進するために必要なスキルを身につけ、自身のプロジェクトをより広く知ってもらうことができました。彼は、自分が学んだことを同僚や出会った人々と共有することを楽しんでおり、こう語っています。「彼らの能力や情報技術に関する知識を向上させることができたと感じます。」
国連ユニタールの研修プログラムは、Opioさんの仕事への取り組み方にも変化をもたらしました。彼のお気に入りの講義のひとつは、情報技術やビジネスではなく、マインドフルネスに焦点を当てたものでした。マインドフルネスを仕事に取り入れる方法を学ぶことで、ストレスが軽減され、生産性も向上しました。
その他の分野では、追加プロジェクトをこなせるようにプロジェクト・マネジメントのスキルを学んだといいます。また、人工知能(AI)に関する授業は特に興味深かったと述べています。彼は今、デジタル・リテラシーの向上と経済的自立を達成するために、どのようにAIを活用して地域コミュニティを強化することができるのかを考えています。
未来の芽生え: 「これは始まりに過ぎない」
Opioさんは現在、2つのプロジェクトに取り組んでいます。そのうちのひとつは、農家とバイヤーをつなぐアプリの開発で、ブローカーを不要とすることで、仲介者による搾取のリスクを絶とうとするものです。これには、最初のプロジェクトであるITハブの参加者が協力しています。参加者は基本的なデジタル・リテラシーを身につけた後、ソフトウェア開発の訓練を受けます。その後、デニスはアプリケーションの開発を進めるために彼らを雇います。このアプリケーションは、2025年初頭に完成する予定です。
Opioさんの2つ目のプロジェクトは、専門分野であるモニタリングと評価に関する質問に特化したAIチャットボットの開発です。このチャットボットは、モニタリングと評価の分野で働く同僚をサポートすることを目的としています。AIチャットボットは2024年内に完成する予定です。
彼は、これらのプロジェクトを成功裏に進められているのは、プロジェクトマネジメントコースで得たスキルのおかげだと述べています。彼は国連ユニタールに感謝を表し、「ユニタールは、多くの扉を開いてくれましたし、これからもさらに多くの扉が開かれると信じています」と語っています。将来、これらのプロジェクトが全国、さらには国境を越えてコミュニティを支援する取り組みに拡大することを望んでいます。
国連ユニタールについて
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2023年には、世界中で54万人以上が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。詳しくはウェブサイトから(国連訓練調査研究所(ユニタール) 広島事務所 )。