- イラク出身のLayla Merzahさんは、人道支援分野における、コミュニケーションおよびメディアの専門家です。現在は、赤十字国際委員会(ICRC)で、被災コミュニティや協力団体、関係機関との連携を支援する業務に携わっています。
- 外務省委託(2025年度)平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業「プライマリー・コース」に参加しました。
- 本研修を通じて、コミュニケーションが平和と社会変革に果たしうる役割への理解を深めました。紛争地域における包摂的な対話と責任ある情報発信の推進に取り組むことを目指しています。
- 本プログラムは、広島大学が国連ボランティア計画(UNV)および国連訓練調査研究所(ユニタール)と連携して実施しています。
幼少期の問いから平和への使命へ
イラクで育ったLaylaさんにとって、紛争は目の前の現実でした。子どもの頃から、戦争が人々の暮らしや社会をどれほど傷つけるものか、肌で感じてきました。
戦争がいかに恐ろしいものか知っているのに、なぜ繰り返されるのか、いつも不思議に思っていました。それが、この問題を理解し、自分も変化を生み出す一員になりたいと思うきっかけでした。 - Layla Merzah(イラク)、プライマリー・コース修了生
その問いはやがて、ただ状況を見つめるのではなく、自ら平和構築に関わりたいという決意へと変わっていきました。そんな時に知ったのが、「プライマリー・コース」でした。平和構築や開発をめぐる最新の政策動向やさまざまな取り組みをより深く理解するため、研修への参加を決めました。
多様性が拓いた新たな視野
研修には異なる文化や職業、国籍を持つ人々が集まりました。安定した社会や紛争後の地域、現在も紛争の影響を受けている地域など、出身も背景もさまざまな参加者が意見を交わす中で、これまで出会ったことのない価値観や考え方に触れることができたと言います。
多様な人たちが同じ空間に集まることで、国際社会で人々がどのように物事を考え、話を進めていくかがよく分かりました。本当に視野が広がりました。
日々の対話や議論は、知識の習得だけではなく、新たな角度から問題をとらえたり、ともに解決策を模索したりしようとするもので、より深く柔軟な視点から、世界的な平和構築へのアプローチに向き合いました。
進むべき方向が見えた
研修への参加前も、世界がより良い方向に変わることを強く望んでいましたが、具体的にどのように歩んでいけばよいのか分からず、絶えず自問していました。研修を通じて、自分の経験やキャリアを活かしながら、国際社会に貢献する具体的な方法を見いだすことができたと振り返ります。コミュニケーションの専門性を活かしながら、より広い議論や政策づくりの場に参加するための現実的な方法が、少しずつ見えてきたのです。
この研修を受ける前は、政策提言をどのように行えばよいのか、ここまで明確な考えを持てていませんでした。
進むべき方向が見えてきた今、自国での取り組みについて具体的な計画を描き始めています。
研修を最大限活用するためには、何事にも積極的に取り組み、自分の意見を発表することが大切だとLaylaさんは言います。完璧な答えである必要はなく、その場で生まれたアイデアや疑問、気づきもまた、学び合いを深める重要な鍵となります。心理的安全性の高い環境が整っており、参加者が講師からだけでなく、多様な専門的・文化的背景を持つ仲間からも学びを得られると述べています。
コンフォートゾーンを一歩抜け出して学び、周りの人たちから多くのことを吸収できる、最適な環境です。
主体的に行動し、協働的に学ぶことで、参加者は自身の成長と専門性を最大限に高めることができるとLaylaさんは話してくれました。
平和を紡ぐ、言葉の力を信じて
Laylaさんはこれまで数年にわたり、広報やメディア、対外発信などの分野で経験を積み、支援を必要とする地域の人々と直接関わる一方で、支援者やプロジェクト関係者との調整にも携わってきました。その中で、情報が信頼関係や協力体制、社会の受け止め方に大きな影響を与えることを実感してきたといいます。
こうした経験を通じて、「言葉」が持つ影響力の大きさを深く認識するようになりました。
たった一言が暴力のきっかけになることもあります。ひとつの誤った情報が、組織の信頼を損なうこともあります。でも、言葉には前向きな変化を生み出す力もあるのです。
正確で倫理的かつ誰一人取り残さない情報発信を通じて、平和構築と開発に貢献したい。それが、彼女の願いです。
これまでの実務経験と研修を通じて得た明確なビジョンを土台に、Laylaさんは今後も、対話と信頼、そして持続可能な平和を支えるコミュニケーションの専門家として歩み続けていきます。
外務省「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」について
麻生太郎外務大臣(当時)の政策演説「平和構築者の『寺子屋』を作ります」を受け、2007年から外務省が平和構築分野の人材育成事業を実施してきました。2015年度からは、国際機関での人材の発掘・育成・キャリア構築を包括的に実施するため事業内容を刷新・拡大し、「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」を開始。2024年度から、広島大学が外務省より委託を受け、UNV及び国連ユニタールとの協力のもと、事業の実施・運営を行っています。
外務省ホームページ(日本語):トップページ
Global Peace and Development Career Network
広島大学について
広島大学は、人類史上初めて原子爆弾が投下された被爆地広島に1949年に創設された国立の総合研究大学です。広島大学は、国立大学としての使命を果たすため、活動の基本原則として広島大学憲章を次の通り定めています。それは、平和を希求する精神、新たなる知の創造、豊かな人間性を培う教育、地域社会・国際社会との共存、絶えざる自己変革という理念五原則の下、自由で平和な社会を実現し、人類の幸福に貢献することです。また、一人ひとりの人権と人格を尊重し、教育や研究を通じて、地域社会及び国際社会に貢献するとともに、平和で持続的な発展を可能とする社会の実現に向けて、
貧困や紛争、人権の抑圧、感染症、環境や資源・エネルギー問題など地球規模の課題に対する先端的な解決策を世界に先駆けて実践しています。
国連ボランティア計画について
世界中でボランティアリズムを通じて平和と開発に貢献する国連ボランティア計画(UNV)は、パートナーと連携し、資格を持ち、高い意欲と十分な支援を受けた国連ボランティアをさまざまな国連機関に派遣しています。その中でもプライマリー・コースでは日本人研修員を国連ボランティアとして海外派遣する業務を実施しています。
国連ユニタールについて
国連訓練調査研修所(ユニタール)は、1965年に設立された研修事業に特化した国連の専門機関です。質の高い研修と研究、革新的な学習ソリューションを通じて、人々の知識とスキルの向上を図ることを使命としています。
国連ユニタールは、戦略的パートナーシップとグローバルな学習プラットフォームを通じて、個人の能力開発と、特に脆弱な状況下にある機関・組織の能力強化に取り組み、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」および「未来のための協定(Pact for the Future)」の実現を推進しています。
詳しくは国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所をご覧ください。