• 南スーダン出身のLydia Tabu Casmiro Jambaさんは、平和構築のために力強く活動し続けています。自国の女性主導のNGOで、プログラムを統括しています。
  • 外務省委託(2024年度)平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業「プライマリー・コース」に参加しました。
  • 研修では、交渉やジェンダー主流化に関する実践的なスキルを磨きました。広島の多角的な平和への歩みにも刺激を受けました。また、紛争解決の専門家になるという自身の目標を改めて定めました。
  • この事業は、広島大学が国連ボランティア計画(UNV)および国連訓練調査研究所(ユニタール)と連携して実施しています。
Hiroshima University and UNITAR

2026522日、広島-南スーダン出身のLydia Tabu Casmiro Jambaさんは、母国の平和構築に取り組んでいます。自ら立ち上げに関わった全国規模の女性主導NGOでプログラム運営を担いながら、修士号取得に向けて学んでおり、キャリアアップのために外務省委託(2024年度)平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業「プライマリー・コース」に参加しました。

紛争に揺れる母国で、平和を築く

Lydiaさんは幼少期に難民キャンプでの生活を経験しており、自分の国にいながら「家にいる」と感じられない辛さを身をもって知っています。南スーダンは今も、複合的な紛争に直面し続けています。Lydiaさんは、この紛争をコミュニティ間・政治的・民族的、そして個人間にまで及ぶものだと表現します。長年にわたる政情不安と経済危機により、人々は苦しみ、「常に怒りで満たされ」ているため、互いに共感し合えなくなっていると考えています。

この経験から、Lydiaさんは、自らのコミュニティで平和を築くために自分にできることをしようと決意しました。「平和大使」の育成もそのひとつです。平和大使が地域のリーダーと連携してコミュニティの紛争解決にあたったり、ジェンダーに基づく暴力への意識向上を図ったりして、共生と和解を推進できるよう養成しました。また、宗教的な指導者とともに紛争予防と解決に取り組み、人道支援機関と連携して子どもたちを武装勢力から保護し、家族のもとへの社会復帰を支援する取組にもあたってきました。

交渉とジェンダー:研修での気付き

スキルを高めるための機会を探すなかで、この人材育成事業に出会いました。本事業は、外務省の委託を受け、広島大学が国連ボランティア計画(UNV)および国連訓練調査研究所(ユニタール)と連携して実施しています。このうち、「プライマリ・コース」は20251月から2月にかけて実施され、Lydiaさんはオンラインの事前研修を経て来日し、22名の研修員とともに広島と東京での4週間の研修に参加しました。得られた数々の新たな視点や価値観を、帰国後どのように生かせるか思いをめぐらせる毎日でした。

中でも、すぐに実践に役立つと感じたトピックのひとつが、交渉術でした。紛争解決には常に調停と交渉が伴います。このコースでは、実践的なスキルを学ぶことができ、国内避難民や難民キャンプで人々の間に平和を築くアイデアなど、さまざまなヒントを得ることができたと言います。

「交渉におけるさまざまなアプローチを理解し、交渉当事者間のコミュニケーションやチームワークに目を向け、当事者への役割や任務の割り当てについて理解すること――これは私にとって……興味深いものでした。これまで知らなかったアプローチです。」‐Lydia Tabu Casmiro Jamba(南スーダン)、プライマリー・コース修了生

このコースはまた、平和構築においてジェンダー主流化がとても重要であることを、改めて痛感させるものでもありました。例えば、南スーダンの内戦終結のための2018年の枠組みである再活性化された平和合意の策定において、女性の参加は限定的で、ジェンダーに関する取り決めの実施も一貫していないと、Lydiaさんは指摘します。

現在は、女性が権利を実現できる社会の構築を目指す組織で働いています。自らが携わるプロジェクトに変化の理論を導入し、ジェンダーへの実質的な取組を促すための知見を得ることができたそうです。

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広島が与えてくれた勇気:「平和構築は、私たち全員の責任」

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研修中、Lydiaさんにとって、もうひとつ重要な時間がありました。広島市への訪問です。研修前、原子爆弾について聞いたことはありましたが、その影響についてはほとんど知りませんでした。惨禍に耐えて焼け残った建物を目にし、被爆者から話を聞き、見方は大きく変わりました。「心が揺さぶられました」と彼女は言います。この経験は、力と勇気を与えてくれるものでした。

「どれほど困難なことが母国で起きていても、物事は変えられると思います。……〔広島の〕コミュニティが力を合わせて街を再建した姿は、本当に心を動かされるものでした。平和を築くことは、私たちみんなの集合的な責任であると、わかりました。人々は自分たちの街を再建し、関係を修復させ、平和な環境をつくり出すために、団結する必要があるのです。」Lydia Tabu Casmiro Jamba(南スーダン)、プライマリー・コース修了生

未来に向けて:歩み続けるキャリアの道

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プライマリー・コースの目的のひとつは、仲間との率直な対話や専門家からの指導を通じて、若手専門家がそれぞれの将来のキャリアを探求する機会を提供することです。Lydiaさんは、自らを振り返り、具体的な目標を立てる時間が貴重であったと言います。自分自身がどのような職業人として歩んでいくか、より明確にすることができたからです。

「若い私たちこそが、世界に平和を築く上で鍵となる存在だと思います。〔この〕プログラムは、キャリアを築き、自分自身の中に、コミュニティの中に、そして世界に平和を築く機会を与えてくれます。」Lydia Tabu Casmiro Jamba(南スーダン)、プライマリー・コース修了生

実践的な学びだけでなく、世界中から集まる同じ志を持つ仲間と出会う機会のためにも、自分自身のような若手専門家に、このコースへの参加を勧めています。

Lydiaさんは、人々が不安定な状況に苦しんだり、家を追われたりすることのない世界を望んでいます。どんな形でも、どんな場所でも、平和のために自らの役割を担い続けることを心に誓っています。

外務省「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」について

麻生太郎外務大臣(当時)の政策演説「平和構築者の『寺子屋』を作ります」を受け、2007年から外務省が平和構築分野の人材育成事業を実施してきました。2015年度からは、国際機関での人材の発掘・育成・キャリア構築を包括的に実施するため事業内容を刷新・拡大し、「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」を開始。2024年度から、広島大学が外務省より委託を受け、UNV及び国連ユニタールとの協力のもと、事業の実施・運営を行っています。

広島大学について

広島大学は、人類史上初めて原子爆弾が投下された被爆地広島に1949年に創設された国立の総合研究大学です。広島大学は、国立大学としての使命を果たすため、活動の基本原則として広島大学憲章を次の通り定めています。それは、平和を希求する精神、新たなる知の創造、豊かな人間性を培う教育、地域社会・国際社会との共存、絶えざる自己変革という理念五原則の下、自由で平和な社会を実現し、人類の幸福に貢献することです。また、一人ひとりの人権と人格を尊重し、教育や研究を通じて、地域社会及び国際社会に貢献するとともに、平和で持続的な発展を可能とする社会の実現に向けて、貧困や紛争、人権の抑圧、感染症、環境や資源・エネルギー問題など地球規模の課題に対する先端的な解決策を世界に先駆けて実践しています。

国連ボランティア計画について

世界中でボランティアリズムを通じて平和と開発に貢献する国連ボランティア計画(UNV)は、パートナーと連携し、資格を持ち、高い意欲と十分な支援を受けた国連ボランティアをさまざまな国連機関に派遣しています。その中でもプライマリー・コースでは日本人研修員を国連ボランティアとして海外派遣する業務を実施しています。

国連ユニタールについて

国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2024年には、世界中で約55万人が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。詳しくは国連ユニタール広島事務所のホームページをご覧ください。

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