- ニュージーランドの警察官であるMargo Soltisさんは、現在フィジー国家防災管理局に駐在し、業務システムの支援と強化を担当する技術顧問を務めています。
- 彼女は日本の支援により実施された、国連ユニタール「2024年度津波防災に関する女性のリーダーシップ研修」に参加しました。
- Margoさんは、災害時に子どもが主体的に行動できるような準備があれば、保護者が救助のために命を犠牲にするようなリスクも減ると気づきました。
- 今後、フィジーとニュージーランドで子どもの防災教育を推進することを計画しています。
教訓が現実になる災害発生時
ニュージーランドで豊富な経験を積んできた警察官のMargoさんは、フィジー国家防災管理局で技術顧問として業務改善を進めていました。しかし、防災分野においてはまだ学ぶべきことが多いと感じていました。そこで、特に女性のリーダーシップに焦点を当てた国連ユニタールの研修への参加を決意しました。Margoさんは、他の女性リーダーと交流し、自身の経験を共有しながら災害リスク軽減について学んでみたいと思いました。
国連ユニタール「津波防災に関する女性のリーダーシップ研修」は、アジア太平洋地域の女性リーダーを対象として、国連ユニタールが日本政府の支援を受けて実施する研修であり、災害リスク軽減、気候変動へのレジリエンス、包括的なリーダーシップを強化することを目的としています。2024年度のプログラムは2024年9月から2025年3月にわたって2つのフェーズで行われました。Margoさんは上位20名の優秀な参加者の一人に選ばれ、フィジーで行われた第2フェーズの地域ワークショップに参加しました。参加者は、講義、ケーススタディ、インタラクティブセッションを通じて、各国における女性、家族、および脆弱な立場に置かれている人々の状況を反映した戦略策定の方法を探りました。
子どもに教えることで女性の命を救う
研修では、2011年の東日本大震災と津波に関する内容が深く取り上げられました。そこでMargoさんは、介護の役割を担うことが多い女性たちが、家族や子どもを助けるために災害現場に戻った結果、命を落とすケースが多いことに強い衝撃を受けました。
しかし同時に、研修を通じて、子どもたち自身が災害対応の主体となれることを学びました。子どもに避難経路や災害発生時の連絡方法を教えることで、災害時に迅速に行動できるようになります。子どもが自分で安全を確保できるようになれば、女性たちが子どもたちの救助によって命を危険にさらす必要がないということにMargoさんは気づかされました。これまでに一度も考えもしなかったことでした。
災害が起きた時、私は自分の子どもを守るためなら命をかけます。両親のためでもそうでしょう。でも、もし子どもたちに幼い頃から教育を施し訓練すれば、子どもたちは自分で自分の命を守れるようになり大人は安心できるなんて、研修に参加するまでは考えたことがありませんでした。
— Margo Soltis、 警察官(ニュージーランド)/国連ユニタール研修修了生
Margoさんは、フィジーにおける子どもたちの災害対策教育がまだ不十分であることを実感しました。そして、国連ユニタールの研修で学んだ知識を活かして、親である大人たちが災害時の対応に自信を持てることを目指し、子どもたちが緊急時に安全な場所へ避難できるような体制を作りたいと考えています。
安全な未来を目指した女性同士の支え合い
この研修を通じて、Margoさんは災害対策の新たな視点を得ました。女性の安全を守り、子どもを防災の担い手として育て、気候変動に強い地域社会をつくることで、多くの命と家族を守ることができます。
仲間になれる女性がいたら、必ず手を差し伸べて、決して置き去りにしないでください。もし彼女たちに可能性が見えるのなら、後押ししてあげてください。その女性が自分を超えて成長したなら、それはあなたが貢献した証です。常にできるだけ多くの女性を導いていってください。そして、彼女たちが最高の自分になれるように鼓舞し、背中を押してあげましょう。
— Margo Soltis、 警察官(ニュージーランド)/国連ユニタール研修修了生
Margoさんは、研修での学びをフィジーで実践し、フィジーでの任期が終了したらニュージーランドでも活かそうと考えています。彼女は、他の女性リーダーたちにも互いに励まし合い、より良い変化を生み出していくためにそれぞれの持っている力を発揮することを願っています。
本記事の執筆には国連オンラインボランティアMaria Luna Oros Nelliさんが協力しました。
国連ユニタールとは
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2024年には、世界中で約55万人が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。2003年に設立された国連ユニタール広島事務所は、平和と復興の象徴である広島を拠点に、平和構築や核軍縮、紛争や災害からの復興に関する国際的な研修を展開し、世界の持続可能な平和と繁栄の実現に貢献しています。https://unitar.org/ja/hiroshima