• 南スーダン出身の起業家Kuena James Dakさんは、小規模農家に農機具をレンタルするためのアプリ開発に携わっています。
  • Dakさんは、2023年の国連ユニタール「グレート・アイディア・スペース2023:南スーダンの食料安全保障のための起業家精神とイノベーション」研修事業に参加しました。
  • 国連ユニタールの研修プログラムを通じて、Dakさんは、プロジェクトマネジメントや会計、リスクマネジメントのスキルに基づき、どのように自身のアグリテック事業を運営するかについて学びました。
  • 日本で開催されたスタディツアーと対面式ワークショップに参加し、広島の目覚ましい復興の歩みに刺激を受けました。
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2024年5月15日、広島―南スーダン出身の起業家Kuena James Dakさんは、農業の発展、そして自国の中小規模農家の支援とエンパワーメントに尽力しています。彼が目指しているのは農業とテクノロジーの溝を埋めることです。Dakさんは自身のアグリテック事業を通じて、中小規模の農家の生産性と所得の向上を目指しています。

アグリテックがもたらす革命

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映画制作とグラフィックデザイン分野での経験を持つDakさんは、ソーシャルワーカーとして、また非政府団体でのICT(情報通信技術)アシスタントとして、ウガンダと南スーダンの社会的弱者の生計向上、能力育成、教育などの支援に携わってきました。

Dakさんは、小規模農家と農機具や土地を貸し出したい人をつなぐアプリを開発しました。このアプリは双方にとってメリットがあります。意欲的な小規模農家にとっては農業ベンチャーを立ち上げる後押しとなり、遊休化している農機具や土地を持つ農家にとってはその資産を収益化につながります。この取組は、南スーダンの農業の機械化という喫緊の課題に対処するだけではなく、就農に必要不可欠な資源への手頃なアクセスを提供します。

一方で、様々な問題にも直面しています。限りある資源や細分化された土地所有権の問題、農家の技術リテラシーの欠如などです。そこで、これらの問題を解決するため、農家にアプリの使い方を指導する専門家チームを作り、対応しています。Dakさんは南スーダンの農業にさらなる革命をもたらすべく、引き続き農業省や他のNGOと協力して取り組んでいく予定です。

国連ユニタールでの経験:刺激とつながり

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Dakさんは、「グレート・アイディア・スペース2023:南スーダンの食料安全保障のための起業家精神とイノベーション」研修事業 に参加しました。南スーダンからの研修生326名が第1フェーズのオンライン研修に参加しました。

Dakさんは、オンライン研修の成績上位19名のうちの一人として選ばれ、東京と広島での対面式研修に参加することができました。日本での対面式研修においては、プロジェクトマネジメントやリスク軽減に関するスキル、そして起業家としてのレジリエンスといった貴重な知識を習得しました。国連ユニタールでの研修は、自身のアプリ開発事業の運営手法について、理論だけではなく、プロジェクトを運営する上での実践的な戦略などについても学ぶことができたと言います。彼は、研修を通じて習得したプロジェクトマネジメントやビジネス上の会計スキル、リスクテイクについての知識を活かして、南スーダンの農業の機械化を推進することを計画しています。

日本での対面研修において、Dakさんにとってもっとも印象的だったのが、広島平和記念公園を訪れたことでした。彼は、広島の目覚ましい復興の様子とその道のりを目の当たりにし、強く心打たれたといいます。

私たちはこれまでにも、広島平和記念公園や、広島が戦後いかにして立ち上がり生まれ変わったのかというストーリーを多く耳にしてきました。今回、実際にその場所を訪れ、私たちも歩み続けなければならない、そして日本が示してくれたように自分たちの国をより良くしていかなければいけないという思いを強くしました。― Kuena James Dak、起業家、国連ユニタール研修修了生(南スーダン)

国連ユニタールの研修を修了したDakさんは、習得したことを実践に活かそうと考えています。今回の研修をご支援いただいた日本政府と国民の皆様に心から感謝し、有意義な変化を生み出すための勇気ある一歩を踏み出そうとしています。

未来に向けて:「行動を起こそう」

Dakさんは、未来に向けて、自分が起こす全ての行動が母国の発展、さらに世界の繁栄に貢献できるようにとの強い思をもって、同じワークショップに参加した起業家たちに呼びかけています。

行動を起こしましょう。このワークショップを修了して帰国したら、すぐに行動を起こしましょう。― Kuena James Dak、起業家、国連ユニタール研修修了生(南スーダン)

Dakさんは決意と忍耐を胸に、他のユニタール研修修了生と同様に、変革と弛まぬ行動を通じて社会に前向きな変化をもたらす希望の光となってくれるはずです。

 

国連ボランティア Richael Naa Abea Aryehさんのご協力のもと記事化されました。

国連ユニタールについて

国連訓練調査研究所(ユニタール)は、1963年の設立以来、研修事業に特化した国連機関として、世界各国の人材開発を支えています。2023年には、54万人以上が受講。ジュネーブ本部のほか、ニューヨーク事務所、広島事務所、ボン事務所があり、様々なネットワークをもっています。2019年からは持続可能な繁栄局(Division for Prosperity)のもと、広島事務所と、ジュネーブ本部の財政・貿易ユニットの職員がともに、起業やリーダーシップ、貿易と金融、デジタル技術、軍縮などについてプログラムを展開しています。紛争後復興の過程にある国の人々への研修などには、原爆投下後から現在の平和都市に至る過程を一つの復興モデルとして講義に組み込むなど、平和で公正な社会の実現にも貢献しています。

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