• Nikki Antonette De Veraさんは、フィリピンの災害リスク軽減(DRR)分野の変革への道を照らし出す活動家です。Veraさんは若くして緊急対応活動を知ったことがきっかけとなり、持続可能な生活と公平な災害リスク軽減に取り組むようになりました。
  • Veraさんは、国連ユニタール事業「津波防災に関する女性のリーダーシップ研修」の修了生であり、彼女の歩みは、レジリエンスのあるコミュニティを築く上で、文化と学びが相互に支え合う関係性を示しています。
  • サモアで開催された国連ユニタールの災害リスク軽減における女性リーダーシップに関する研修は、より効果的な災害復興に必要な知識とスキルの習得を通して女性リーダーを育成することを目的として実施されました。

変革の触媒

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2023828日、広島フィリピン出身のNikki Antonette De Veraさんは、国連ユニタール事業「津波防災に関する女性のリーダーシップ研修」の修了生です。Veraさんはサモアで開催されたこのプログラムに参加し、災害へのレジリエンスにおける文化遺産の重要性を学ぶ中で自身の視野を広げることができたと語っています。

Veraさんは独立コンサルタントであり、また2歳になる娘の母親です。現在は繊維産業で働く女性たちとともに、コミュニティに根付いた災害リスク軽減の活動に力を入れています。Veraさんは、彼女の母親が緊急対応業務に携わっていたことから、災害に触れる機会がありました。これが持続可能な生活の実現への情熱につながり、災害にも強く結びついている貧困の連鎖に取り組むきっかけとなりました。

彼女と同じ分野で活動を続ける仲間へのメッセージは、自信を持って行動することがとても重要であるということ、そして、災害は国境を越え、レジリエンスある未来のための連帯的な取組が不可欠である、ということです。Veraさんの目指す未来は、イノベーションと技術の導入、そして災害に強い社会を目指す女性たちのネットワークづくりが掲げられています。

困難の中で見出す目的

Veraさんが災害リスク軽減の分野に進んだのは、職業上の選択というだけではなく、個人的な体験から導かれたもので、いわば天職といえます。母親が緊急対応活動に携わる中で育ったVeraさんは、早くから災害の被害に触れてきました。幼いころのVeraさんは、災害を生き延びた人々の不屈の精神と、度重なる大災害がもたらす貧困の連鎖を身にしみて感じてきました。フィリピンでは、年中多発する災害に見舞われており、災害リスクや気候の変化に対処することは単に被害を軽減するだけでなく、生き残るための手段であると、Veraさんは気づきました。こうした経験が相まって、Veraさんは公平な災害管理、経済的エンパワーメント、持続可能な生計確保に取り組もうと決意するに至りました。

私の国の多くのコミュニティは、災害が起こる度に貧困の連鎖が繰り返される理由の根源を理解するための知識と支援を必要としていることを目の当たりにしました。―Nikki Antonette De Vera、国連ユニタール研修修了生(フィリピン)

災害リスク軽減: 伝統とイノベーションの融合

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COVID-19感染症のパンデミック発生時、Veraさんは危機に見舞われた現地の販売員を支援するために、必要な資源を提供しました。この時、彼女はコミュニティに根付いた災害リスク軽減の取組が果たしうる、大きな役割に気づきました。災害の脅威が常に存在するフィリピンのような国で、Veraさんは古くから根付いている文化と災害リスク軽減のための先進技術を組み合わせることで、よりよい結果が得られると考えました。たとえば、コミュニティや家族の重要性が価値観と深く結びついているサモアでは、住民が司令センターを設立し、関係機関や国際的な開発援助組織と連携して、コミュニティレベルで運営がなされています。この文化的アプローチと近代的な災害復興戦略を組み合わせることで、太平洋諸島の島民は、潜在的な災害を認識し、コミュニティとして一致団結して困難に立ち向かうことができるようになりました。伝統とイノベーションの融合は、古くからの慣習を受け継ぎつつ、よりよい未来を築いていくために現在的手法を取り入れるという、有力な戦略となるのです。

国連ユニタール広島事務所: 変革のきっかけ

国連ユニタール事業「津波防災に関する女性のリーダーシップ研修」への参加は、Veraさんの考えに大きな変化をもたらし、新たな決意に火をつけました。ハイブリッド構成で実施されたこのプログラムは、社会人として働きながら、母親としての務めも果たすVeraさんのニーズにうまく応えるものでした。オンライン研修である第1フェーズで、Veraさんは災害リスク軽減の概念に関する新たな洞察に触れることができました。この基礎知識は、第2フェーズのサモアでの対面式研修を通して、大幅に強化されました。このダイナミックなアプローチは、個々人の様々な制約に左右されることなく、深い学習体験と積極的な参加を促しました。Veraさんは、各国からの多様な経験を持つ参加者とともに、過去に津波の被害を受けた場所を訪れ、約2000人の住民の生活を根底から覆すような状況について、実体験をもって学びました。津波が母国に与えた影響についての個人的な体験について、トンガ出身の方を含めた人々から直接話を聞くこともでき、Veraさんにとってまたとない貴重な機会となりました。

こうした交流を通じて、Veraさんは、政府、非政府組織(NGO)、地域コミュニティが災害と気候変動に対するレジリエンスを強化するために行っている多面的な戦略について、貴重な洞察を得ました。この共同の取組は、災害リスク軽減と気候変動への適応の領域での画期的な進歩を示すものでした。豊かな知識を身につけたVeraさんは、本質的且つ実践的な学びを、母国での災害救援活動に活かしていこうと考えています。

太平洋地域とアジア各国から多くの女性が集まったことにより、災害時のレジリエンスの強化に向けて取り組むためのつながりを築くことができました。―Nikki Antonette De Vera、国連ユニタール研修修了生(フィリピン)

変化をもたらす:再現性のために

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災害管理の専門家であるVeraさんのメッセージは、エンパワーメントと行動力の重要性を強調しています。彼女の生き方は、自信をつけ、変革の触媒としての役割を受け入れるための励みとなります。リーダー、育成者、活動家として、Veraさんは文化、協力、知識が持つ変革の可能性を体現しています。彼女の経験は、積極的な関与が早急に必要であることを強調し、情熱とさらなる知識の融合が具体的なインパクトを生むことを実証しています。

この研修は、私のように地域コミュニティや国のレジリエンスを高めるために取り組んでいる女性の方々と知り合う機会となり、気持ちが楽になりました。―Nikki Antonette De Vera、国連ユニタール研修修了生(フィリピン)

国連ユニタールのビジョンに沿って

Veraさんの活動は、国連ユニタールの能力強化への揺るぎないコミットメントと、変化を生み出す人々の育成を体現しています。彼女の研修での経験が充実したものであったことは、深い知識の吸収と個人の成長が証明しています。今後、Veraさんは国連ユニタールの継続的な改革と拡大を思い描き、よりスキルを高めた災害復興の実務家たちの世界的ネットワークを構想しています。Veraさんの生き方は、災害リスク軽減を世界共通の取り組みに変える文化、学び、協力の可能性を示しています。

この研修は、仲間とともに同じステージに立って経験を分かち合うので、非常に充実していて、楽しむことができました。―Nikki Antonette De Vera、国連ユニタール研修修了生(フィリピン)

国連ユニタール広島事務所開設20周年

国連ユニタール広島事務所は、2023年で創設20周年を迎えます。Veraさんは、国連ユニタールの修了生コミュニティの一員として、国連ユニタールでの経験が非常に充実したものであったと語ります。次の20年を見据えた彼女の国連ユニタールのビジョンは、絶え間ない革新です。Veraさんは、国連ユニタールの発展に伴い、その研修プログラムが技術的進歩の最前線に立ち続けることが極めて重要であると強調しています。

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これからの数年間を思い描きながら、Veraさんは、太平洋とアジア諸国にわたる個人、特に女性同士の連携とネットワークを育むことの重要性を強調します。個々人の献身的な努力が織りなす協調的な取組を通じて、Veraさんは災害へのレジリエンスと持続可能な開発にコミットし、相互につながり合う強固なコミュニティの創造を構想しています。

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英語版は以下からご覧いただけます。

Empowering Disaster Resilience Through Culture and Learning: Nikki Antonette De Vera's Remarkable Journey | UNITAR

国連ユニタールについて

国連訓練調査研究所(ユニタール)は、1963年の設立以来、研修事業に特化した国連機関として、世界各国の人材開発を支えています。2023年には、54万人以上が受講。ジュネーブ本部のほか、ニューヨーク事務所、広島事務所、ボン事務所があり、様々なネットワークをもっています。2019年からは持続可能な繁栄局(Division for Prosperity)のもと、広島事務所と、ジュネーブ本部の財政・貿易ユニットの職員がともに、起業やリーダーシップ、貿易と金融、デジタル技術、軍縮などについてプログラムを展開しています。紛争後復興の過程にある国の人々への研修などには、原爆投下後から現在の平和都市に至る過程を一つの復興モデルとして講義に組み込むなど、平和で公正な社会の実現にも貢献しています。

国連ボランティア Da Hyung Sunさんのご協力のもと記事化されました。

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