- Basma Mohammed Jasimさんは、イラクの社会的に脆弱な立場にある人々のための持続可能な医療の革新に尽力しています。
- Jasimさんは、国連ユニタールの「イラク、ヨルダン、レバノンにおける保健安全保障と経済発展のための起業家精神とイノベーション」研修事業プログラムに参加しました。研修でJasimさんは、起業家精神やプロジェクト管理、持続可能性について学びました。
- Jasminさんは、自宅を離れられない人々に医療サービスや診察を提供するための遠隔医療プラットフォームを開発しています。同時に、医療を必要とする人々や限られた資源で運営される病院の負担を軽減することを目指しています。
医療サービスへのアクセス向上のアイデア
イラクの医療システムは、限られた資源、終わらぬ紛争、インフラ整備の課題によって大変な困難に直面しており、Jasimさんが活動するバスラでは特に厳しい状況です。彼女は、医療を必要とする人々、特に高齢者、障がい者、病気のために自宅から出られない人々の負担を、利用しやすい医療サービスを提供することで軽減したいと考えています。また同時に、資源の欠乏に直面する病院の負担を軽減したいと願っています。
遠隔医療プラットフォームは、差し迫った医療ニーズに対応し、新卒の医師の雇用機会を創出することも目的としています。しかし、データ収集や医療機関との契約確保が課題であり、粘り強い交渉や啓発活動が欠かせません。
このため、Jasimさんは、サービスに関する情報や医療サービス提供者の連絡先を提供するウェブサイトと、リアルタイムの医療相談や往診を容易にするモバイルアプリを含む遠隔医療プラットフォームを開発しています。
長期的な目標としては、医療サービスを必要としている地元の人々に医療サービスを提供すること、また、医療従事者の都合やライフスタイルに適した雇用機会を増やすことです」。― Basma Mohammed Jasim、国連ユニタール研修修了生(イラク)
国連ユニタール研修での学び合い
Jasimさんはこの構想を練っているときに、国連ユニタールの研修「イラク、ヨルダン、レバノンにおける保健安全保障と経済発展のための起業家精神とイノベーション」研修事業 を見つけました。日本政府と日本国民の支援を受けたこの事業は、起業家を3か国で育成し、地域の文脈に合わせたかたちでCOVID-19の復興のための革新的な解決策を実現させました。Jasimさんは、同研修の評判の高さと、新しいスキルを身につける機会があることに後押しされ、このプログラムに応募しました。
最初のフェーズは、オンライン形式だったので、Jasimさんはフルタイムの仕事と勉強の両立に柔軟に対応できるようになりました。彼女は起業家精神、プロジェクトマネジメント、持続可能性について学ぶと同時に、対話型の講義や他の研修受講者との学び合いを通じて、直接フィードバックを受けることができました。
Jasimさんは、オンラインプログラムが終了した時点で、東京と広島で開催された対面式研修に招待されました。同研修事業からは、彼女を含めて、成績優秀者の16人が参加し、他の研修事業の受講生である南スーダンからの19人の参加者も日本での研修に加わりました。この経験は、彼女にとって大きな変化をもたらしました。Jasimさんは、さまざまな国からの参加者や専門家と直接交流し、多様な視点から学ぶことを大切にしました。特に印象的だったのは、Jacqueline Linder講師による、効果的なビジネスマネジメントと職場でのパフォーマンス向上のためのトラウマ・インフォームド戦略に関する心理学の講義でした。この講義では、ステークホルダーや顧客を理解する方法について考察しました。Jasimさんは、この理解が自分の遠隔医療プロジェクトを進める上で極めて重要であることに気がつきました。
今後の計画
彼女の長期的なビジョンは、彼女の遠隔医療プロジェクトを、身心双方の健康に対するサービスを提供する包括的な組織として拡大することです。彼女は、医療専門家として柔軟で協力的な職場環境と、イラクのより効率的な医療システムに貢献したいと考えています。この夢に向かって、彼女はアプリの機能とさらなるパートナーシップを発展させ、新しい市場を開拓することを計画しています。
広島のレジリエンスからインスピレーションを得たJasimさんは、起業を志す人々に、困難に直面しても耐え抜くことを呼びかけています。彼女は、継続的な努力、ネットワークづくり、適応性、そしてイノベーションの重要性を強調します。
自分のプロジェクトをさらに発展させるために必要なマーケティングや財務戦略など、あらゆる知識に加え、同僚や同窓生、メンターとの新たなつながりを得ることができました。今後は、得た知識とこのつながりを活かして取り組んでいきたいと思っています。―Basma Mohammed Jasim、国連ユニタール研修修了生(イラク)
Jasimさんは、同事業を支援してくれた日本政府に感謝しています。この研修で受けたおもてなしと励ましは、彼女にとって前向きな変化を推進するために欠かせない国際協力と連帯した取り組みの重要性を強く印象づけました。
持続可能性と保健医療におけるJasimさんの活動は、個人の努力がいかに社会全体の利益につながるかを示しています。国連ユニタールの研修によって強化された遠隔医療プロジェクトを通じて、彼女はイラクにおける医療へのアクセス改善と持続可能性への道を開き、起業家や専門家の同志に地域コミュニティに変化をもたらすよう、呼びかけています。
英文記事は以下からご覧いただけます。
Enhancing Healthcare Access: Developing a Medical Services Platform for Iraq | UNITAR
国連ユニタールについて
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、1963年の設立以来、研修事業に特化した国連機関として、世界各国の人材開発を支えています。2023年には、54万人以上が受講。ジュネーブ本部のほか、ニューヨーク事務所、広島事務所、ボン事務所があり、様々なネットワークをもっています。2019年からは持続可能な繁栄局(Division for Prosperity)のもと、広島事務所と、ジュネーブ本部の財政・貿易ユニットの職員がともに、起業やリーダーシップ、貿易と金融、デジタル技術、軍縮などについてプログラムを展開しています。紛争後復興の過程にある国の人々への研修などには、原爆投下後から現在の平和都市に至る過程を一つの復興モデルとして講義に組み込むなど、平和で公正な社会の実現にも貢献しています。