- イラク保健省のコミュニティ開発部長を務めるAlia Abbasさんは、イラクのプライマリヘルスケアセンターで、女性の問題に対する啓発活動のために精力的に取り組んでいます。
- 国連ユニタールは、2024年に第4期目の「ジェンダー平等と女性のエンパワーメント(GEWE)」研修事業の実施を開始し、リーダーシップとコミュニケーションスキルの学習機会を提供しました。
- Abbasさんは、同研修を通して効果的なチームマネジメントを学び、これらの学びを職場で共有することによって職員のスキル向上に役立てています。
2024年11月8日、広島 - イラクの女性たちに対する個人的な目標について尋ねられると、Alia Abbasさんは迷うことなくこう答えました。 「彼女たちを幸せにすること!」。31年間にわたって公衆衛生分野で働いてきたAbbasさんは、その目標の実現のために、自身のキャリアのすべてを捧げてきたといっても過言ではありません。国連ユニタール「ジェンダー平等と女性のエンパワーメント(GEWE)」研修事業で、Abbasさんは効果的なチームマネジメントを学び、職員のスキル向上に役立てています。
保健分野における女性の権利のための組織能力
イラク保健省のコミュニティ開発部部長のAlia Abbasさんは、イラクのプライマリヘルスケアセンターにおいて女性の問題に対する啓発活動に精力的に取り組んでいます。同センターは、イラクの多様なコミュニティに対して無償のサービスを提供しており、遠隔地の村に住む人々にも医療を届けています。Abbasさんの部署では、同センターの職員に対して、女性の人権や女性に対する暴力などの課題に関する研修を行っています。
イラクの女性たちは、私生活でも職場でも、いまだに多くの困難に直面しています。グローバル・ジェンダーギャップ・レポート2021のランキングでは、イラクは156か国中154位でした。2022年の国連人口基金(UNFP)調査によると、イラクの女性の52%が家庭内暴力(DV)について誰にも相談しない、または相談できないという状況にあります。
このため、プライマリヘルスケアセンターの職員が行き届いた研修を受けていることが極めて重要になります。同センターは、DVから逃れてきた人たちに、治療、心理的支援という一連のサービスを提供しています。また、病院、非政府組織(NGO)、警察等への紹介システムも構築しています。
長年のイラク戦争で国家制度は疲弊しており、その埋め合わせのために多くのNGOが活動しています。しかしAbbasさんは、女性に対する暴力問題の長期的な解決策としては、NGOに頼ることより、むしろ公的機関間の連携を強化させることが不可欠だと考えています。
彼女は、すでにいくつかの成功例を見てきました。自身の部署では、保健面でのエンパワーメント、母子ケア、予防接種、労働プログラムを、今後女性のエンパワーメントを促進するための重要な分野として挙げています。
国連ユニタールの研修を通して次のレベルへスキルアップ
Abbasさんは、2023年の国連ユニタール研修「ジェンダー平等と女性のエンパワーメント」の第3期に参加したヨルダン、レバノン、イラクからからの35名の参加者の一人です。同研修は、リーダーシップ、啓発活動、コミュニケーションのスキルを高め、仕事を通じてジェンダー平等を実現することを目指して実施されました。
受講者は、自習型オンライン研修、専門家によるウェビナー、グループディスカッション、ピアレビュー、メンター指導やネットワーキングセッションに参加しました。また、国別のチームに分かれ、それぞれの国や省庁の行うジェンダー主流化への既存のイニシアチブに対して、具体的な行動計画を策定しました。
SWOT分析などのツールを用いた研修を通して、Abbasさんは自身の受け持っているつプログラムの強みと弱みについて理解を深めました。そして、今後の改善のために役立てようと、研修で学んだことを同僚に共有しました。さらに、職員向けの研修も行うことで、地域コミュニティにより良いサービスを提供できるようになりました。
女性のエンパワーメントを促進するための道は一つではないと、彼女は強調します。女性のエンパワーメントは、医療、ロジスティックス、資金調達、職場での女性支援など、いろいろなアプローチがあります。Abbasさんが最も重要だと考えているのは、たとえ小さな一歩であれ、行動を起こすということです。
Aliaさんが伝えたいことは、とてもシンプルです。
「どんな理由があろうとも、暴力は許さない」
英文記事は以下からご覧いただけます。
Changing The System from Within: Women’s Empowerment in the Iraqi Public Health System | UNITAR
国連ユニタールについて
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、1963年の設立以来、研修事業に特化した国連機関として、世界各国の人材開発を支えています。2023年には、54万人以上が受講。ジュネーブ本部のほか、ニューヨーク事務所、広島事務所、ボン事務所があり、様々なネットワークをもっています。2019年からは持続可能な繁栄局(Division for Prosperity)のもと、広島事務所と、ジュネーブ本部の財政・貿易ユニットの職員がともに、起業やリーダーシップ、貿易と金融、デジタル技術、軍縮などについてプログラムを展開しています。紛争後復興の過程にある国の人々への研修などには、原爆投下後から現在の平和都市に至る過程を一つの復興モデルとして講義に組み込むなど、平和で公正な社会の実現にも貢献しています。