勉強に励む少女（Envato Elementsより）
混乱が続くアフガニスタンでは、国内外の人々が、特に女性の人権や身の安全が脅かされる恐怖に怯え、暗黒の時代への逆戻りを懸念しています。
20年以上にわたり、アフガニスタンは紛争や暴力によって分断されてきました。また、構造的で根深いジェンダーの差別や偏見があり、ジェンダー格差に関する国際的な調査では常に下位に位置しています。
しかしながら、多くの若いアフガニスタンの女性は、自分たちも社会で活躍する機会がある、自分自身で生き方を決めることができる、と信じて生きています。そして、不確かな未来に直面しながらも前向きに希望を持ち、より良い社会に変えていこうと努力しています。
2021年の8月下旬にタリバンが政権掌握を発表した直前の5月から7月の6週間、国連ユニタール持続可能な繫栄局は「インクルーシブな第四次産業革命（4IR）を牽引する：デジタルスキル向上によるアフガニスタンの女性のエンパワーメントを目指して」の研修を実施しました。アフガニスタンのジェンダー平等と繁栄の実現を願う19歳のNajiaさん（仮名）は本研修に参加しました。
第1期プログラムの最後に実施したハッカソンの様子
アフガニスタンの大学でサイバーセキュリティについて学ぶNajiaさんは、地域社会の発展に貢献し、自国の少女たちに教育の機会を提供する活動を行っています。また、ボランティアとして持続可能な開発目標（SDGs）達成のために地域の活動を促進したり、誰もが平等に教育を受ける権利について家庭内で啓発活動を行うための手法を学んだりしてきました。長引く紛争や迫害により故郷を追われ、地方に避難せざるを得なかった少女や家族に衣類や衛生用品を寄付する活動も行っていました。
8月上旬にNajiaさんにインタビューを行った時点では、首都のカブールでは女子学生が学校や大学に自由に通うことができるものの、カンダハールやウルズガンなどの地方では教育は男性だけのものと考える風習が根強く残り、小学校にさえ通うこともできない女子もいる、と語っていました。また、男性の方がリーダーシップがあり管理職としての素質があると見なされ、女性は就職先を見つけるのにも苦労します。
今後女子学生の教育環境はカブールでも悪化するでしょう。アフガニスタンに住む女の子たちにとってはつらい現実が待ち構えている
とNajiaさんはその後語っていました。
タリバンがアフガニスタンを制圧する前のインタビューでは、Najiaさんは女性起業家育成や第4次産業革命スキルに特化した国連ユニタールの研修にとても意欲的でした。スマホ端末を使用して自分のペースで学び、ウェビナーで講義を受けたり議論を行ったりするオンライン研修を通じて、持続可能な開発目標（SDGs）、コーディング、アルゴリズム、アプリ開発、サイバーセキュリティ、人工知能や女性のリーダーシップなどに関する知識やスキルを取得しました。そして、同期の仲間やメンターと共に互いに学びあうことで、理解を深めていきました。
デジタル技術（Envato Elementsより）
国連ユニタールの研修に参加して、もっと貪欲に色々なコースや講義に参加したいと思いました。自分が本当に必要としている知識を学ぶことができましたーNajiaさん。
Najiaさんの言葉は、学びたいと願う多くのアフガニスタン女性の強い思いを反映しています。治安やジェンダー規範によって外出できないアフガニスタンの女性にとって、安全な自宅でデジタルスキルを学べるのは有効な機会です。
不確かな未来に直面する中でもNajiaさんは希望を持ち、より良い社会の構築を目指したいという夢をもっています。今後は、支援を必要とする女性や女性起業家のための基金を立ち上げたいとも。デジタルスキルの知識やスキルを取得し、将来の選択肢を広げることができる本研修にぜひ参加して欲しい、とNajiaさんはアフガニスタンの若い女性に呼びかけます。
国連ユニタールは、Najiaさんのような女性を支援する取り組みを今後も継続していきます。意欲的なアフガニスタンの人々が、国連ユニタールの研修に安全かつ柔軟に参加できるような学習方法を速やかに再開できるよう模索中です。
持続的な平和を構築するためには、女性、若者、宗教や部族のリーダー、少数派、戦争被害者や国内避難民などを含むすべての人々がプロセスに参加する必要があります。老若男女問わずより良い社会を目指し、今後の和解プロセスに参加していくためには、苦労して勝ち取った権利を守っていくことが最重要事項です。