- 日本出身の長谷川晶子さんは、ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)として国連開発計画(UNDP)に着任し、様々なキャリアを経験しました。UNDP本部CFO(Chief Financial Officer)オフィスのプログラム・アナリストや、アフガニスタン事務所の財務部門長等を経て、直近ではUNDPバンコク地域事務所でオペレーション専門官としてアジア太平洋地域の各国事務所を支援するなど、幅広い経験を積みました。
- 財務・オペレーション分野の豊富な経験を活かし、2025年1月に広島で開催された「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」ミッドキャリア・コースに参加しました。本事業は日本の外務省が実施するもので、広島大学が受託し、国連訓練調査研究所(ユニタール)の協力のもとで実施されています。
- より戦略的な役割への転換とキャリアのさらなる発展を見据え、自身にとってのリーダー像を明確にするために、晶子さんはこのミッドキャリア・コースに応募しました。
- 本コースの修了後、晶子さんは世界銀行の予算管理担当官として、新たな仕事に挑戦しています。
2025年8月、広島 —「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業のミッドキャリア・コースで経験した1週間は、とてもハードでしたが、充実していました。私のこれまでの経歴を見つめなおす貴重な機会となりました。研修での学びと同期とのふれあいは、私の長期的なキャリア戦略において間違いなく大きな財産です」―2025年半ばから世界銀行の予算・パフォーマンスレビュー・戦略総局 (BPS) 予算管理担当官として活躍している長谷川晶子さんはそう語ります。持続可能な社会を実現するための金融システムの向上や、オペレーション業務の効率性を高めたい、という目標を胸に、この新たな環境で一歩を踏み出しました。
晶子さんは民間企業での就職を経て、2018年にジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)として国連開発計画(UNDP)に着任しました。
若手から中堅へと責任範囲が広がっていくことにやりがいを感じていました。チームの管理を任され、より多様な関係先と関わる機会も増えました。同時に、先を見据えるにつれ、さらに上の管理職に必要なリーダーシップを持つためには何か突破口が必要だとも感じていました。キャリアのレベルアップには、新しいスキルだけでなく、今までと違った考え方が必要だと思ったのです。また、自身の私生活の変化も、新しい働き方を探求するきっかけとなりました。
「私は常に自分の仕事に全力を注ぎ、仕事を心から楽しんできました。ですが、先を考えると、自分の働き方や心構えに変化が必要だと感じ始めました。自分の人生で大切にしたいことをあきらめることなく、意味のある貢献を続けることができるようになりたい、と。『キャリアは短距離走ではなくてマラソンだ』とよく言われますが、自分にとってそれはどういうものなのだろう、と考えてきました」—長谷川晶子、平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業 ミッドキャリア・コース 研修修了生(日本)
日々の業務に追われる中で、自身の心の持ち様を変える必要性を感じながらも、じっくり立ち止まって先を想像する時間を持つことができずにいた、といいます。
そのような中で、晶子さんは2025年1月、広島で開催された「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」のミッドキャリア・コースに参加する機会を得ました。本事業は日本の外務省が実施するもので、広島大学が受託し、国連ユニタールとの協力のもと、運営されています。
1週間にわたる集中研修の中で、晶子さんは自身のキャリアについて深く考えました。「私は今、何を目指しているのか?」「近い将来、どうありたいのか?」「自分の価値観や優先順位は何で、それをどう現実とすり合わせていけば、その未来を実現できるのか?」
自分自身のリーダーシップスタイルを築き、磨く
研修コースの内容はもちろん、さまざまなバックグラウンドを持つ研修生との出会いが、晶子さんの視野を大きく広げてくれました。仲間や講師から、多様なロールモデルや実践的なヒントに気づかされたといいます。
「リーダーシップについて、『こうあらねばならない』というものはないのだと実感しました。研修員の中には、ビジョンを示してチームを引っ張ることに長けている人もいれば、控えめでも行動で示すことで成果をあげてきた人もいました。仲間が抱えている葛藤には、自分にも重なる部分がたくさんありました」―長谷川晶子、ミッドキャリア・コース研修修了生
晶子さんは、チームを率いるリーダーシップの形は人によりさまざまで、実践と内省を通して自分自身のスタイルを生み出していくことができると気づきました。また、このコースを通じて、自身の完璧主義に気づかされ、それを打破するための意識づけをはかる機会ともなりました。近い将来、より大きなチームを率いるために柔軟で適応力のあるリーダーシップを志しています。
新たなスキルをキャリアの前進につなげる
晶子さんが得たもう一つの大きな学びは、職場で活かせる新たなアプローチやソフトスキルでした。たとえば、国連が提唱する『UN 2.0』のビジョンが示す、先を見据えた戦略的思考や最先端のスキルの重要性です。また、自身の専門分野について語るときだけでなく、十分に知見のないテーマや将来のビジョンについても、臆せず話せるようになるために、パブリックスピーキングのスキル向上にも意欲を見せています。このスキルは、多様なチームを率いて、イノベーションや戦略的な取り組みを促進するひらめきをもたらすことに役立つと考えています。
研修コースでは模擬面接も行われ、そこで自分の話し方の癖にあらためて気づき、簡潔に、自信をもって話せるよう練習を重ねました。
「模擬面接の時間は本当に貴重でした。多くの準備が必要でしたが、経験豊富な仲間や講師から建設的なフィードバックをいただき、それが私の自信となりました。ここからさらに発展させていきたいと思います。このプログラムには、時間と挑戦を投じる価値があります。投資しなければ、新しい発見はないのです。一瞬一瞬が新しい見方をつかめる貴重なひとときでした」―長谷川晶子、 ミッドキャリア・コース研修修了生
未来を見据えて
晶子さんは、将来のキャリアパスを詳細に見通しているわけではありません。ですが、財務・オペレーション分野で培った経験と専門性を活かして、リーダーとして活躍することを目指しています。
「よりインパクトの大きな金融戦略と効果的なビジネス管理を通じて、持続可能な開発に貢献していきます。より効果的かつ効率的な事務管理業務を推進することで、より多くの方々に支援を届けられるようにしたいと思っています。それがひいては、世界をより良い場所にすることにつながると確信しています」―長谷川晶子、 ミッドキャリア・コース研修修了生
原文は広島大学のGPAD(Global Peace and Development Career Network )ウェブサイトに掲載されています。
外務省「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」について
麻生太郎外務大臣(当時)の政策演説「平和構築者の『寺子屋』を作ります」を受け、2007年から外務省が平和構築分野の人材育成事業を実施。2015年度からは、国際機関での人材の発掘・育成・キャリア構築を包括的に実施するため事業内容を刷新・拡大し、「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」を開始。2024年度から、広島大学が外務省より委託を受け、事業の実施・運営を行っています。
広島大学について
広島大学は、人類史上初めて原子爆弾が投下された被爆地広島に1949年に創設された国立の総合研究大学です。広島大学は、国立大学としての使命を果たすため、活動の基本原則として広島大学憲章を次の通り定めています。それは、一人ひとりの人権と人格を尊重し、自由で平和な持続的発展を可能とする社会の実現に貢献する人材を育成し、社会に開かれた大学、社会から信頼される大学として地域社会及び国際社会に貢献することです。さらに地球規模の課題に対する先端的な解決策を世界に先駆けて実践していきます。これにより広島大学の使命である、多様性を育む自由で平和な国際社会の実現に貢献する「平和を希求しチャレンジする国際的教養人」を育成することを目指します。
国連ユニタールについて
国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関です。2024年には、世界中で約55万人が受講し、より良い未来の実現のために世界各国の人材育成を支えています。ジュネーブ本部のほか、広島、ニューヨーク、ボンに事務所を構え、世界中にネットワークを持っています。詳しくは国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所をご覧ください。