• ベトナム外務省の外交官であるNgan Ha Maiさんは、核軍縮・不拡散、原子力技術の平和的開発に携わっています。
  • ベトナムはこれまで軍縮を積極的に推進しており、包括的核実験禁止条約(CTBT)、核兵器不拡散条約(TPNW)を批准しています。
  • 国連ユニタールの研修への参加は、Ngan Haさんの核軍縮・不拡散に対する視野を広げました。
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2024 年 8月 22 日、広島 - ベトナム外務省の外交官であるNgan Ha Maiさんは、核軍縮・不拡散、原子力技術の平和開発に携わっています。彼女は、2023年度国連ユニタール核軍縮・不拡散(NDNP)広島研修プログラムに参加した18名のうちの一人です。

発展途上国の代表として

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ベトナムは、2006年に包括的核実験禁止条約(CTBTを、2017年には核兵器禁止条約(TPNW)を批准するなど、核軍縮の推進に長年取り組んできました。TPNWを批准した最初の10か国の一つでもあるベトナムは、大量破壊兵器の廃絶と不拡散の実現のため、国際社会の取組を支持するという一貫した姿勢を表明しています。

その一方で、Ngan Haさんは発展途上国の外交官という立場ゆえの難しさを感じています。

国内だけで教育を受けた若手外交官として、ベトナムのような発展途上国の若者が、軍縮についてより深く理解し視野を広げるために情報を入手したり、海外に出かけたり、重要な会議に参加したり、学習機会を得ることは、非常に難しいことだと感じています。- Ngan Ha Mai、外交官、国連ユニタール研修修了生(ベトナム)

このような課題は、彼女の性別によってもさらに複雑になっています。Ngan Haさんは、女性が仕事と家事・育児を両立させる上で直面する社会的な固定観念も指摘しています。

国連ユニタール研修プログラム

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Ngan Haさんは、国際的な舞台で学べる機会がほとんどない中で、広島で一週間にわたって開催された国連ユニタールの「核軍縮・不拡散(NDNP)広島研修」に参加する機会を同省から与えられたことをとても光栄に思いました。

この研修には、アジア・太平洋地域13か国から18名の外交官や防衛に携わる職員が参加し、受講者らは現在の世界的な核軍縮に関する議論への理解を深めるとともに、外交活動を強化するための交渉・コミュニケーションスキルを高めました。また、研修を通して志を同じくする実務者のネットワークを構築し、地域や地域を超えた対話を促進しました。

Ngan Haさんは、グループのメンバーの多様さに驚かされたといいます。経歴も人生経験も異なるものの、核軍縮という共通の目標を持つ参加者たちは、このテーマに対する彼女の理解を深めてくれました。

過去から学ぶ

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研修では、広島平和記念公園の慰霊碑も訪問しました。彼女は、実際に広島を訪れるのは広島についての話を聴くこととは比べものにならないと実感し、「広島を実際に見て欲しい」と声を強めています。

平和の文化が広島の人々の日常生活や都市計画にいかに根付いているか、ぜひ広島を訪れて自分の目で確かめて欲しいと思います。- Ngan Ha Mai、外交官、国連ユニタール研修修了生(ベトナム)

復興を遂げた広島の姿を戦争で荒廃した自身の母国と照らし合わせ、Ngan Haさんは感銘を覚えました。彼女はそこで、母国が抱える課題に対する新たな視点を見出しました。

ベトナム戦争が終結して半世紀以上が経っているにもかかわらず、いまだにその影響を受けている人々がたくさんいます。[...](ベトナムと)同じような惨禍に見舞われた土地を訪れ、そこにいる人々がいかに創造的で、復興の力を持っているかを、目の当たりにしました。- Ngan Ha Mai、外交官、国連ユニタール研修修了生(ベトナム)

Ngan Haさんは、国連ユニタールの研修を通じて学んだことを今後の活動に活かしたいと考えています。彼女は、快適な環境から一歩踏み出すことで得ることができた広い視野をもとに、自分の仕事をさらに体系化していきたいと考えています。

私たちはなぜ過去を振り返る必要があるのか。それは、敵意や恨みを思い返すためではありません。私たちがそこから学び、人々に伝えるべき教訓として過去を振り返るのです。私たちはその教訓を語り継ぎ、平和の重要性を強調し、この先絶対に過ちを繰り返してはならないと訴え続けなくてはなりません。- Ngan Ha Mai、外交官、国連ユニタール研修修了生(ベトナム)


英語版は以下からご覧いただけます。

Learning From Hiroshima: Vietnamese Diplomat in Nuclear Disarmament and Non-Proliferation | UNITAR

国連ボランティア Danny Liuさんのご協力のもと記事化されました。

国連ユニタールについて

国連訓練調査研究所(ユニタール)は、1963年の設立以来、研修事業に特化した国連機関として、世界各国の人材開発を支えています。2023年には、54万人以上が受講。ジュネーブ本部のほか、ニューヨーク事務所、広島事務所、ボン事務所があり、様々なネットワークをもっています。2019年からは持続可能な繁栄局(Division for Prosperity)のもと、広島事務所と、ジュネーブ本部の財政・貿易ユニットの職員がともに、起業やリーダーシップ、貿易と金融、デジタル技術、軍縮などについてプログラムを展開しています。紛争後復興の過程にある国の人々への研修などには、原爆投下後から現在の平和都市に至る過程を一つの復興モデルとして講義に組み込むなど、平和で公正な社会の実現にも貢献しています。

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