- Guiane Paul Penaさんは、フィリピン・サンボアンガ市の理系の学校に通う17歳の高校生です。学長、スポーツ、そして音楽が得意です。
- Penaさんは、サンボアンガ市の青年市議員として活躍しています。若者の代表として、コミュニティが直面している問題への解決策を提案しています。
- Penaさんは、高校生のエンパワーメントを目的に開催された2023国連ユニタール青少年大使・アジア太平洋プログラムに参加しました。
- 本プログラムでは、若者の積極的な参加を取り入れたGuiane Paul Penaさんの災害対応への提案が優秀賞を獲得しました。
2024年5月22日、広島-地元サンボアンガ市が災害によって破壊された様子を目にしたGuiane Paul Penaさんは、二度と同じ惨状が繰り返されぬよう、若者の参加を通したより効果的な災害対策を提案し、地域社会に貢献することを決意しました。近年の気候変動により、フィリピンは洪水、台風、干ばつ、地震、津波、土砂災害などの様々な災害に直面しています。こうした状況の中で、Penaさんが提案するような緊急対応や備えは今まさに必要とされています。
Penaさんは、フィリピン・サンボアンガ市の若者の声を代表する青年市議員として活躍しています。彼は2023年に国連ユニタール青少年大使・アジア太平洋プログラムに参加しました。彼が提案した「ユース緊急対策本部(Youth Emergency Task Force)」の取組は国連ユニタールの研修で優秀賞を獲得しました。
地元コミュニティのユースリーダーになる
もともと内気だったPenaさんは、いつか自分がユースリーダーになれるとは、想像もしていませんでした。その彼に変化をもたらしたのは、2023年8月に同級生に勧められた自治体のシティ・ユース・プログラムでした。このプログラムは、若者のエンパワーメントと市政運営における若者の役割を拡大することを目的としていました。
自分の殻を破りたいと思ったPenaさんは、挑戦することにしました。サンボアンガ市が直面する問題に対して、青年市議員として地元の若者の考えを代表し、様々な実践的な解決策の提案に取り組んでいます。
チャンスが来たので、迷わずそのチャンスを掴みました。その結果、自分がやってみたいと思っていたことをする道が開けました。- Guiane Paul Pena、高校生、2023年度国連ユニタールアジア太平洋青年大使(フィリピン)
渋滞により発生した同級生の自転車事故、そして住民の生活やビジネスに大きな損害をあたえた二度の火災を目の当たりにしたPenaさんは二つの取り組みを市政府に提案しました。一つは、自転車専用レーンを町中に作ること。もう一つは、地元事業者を対象に、避難訓練と講習を必修とする防火安全研修を実施することです。この二つの提案はすでに市政府で採決され、現在実行に向けて準備が進められています。
国連ユニタール青少年大使プログラムに参加
Penaさんがユースリーダーになるための道は続いています。彼は、2023年度国連ユニタール青少年大使・アジア太平洋プログラムに参加しました。同プログラムは、メンター指導と能力育成を通してアジアの若者のエンパワーメントを目指しています。
このプログラムを通して、Penaさんは地元コミュニティにおける取組を改善するために必要な能力と知識を身につけることができました。研修への参加は、Penaさんにとって自分の内気な一面を変える機会ともなりました。彼は、アジア太平洋諸国から集まった32人の高校生のディスカッションを主導し、複雑な地球規模の課題を国連の持続可能な開発目標 (SDGs) に沿った実行可能な提案に変換するために、仲間とともに提案を練りました。メンターからも多くを学び、困難を乗り越えて夢を追う精神に啓発されました。
「ユース緊急対策本部」案がコンテストで優勝
Penaさんは、同プログラムの活動の一環として、地元の防災対応に不足している部分を分析し、「ユース緊急対策本部」を提案しました。若者が災害援護のスキルを身につけ、若者を災害時の第一対応者として活躍できるようにすることを提案したのです。Penaさんは、実用性と費用対効果が高いこの提案が、地元での活用のみならず他の自治体にも取組を広げやすい点が審査員の評価につながったのでは、と述べています。
防災対応に足りないもの、必要なものを考えました。思いついたのは、若者はいつも災害発生の現場にいるということです。しかし、多くの若者は動画を撮ることしかしません。- Guiane Paul Pena、高校生、2023年度国連ユニタールアジア太平洋青年大使(フィリピン)
災害時に若者ができることは現場の動画を撮ることだけではない、とPenaさんは考えます。「ユース緊急対策本部」は若者に向けて救急対応訓練ワークショップを開催し、応急処置、捜査と救命、防火安全対策など必要なスキルを教えます。これらのスキルは自分の命を守るために必要な知識を学び、さらに周囲の人、特に高齢者、子ども、負傷者などの助けを必要とする人々の救助にも役立ちます。
Penaさんは、サンボアンガ市長をはじめとするフィリピン全土の政策決定者と話し合いながら、この取組がどのように支援され、実施され、維持されるかを検討したいと考えています。このモデルが成功すれば、さらなる拡大を目指して、まずは国内でも災害を最も受けやすい都市から、その後フィリピン全土の他の都市に、さらには世界に、この取組を広めていきたいと考えています。
国連ユニタール研修プログラムで優秀賞を獲得したことは、Penaさんと彼の家族や友達にとって非常に特別な意味を持ちます。この賞は彼の努力の証でもあり、栄誉でもあり、モチベーションでもあります。若者は変化をもたらすことができるという彼の信条を証明し、彼が今後も救命プロジェクトを発案するために必要とするエネルギーの源にもなっています。
アイデアがあるなら実行に移してください。誰かがそのアイデアを形にすることを待たないで。変化そのものに、あるいはその変化のもとになってほしいのです。自分はまだ子どもだ、とあきらめないで。私たちはこの世界の未来そのものです。- Guiane Paul Pena、高校生、2023年年度国連ユニタールアジア太平洋青年大使(フィリピン)
英語版は以下からご覧いただけます。
国連ユニタールについて
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、1963年の設立以来、研修事業に特化した国連機関として、世界各国の人材開発を支えています。2023年には、54万人以上が受講。ジュネーブ本部のほか、ニューヨーク事務所、広島事務所、ボン事務所があり、様々なネットワークをもっています。2019年からは持続可能な繁栄局(Division for Prosperity)のもと、広島事務所と、ジュネーブ本部の財政・貿易ユニットの職員がともに、起業やリーダーシップ、貿易と金融、デジタル技術、軍縮などについてプログラムを展開しています。紛争後復興の過程にある国の人々への研修などには、原爆投下後から現在の平和都市に至る過程を一つの復興モデルとして講義に組み込むなど、平和で公正な社会の実現にも貢献しています。