• 日本出身の木阪有美(きさか・ゆみ)さんは、スイス・ジュネーブにある世界保健機関(WHO)本部で渉外担当官(External Relations Officer)として活躍しています。
  • 外務省委託の1週間にわたる平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業「ミッドキャリア・コース」(2025年度)に参加しました。
  • 研修を通して、自身の使命を改めて明確にし、目指すリーダー像について見つめ直すとともに、グローバルヘルス(国際保健)への取り組みを志した原点となる価値観を再確認しました。
  • 本プログラムは、外務省の委託により広島大学が国連訓練調査研究所(国連ユニタール)と連携して実施しています。
Hiroshima University and UNITAR

2026828日、広島 日本出身の木阪有美さんは、臨床医として経験を積んだ後、日本の保健医療政策の立案に携わり、現在は世界保健機関(WHO)の渉外担当官として、世界の人々の健康と生活の向上に尽力しています。これまで多くのキャリア目標を達成してきた一方で、国連の財政危機や組織を取り巻く環境の変化を背景に、自身の成長や仕事への意欲、将来の方向性について見つめ直すようになりました。平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業「ミッドキャリア・コース」(2025年度)への参加を通じて、医師を志した原点を振り返り、自身の目標と使命を改めて明確にすることができました。

広島を原点に、平和と健康の実現を目指して

広島で育った木阪さんは、この街の歴史を通じて、平和、健康、人間の尊厳が深く結びついていることを学びました。社会に貢献したいという思いから、救急・集中治療医の道に進みました。患者一人ひとりの診療に携わる経験を通じて、木阪さんの関心は次第に、人々の健康の実現を支える制度や政策へと広がっていきました。その後、公衆衛生政策に携わり、現在はジュネーブの世界保健機関(WHO)で渉外担当官として勤務しています。

キャリアの岐路で、次の方向性を見つめ直す

自身が掲げてきた多くのキャリア目標を達成する中で、木阪さんは、仕事と自身の成長における次のステージについて考える時期に来ていると感じるようになりました。国連システムがかつてない財政危機に直面し、グローバルヘルス(国際保健)を取り巻く環境も大きく変化する中で、一度立ち止まり、自身の将来の方向性や、医療とグローバルヘルスの道を志した原点を改めて見つめ直すようになりました。

[国連の財政危機の影響によって、自身の仕事にもますます制約が生じていく中で、]自分自身の成長が停滞しているように感じ次第に自分を奮い立たせることが難しくなっていきました。そして、『これは本当に自分が人生でやりたいことなのだろうか』と、自分に問いかけるようになりました。

 「ミッドキャリア・コース」への参加の機会を得た木阪さんは、これを自身の視野を広げ、これまで培ってきた専門性を土台としながら、次のステージに向けてどのようなリーダーシップを発揮していくべきかをより明確に考えるための絶好の機会だと考えました。

 平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業は、平和構築および開発分野で活動する人材の能力強化を目的として、日本国外務省によって設立されました。2024年度からは、広島大学と国連訓練調査研究所(国連ユニタール)の協力によって実施されています。木阪さんは、将来的に管理職を目指す人材を対象とした「ミッドキャリア・コース」に参加しました。

 本コースは、202512月に実施されたオンラインによる事前研修と、202617日から13日にかけて広島で行われた対面研修で構成され、日本から8名、オーストリア、カメルーン、フランス、グアテマラ、インド、インドネシア、モロッコ、ネパール、パキスタンから各1名が参加しました。

広島に戻り、誰のために働くのかを再発見する

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木阪さんにとって、自分自身を体系的に振り返る機会を得られたことは、このプログラムの中で特に有意義だったといいます。ワークショップ、ディスカッション、プレゼンテーション、他の参加者たちとの対話を通じて、仕事で何を達成したいのかだけでなく、そもそもなぜこの道を選んだのかという問いにも向き合うことになりました。また、プログラムが故郷の広島で開催されたことも、特別な意味をもたらしました。広島平和記念公園や広島平和記念資料館を訪れたことで、自身の原点となった価値観を改めて思い出すことができました。

「広島は私の原点です。平和と健康は表裏一体であり、平和こそが健康にとって最良の薬です。」と語る木阪さん。尊重や思いやり、そして心からの支え合いと信頼に満ちた環境の中で学ぶことができたといいます。参加者、講師、運営スタッフが一体となり、互いの経験を共有し、難しい問いに向き合いながら、学び合うことのできる、信頼に基づいた場が築かれていました。また、他の参加者のキャリアの歩みに耳を傾ける中で、木阪さんは、異なる分野や国で活動する専門家たちの間にも、共通の価値観や志があることに気づきました。

目指すリーダー像

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プログラムを通じて木阪さんが得た気づきは、彼女が将来について考える際の大きな指針となっています。中でも重要な学びの一つは、自分自身のキャリアに主体的に向き合うことの大切さでした。現在、木阪さんは、キャリアを成り行きに任せるのではなく、自分自身が主体となって方向性を定め、創り上げるプロジェクトとして捉えています。

私にとって最も大きな学びは、自分が何をしたいのか、どのようにしたいのか、なぜそれをしたいのか、そして誰のために働いているのかを、具体的に思い描き、言葉にすることの大切さでした。

また、本プログラムは、木阪さんがリーダーシップについてより意識的に考えるきっかけにもなりました。彼女が長期的に目指しているのは、グローバルヘルス分野における戦略的な意思決定に貢献し、意義ある変化を生み出していくことです。そして、自らが目指すリーダーになるために、専門性だけでなく、自己認識、共感力、そして明確な目的意識を兼ね備えたいと考えています。また、本プログラムを通じて得た実践的な助言やツール、そして励ましを、これからの仕事に活かしていく考えです。

WHOでの仕事に戻った木阪さんは、使命感を新たにし、次のステージへの方向性を明確にするとともに、今後に向けた確かな手応えを感じています。答えを探すために始まったこの経験は、自分自身を見つめ直し、自らの能力や仕事の価値、そして共に働く人々への信頼を再確認する機会となりました。また、不確実な状況の中でも、自分が誰のために働いているのかを常に意識しながら、将来の目標を具体的な行動へと結び付けていく力を得ることができました。

外務省「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」について

麻生太郎外務大臣(当時)の政策演説「平和構築者の『寺子屋』を作ります」を受け、2007年から外務省が平和構築分野の人材育成事業を実施してきました。2015年度からは、国際機関での人材の発掘・育成・キャリア構築を包括的に実施するため事業内容を刷新・拡大し、「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」を開始。2024年度から、広島大学が外務省より委託を受け、国連訓練調査研究所(国連ユニタール)と連携し事業の実施・運営を行っています。

外務省ホームページ: https://www.mofa.go.jp/fp/ipc/pagewe_000001_00215.html

Global Peace and Development Career Networkhttps://gpad.hiroshima-u.ac.jp/en/

広島大学について

広島大学は、人類史上初めて原子爆弾が投下された被爆地広島に1949年に創設された国立の総合研究大学です。広島大学は、国立大学としての使命を果たすため、活動の基本原則として広島大学憲章を次の通り定めています。それは、平和を希求する精神、新たなる知の創造、豊かな人間性を培う教育、地域社会・国際社会との共存、絶えざる自己変革という理念五原則の下、自由で平和な社会を実現し、人類の幸福に貢献することです。また、一人ひとりの人権と人格を尊重し、教育や研究を通じて、地域社会および国際社会に貢献するとともに、平和で持続的な発展を可能とする社会の実現に向けて、貧困や紛争、人権の抑圧、感染症、環境や資源・エネルギー問題など地球規模の課題に対する先端的な解決策を世界に先駆けて実践しています。

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