• トンガの国家災害リスク管理局の書記官のLuisa Taungaさんは、災害への備えと対応を専門とする研究・訓練部門を率いています。
  • Taungaさんは 2017年に国連ユニタールの津波防災に関する女性のリーダーシップ研修の最初のグループに参加し、2023 年には同研修事業に講師として参加しました。
  • トンガは災害に対して脆弱であり、特に資源が限られた離島では、大きな課題を抱えています。
  • Luisaさんは、研修事業の一環として日本を訪れた経験に触発され、地域コミュニティの意識を高めるために、子どもや若者向けの防災ワークショップを企画・運営しました。
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20250219日、広島 - Luisa Taungaさんはトンガの国家災害リスク管理局の書記官であり、研究・訓練部門の責任者として、災害対策や訓練・対応戦略に重点を置き、地域社会が緊急事態に対処できるよう努めています。彼女は、国連ユニタールの災害リスク軽減研修事業が始まって間もなく、2017年に同研修に参加しました。その後、災害に対する地域レベルでの備えとレジリエンスを構築するリーダーとなったLuisaさんは、2023年の国連ユニタールの防災研修に、講師として迎えられました。

日本の津波の経験から学ぶ

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2017年、Taungaさんがまだ災害管理の分野の新人だったころ、国連ユニタールの第2回津波防災に関する女性のリーダーシップ研修に参加しました。この研修事業は、島嶼国の女性が自国の災害への備えと災害管理スキルを向上することを目的に、2016年から日本政府の支援を受けて実施しています。

太平洋島嶼国からの女性33名が日本を訪れ、2011年の東日本大震災と津波を含む日本の被災経験からの学びを得ました。この研修ワークショップでは、講義と現地視察を通じて、参加者に災害管理の包括的な知識を提供しました。 津波の被害を受けた地域を訪れ、地元の人たちと交流し、彼らの話を聞く中で、Taungaさんは災害の状況が鮮明に目に浮かびました。彼女は特に、2011 年の津波で壊滅的な被害を受けた大川小学校訪れたときのことを思い出します。

私は研修生の中でもよく周りとコミュニケーションを取る方でした。 [しかし]最初の現場訪問で、生徒の7割以上が津波により行方不明もしくは亡くなってしまった学校に行きました。その日以降、私は他の現場に行くことができなくなりました。私はただバスの中で座って、みんなが戻ってくるまで待っていました。なぜなら、自分がどのような場所に今立っているのかをあの時に意識させられたからです。” − Luisa Taunga、国連ユニタール研修修了生 (トンガ)

Taungaさんは当時、トンガの災害危機管理官としてハアパイ諸島に配属されていました。Taungaさんは周りの島の地形を「パンケーキのように平ら」だと表現しています。トンガは孤立した位置にあるため、津波や地震などの災害に対して非常に脆弱です。2022 年のフンガ・トンガ – フンガ・ハアパイ火山の噴火と津波は、トンガの人口の 80% 以上に影響を与えました。この国の地理的な特徴に加え、資源やインフラが限られているため、緊急時に政府が離島にタイムリーな支援を行うことが困難な状況にあります。

子どもたちと若者を通じてコミュニティの準備を促す

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国連ユニタールの研修に参加して以来、Taungaさんは研究分野を担当し、国の災害対応能力を向上させるために関係者と調整してきました。日本の学校訪問からインスピレーションを得て、彼女は小学校でワークショップを企画・運営し、内容を簡素化しながらも子どもたちが防災と安全な場所に行く方法を確実に理解できるように対策しました。

子どもたちを訓練するということは、親たちに伝えることも意味します。 「子どもたちは決して親を家に残しません。そのため、子どもたちが [災害のことや事前の準備などについて親に伝える役目を果たします」とTaungaさんは述べます。

彼女が日本から持ち帰ったもう一つのアイデアは、防災ワークショップを通じて若者を訓練することでした。 「私たちが訪れた日本の学校で学んだことです。若者たちには力があり、粘り強さもあるため、地域社会の人々の手となり足となっています。彼ら・彼女らは人々を迅速に避難させることができます」とTaungaさんは述べます。

地域での防災ワークショップは、政府の政策と地域社会の行動を結びつける役目もあります。Taungaさんは、政府の意思決定を行う人が地域社会の声を確実に聞くためには、このような地域に根差した訓練が不可欠であると考えています。

それは、地域の人々に力を与えるだけでなく、意思決定者と地域の人々の間で対話が継続的に行われることを確実にすることでもあります。 [地域の訓練を通じて私たちは彼らと同じ目線で話し、彼らの声を聞くことができます。"− Luisa Taunga、国連ユニタール研修修了生 (トンガ)

国連ユニタールの研修の講師となった今

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Taungaさんが国連ユニタールの研修の講師として参加することになったこの年の研修では、ワークショップを初めて太平洋諸国で開催しました。参加者は太平洋島嶼国のコミュニティと文化とに触れながら、他の島国の経験から学ぶ機会となりました。Taungaさんは、トンガの人々に2022年の火山噴火と津波の経験を語ってもらうことで、参加者は現実を目の当たりにし、太平洋島嶼国における災害管理の成功と課題の両方について考えるきっかけとなると考えています。

2022 年の火山噴火と津波を経験したTaungaさんは、日本で学びそびれてしまったことのつは、災害を経験、あるいは災目撃したときの感情にどう対処するかだったと述べています。災害からわずか数年のトンガにおいて、防災訓練を実施することは感情を揺さぶるものだと言います。「まだ記憶が鮮明です」と彼女は述べています。 「この数年でやっと落ち着いて、考える時間をとることができました。」

Taungaさんは日本政府と国民の支援に深く感謝しています。日本の災害管理から得た貴重な教訓は、トンガにおける地域の災害対応能力とコミュニティのレジリエンスを強化するための彼女の取り組みを引き続き支えています。

Luisaさんは、自身と同じ道を歩む災害リスク削減の専門家たちにコミュニティ参画と教育を優先するよう促しています。彼女は、協力して取り組む姿勢を育み、地域社会を力づけることで、災害リスクを低減し、強い社会を築くための重要な前進が得られる信じています。

国連ボランティア Janitta Intarakさんのご協力のもと記事化されました。

英文記事は以下からご覧いただけます。

Championing Disaster Resilience in Tonga

国連ユニタールについて

国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2023年には、世界中で54万人以上が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。詳しくはウェブサイトから(国連訓練調査研究所(ユニタール) 広島事務所 )。

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