• Angelamercy Baltazaryさんはタンザニアで助講師兼研究者として、有機廃棄物を養殖用タンパク質の飼料に変えています。
  • Baltazaryさんは国連ユニタールの「アフリカの女性と若者を対象としたグリーン生計の開発:食料安全保障の強化と気候変動に強い経済活動の支援」研修の修了生であり、研修の最終フェーズとしての日本でのワークショップに成績上位者として招待されました。
  • Baltazaryさんは、持続可能で気候変動に強いベンチャー企業の発展のための起業家精神とデジタル技術を身につけることを通して、自身の養殖ベンチャーを拡大するための実践的で革新的な戦略を学びました。
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2024827日、広島 - タンザニアの起業家で助講師のAngela Baltazaryさんは、自然保護に情熱を注いでいます。国連ユニタールのグリーン生計に関する研修を通じて、彼女は有機廃棄物に含まれるメタンをタンパク質に変換するプロジェクトを開発し、着手しました。このような有機廃棄物の再利用は、温室効果ガスを削減すると同時に、タンザニアの公衆衛生と食料安全保障にも貢献します。

セレンゲティ国立公園から始まった

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Baltazaryさんは自然を愛する人です。緑豊かな風景と野生動物が生息することで知られるカゲラ州で生まれ育ったBaltazaryさんは、高校生のときにセレンゲティ国立公園を訪れたとき、人生の目的を見つけました。そこで初めて野生動物の管理について話を聞いた彼女は、その場で野生動物管理の勉強をしようと決心しました。

Baltazaryさんは、生物多様性保全と生態系管理を専門とする生命科学の修士号を取得し、保全産業、気候変動と適応の分野で10年以上の経験を積んできました。

グリーン・ビジネスのアイデアに磨きをかける

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Baltazaryさんが国連ユニタールの研修を知ったのは、持続可能性に携わる女性のための助成金や博士号取得のための奨学金を探していたときでした。グリーン生計について教えている人々がいることを知り、彼女はとても衝撃を受けました。そして、20239月開始のこの研修プログラムに応募し、参加することになりました。

国連ユニタールの「アフリカの女性と若者を対象としたグリーン生計の開発:食料安全保障の強化と気候変動に強い経済活動の支援」研修事業は、タンザニア、ザンビア、ジンバブエの女性と若者が起業家精神とデジタル技術を身につけることで、気候変動に強いビジネスを開発し、包摂的で環境に配慮した働きがいある雇用と生計の機会を創出できるようにすることを目的としています。このプログラムは、研修のトレーナーとファシリテーターによる2つのオンラインフェーズがあり、その後最終フェーズとして、成績上位24名の受講生が日本でのワークショップに参加するために、東京と広島に招かれました。

国連ユニタールの研修に参加した際、Baltazaryさんは魚の代替飼料を探すのに頭を悩ませていました。ウクライナの戦争で水産飼料の供給が制限され、価格も上がっていました。そこでBaltazaryさんは、学部時代で学んだあることを思い出しました。代替飼料としての昆虫養殖です。有機廃棄物に含まれるメタンをタンパク質に変換し、それを魚の餌にすることを考え付いたのです。

このアイデアは、いくつかの問題を一度に解決するものでした。魚の餌も確保でき、コスト削減や温室効果ガスの削減、また有機廃棄物管理にも貢献できるのです。

私が暮らすダルエスサラームは、人口約500万人規模の都市であり、2025年までに約12,000トンの廃棄物が出ると予測されています。有機廃棄物と温室効果ガス削減のために自分の役割を果たさなければならないと思っていました。―Angelamercy Baltazary、起業家、国連ユニタール研修修了生(タンザニア)

Baltazaryさんは、有機廃棄物を燃やして温室効果ガスの排出量を増やす代わりに、有機廃棄物をクロバエの幼虫に食べさせることにしました。幼虫はタンパク質が豊富であり、魚にとって栄養価の高い餌となります。さらに、その幼虫の油は抽出することができるため、彼女はその油を髪や肌用の化粧品に使うことで、後に事業を拡大できる可能性を見出しています。

国連ユニタールの研修を通じて、Baltazaryさんは、講師や他の受講生に支えられながら、アイデアを構想し、発展させていきました。プログラム終了時には、彼女は試験的に概念実証を行う準備が整い、投資家にアイデアを提案する際の自信も高まりました。

Baltazaryさんにとって、国連ユニタールでの経験はとても楽しいものでした。彼女は、当初のオンラインフェーズの研修も含め、トレーナーから多くを学ぶことができました。日本でのワークショップでは、サステナビリティや環境保全に関する日本の先進技術や、ゴミの分別や水・エネルギーの節約に関する国民の高い意識に興味を覚えました。彼女は、この研修事業を財政的に支援する日本政府に感謝するとともに、国連ユニタールが今後もこの事業を継続することを強く望んでいると伝えています。

男性優位の分野で女性に伝えたいこと

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現場での課題について尋ねると、Baltazaryさんはすぐに科学分野が男性優位の環境であることを挙げました。彼女の学部の野生生物管理のクラスでは、67人中女性はわずか15人でした。野生生物管理や保全のフィールドワークは女性には無理だと考える人もいる、といいます。

それでも女性科学者であることは、Baltazaryさんにチャンスを与えました。修士号取得のための奨学金を獲得し、広い視野を養い、そして影響力のある人々に出会うことができたのです。Baltazaryさんは、女性が天然資源の主な利用者でもあるため、今こそ、より多くの女性が自然保護の分野に進出するすべき時だと考えています。

アフリカでは、女性は薪を取りに出かけ、水を汲み、森から薬草を採取します。自然保護の分野で女性が教育を受けることは、地球を救うことにつながるのです。―Angelamercy Baltazary、起業家、国連ユニタール研修修了生(タンザニア)

Baltazaryさんは、他の女性たちがこの分野で活躍しているのを見ると、「彼女たちにできるなら、私にもできるはずだ」と、やる気が湧いてきます。Baltazaryさんは、若い女性たちがこの分野に参加できるよう、ロールモデルになりたいと願っています。教わったことをすべて実践し、自分のグリーン・ビジネスを通じて、より多くの女性と若者にポジティブな影響を与えたい、と期待を膨らませます。

 

英語版は以下からご覧いただけます。

Converting Organic Waste into Fish Feeds in Tanzania | UNITAR

国連ボランティア Ayobami Ashaoluさんのご協力のもと記事化されました。

国連ユニタールについて

国連訓練調査研究所(ユニタール)は、1963年の設立以来、研修事業に特化した国連機関として、世界各国の人材開発を支えています。2023年には、54万人以上が受講。ジュネーブ本部のほか、ニューヨーク事務所、広島事務所、ボン事務所があり、様々なネットワークをもっています。2019年からは持続可能な繁栄局(Division for Prosperity)のもと、広島事務所と、ジュネーブ本部の財政・貿易ユニットの職員がともに、起業やリーダーシップ、貿易と金融、デジタル技術、軍縮などについてプログラムを展開しています。紛争後復興の過程にある国の人々への研修などには、原爆投下後から現在の平和都市に至る過程を一つの復興モデルとして講義に組み込むなど、平和で公正な社会の実現にも貢献しています。

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